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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第七話「星空」3

第七話「星空」は3分割で更新していきます。これは3つ目です。

「農産物は四代前からだ。初代と二代目は

 主に塩と鉄を扱っていたが、専売制度が

 始まるときに手を引き、代わりに土地を買った。」


「へぇ……!」春燕しゅんえんの目が輝く。


凌偉りょういは続ける。

 「その土地を耕し、農民に貸し、

 米や麦を取引するようになった。

 得た金で農民や商人に貸付も始めた。


 やがて人が集まり、街が大きくなり、

 商いが更に広がった。


 りん家が作った流通の交易路を使って運搬業も始めた。

 今ではよう家と共に護衛や警備の手配もしている。」


春燕は身を乗り出すように聞き入っていた。


「すごい……!

 目録を見たときも驚きましたけど、

 本当に規模が違いますね。

 まるで琳家そのものが一つの都市みたい!」


その熱のこもった言葉に、凌偉の表情が

わずかに和らぐ。


「商いの話は好きか?」

年頃の娘なら、もっと華やかなものに

興味を持つはずだろう。――そう思いながら。


「はい! 家は山間の街で材木の取引をしていました。

 上質な杉がとれて、ふもとの街で建築が

 始まると大忙しで……帳簿をつけるのも大変で。」

春燕が懐かしそうに笑う。


「……貴方が帳簿をつけていたのか?」

凌偉は思わず聞き返す。


「はい。もともとは母が帳簿を管理していましたが、

 亡くなってからは私が引き継ぎました」


凌偉の眉がわずかに動く。


「父親や後妻は? 本来、帳簿は妻の仕事だろう。」


「……お父様はお客様のもてなしで忙しく、

 商いにあまり関心がなくて。

 お義母様は数字や計算が苦手で……。」

春燕は言葉を選びながら答えた。


「……そうか。」

凌偉は黙り込む。


胡家の商売が傾いた理由が、少し見えた気がした。

きっと亡き母が支えていたのだ。

母を失ってから、商いが揺らいだのは

当然のことだろう。


「凌偉様の帳場も大変でしょうね。

 いつもお忙しそうで。」

春燕が想像するように言う。


「そうだな。俺の帳場は慌ただしいぞ。

 ――明日、見に来るといい。」


「……えっ!?私が、凌偉様の帳場に……!?」


春燕は目を丸くする。


帳場は琳家の心臓部。帳簿は商人の命。

外の者は足を踏み入れることすら許されない場所だ。


恐る恐る口を開く。

「私が入るのは……不相応では?」


春燕の心配をよそに凌偉は気にも留めず、

ただ短く言った。


「貴方ならいい。」

次回の更新は【明日21時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が少しずつ

近づいていく時間を、

皆さまにも見守っていただけたら嬉しいです。


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブックマークや応援をしてもらえると励みになります。

感想もとても嬉しいです。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます!

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