表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/113

第十一話「小さな一歩 前編」5

第十一話「小さな一歩 前編」は5分割で更新していきます。これは5つ目です。

ー次の日。

春燕しゅんえんと一緒に出かけられるなんて!

 お兄さん嬉しいな〜!」

愁飛しゅうひがにこにこと笑いながら隣を歩いていた。


りん家の正門を出て、二人はすでに街道を進んでいる。

石畳を踏むたびに春燕の心臓がトクントクンと

うるさく鳴った。


——ど、どうしよう……!

まさか、愁飛様が護衛としてついてくるなんて……!


愁飛様は凌偉りょうい様の側近であり、凌偉様にとって

最も信頼の厚い人。

そんな人を出し抜いて行動するなんて、無理に

決まっている。


凌偉様には「買い物に行きます」と

伝えたけれど、実際に向かうのは市とは

反対側——倉庫番の景元けいげんの家だ。

護衛が他の者なら、なんとか口止めを頼めた

かもしれない。

でも愁飛様となれば、きっと隠し事など通じない。

必ず凌偉様に伝わってしまう……。


——どうすればいいの?

——街の途中で、うまくはぐれられたら……

でも、それも……。

ああ、せめて雪麗を連れてくればよかった……!

頭の中で焦りの声が渦を巻く。


そんな春燕の横で、愁飛がふと足を止めた。

「春燕。」

「は、はいっ!」心臓が跳ね上がる。

動揺を悟られまいと、慌てて背筋を伸ばす。

愁飛は静かに春燕の方へ向き直ると、ゆっくりと

腰をかがめた。目線の高さを合わせて、

穏やかに微笑む。


「オレに、どうしてほしい?」

「え……?」

「この愁飛お兄さんがね、なんでも言うこと

 聞いてあげるよ。」

「……!」


まるで心の中を見透かされているようだった。

けれど、不思議と嫌な感じはしない。

愁飛の瞳はまっすぐで、どこか「大丈夫だよ」と

語りかけてくるようだった。


「全身ソワソワしてる。気が乱れてるね!」

彼は笑いながら指で空気を切るように動かし、

軽く肩を叩いた。

「大丈夫、大丈夫。凌偉には言わないよ。」

その言葉に、春燕は思わず息を飲んだ。


笑みを浮かべる愁飛の顔は、どこか楽しそうで、

まるで「君の隠し事くらい、簡単に見抜けるよ」と

言っているようだった。


「ど、どうしてわかるんですか……?」

思わず漏れた春燕の問いに、愁飛はにやりと

唇を上げた。

「ふふ。こう見えて愁飛お兄さん、ちょっと

 “すごい人”なんだ。」子どもみたいに得意げに笑う。


春燕はハッと思い出した。

以前、雪麗が話していた——愁飛は“気”を

読むのが得意だと。人の心の乱れや不安を感じ取り、

整えることができる人だと。


……もしかしたら、今なら話しても

大丈夫かもしれない。この人になら、きっと。


春燕は小さく息を吸い込んだ。

そして勇気を振り絞るように口を開く。

「あの……愁飛様。実は——」

春燕は、倉庫番の景元のことを打ち明け始めた。

次回の更新は【明日19時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ

近づいていく時間を、

皆さまにも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブックマークや応援をしてもらえると励みになります。

感想もとても嬉しいです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ