第十話「豆豆」2
第十話「豆豆」は4分割で更新していきます。これは2つ目です。
春燕が廊下を歩けば、必ずその後ろを
ちょこちょこと追いかけてくる小さな影がある。
子猫の豆豆だった。
掃除をしていても、庭に出ても、帳場の隅に
座っていても――豆豆は必ず春燕の
そばに寄り添い、まるで「ここが自分の居場所だ」と
言わんばかりに甘える。
その姿に、使用人たちも思わず頬をゆるめた。
「豆豆は春燕様が本当に好きなんだな!
どこにでもついて行く。」
庭番が笑いながら声をかけると、隣の者も頷く。
「きっと春燕様のことをご主人様だと思って
いるんでしょう。仕える相手をちゃんと
見てるんだな。」
花の手入れをしていた庭番が豆豆の背を
撫でながら言った。
「お前さんもいいお方を選んだな。」
春燕は頬を赤らめ、恥ずかしそうに微笑んだ。
琳家に来てまだ日が浅いのに、豆豆だけでなく、
使用人たちまでもがこんなふうに温かく
迎えてくれることが嬉しかった。
*
そんなある日のこと。
庭仕事を終えた春燕のもとに、数人の使用人が
小さな布包みを差し出した。
「これは……?」
春燕が包みを開くと、中には小さな鈴が一つ。
表面には「豆豆」と刻まれている。
「手先の器用な者に作らせたんです。」
使用人の一人が少し照れくさそうに言う。
「この屋敷には猫が多いですから、間違えて
外に出てしまうと大変でしょう。
これなら鈴の音ですぐに豆豆だと分かります。」
「春燕様には、いつも感謝しているんです」
もう一人が続けた。
「私たちのような奴婢(奴隷)にも気さくに
声をかけてくださって……名前を呼んで
くださるだけでも嬉しいのに、怪我をすれば
すぐに手当まで。本当にありがたいことです。」
その言葉に周りの使用人たちも一斉に頷いた。
春燕は手のひらの上の小さな鈴を見つめ、
胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「……こちらこそ、ありがとう。こんなに素敵な
ものをいただけるなんて、本当に嬉しい。」
豆豆の名が刻まれた鈴を指で
なぞりながら、春燕は愛おしそうに目を細めた。
その姿を見て、使用人たちは
「なんてお優しい方なのだろう。」と改めて
心を打たれ、ますます春燕を慕うようになった。
次回の更新は【明日21時】です。
春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ
近づいていく時間を、
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