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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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間の話 2

 優しい日差しが庭に降り注ぐ。

風に揺れる白布の列から、ほんのりと陽の

匂いが漂っていた。


琳家りんけって、本当に沢山の人が働いているのね。」

春燕しゅんえんは、ふわふわに乾いた掛け布団を

両腕いっぱいに抱えながら、目を丸くした。


今日一日会っただけでも、もう五十人以上の

使用人の顔を見た。


「そうですね〜。本邸だけでも、通いと

 住み込み合わせて……

 だいたい四百人くらいですかね。」

夕月ゆうづきが当たり前のように答える。


「四百!?」

春燕と雪麗せつれいは、ほとんど同時に声を上げた。


紅花こうかがくすりと笑って言う。

「それに、街には琳家の別邸が三ヶ所あって、

 織物場や染織場もありますから。

 恭信きょうしん様のご子息方がそれぞれ管理されてるんです。

 そっちの使用人が三百人ぐらい。」


「じゃあ……全部合わせたら……?」

春燕が恐る恐る聞く。


「琳家直属で七百人くらいですかねぇ。

 あとは代々仕えてる楊家ようけとかの人々も

 合わせると……千人くらい?」

夕月が何でもないように指折り数えながら言う。


「せ、せん……!」

春燕は思わず手の中の布団を落としそうになった。


凌偉りょうい様って……本当に、すごい方なのね……。」

思わずこぼれた声は、ため息のように柔らかかった。


「そりゃあそうでしょ。」

紅花があっさりと答える。


「私たちの自慢の当主様ですから。」

夕月が笑顔で続ける。

二人の声は誇らしげで、どこか嬉しそうだった。


春燕はしばらく言葉を失い、風に揺れる洗濯物を

ぼんやりと見上げた。


「やっぱり私……とんでもないところに来てしまったのでは……。」


その呟きは、午後の風にさらわれ、

白い布の向こうへと消えていった。

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