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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第四話「贈り物と意地悪 前編」1

第四話「贈り物と意地悪 前編」は5分割で更新していきます。これは1つ目です。

 琳家りんけ本邸の隣には、武道の家柄・楊家ようけの道場がある。


代々琳家に仕えてきた一族で、琳家一族の護衛、

屋敷の警備から運搬の警備まで一手に担っている。


 その跡取りなのが――このオレ、

楊愁飛よう しゅうひ21歳!いえーい!


凌偉りょういとは、生まれたときから一緒の幼馴染であり、

そしてオレの主様。

で、その無愛想で仕事人間な凌偉に、

とうとう婚約者(仮)がやって来たってわけだ。


しかもめちゃくちゃ可愛い!

いやー羨ましい!


あの色恋に関心ゼロだった凌偉も、今ごろ

幸せいっぱいに違いない。


……せっかくだから、からかってやるか。


「凌偉ー!いるー?」

遠慮もなく扉を開け、凌偉の書斎へ入る。


机に並んだ竹巻の上に筆を走らせていた凌偉が、ちらりとこちらを見た。


「なんだ」


いつもと同じ澄ました顔。

――けどオレにはわかる。

めっちゃ機嫌悪い。仕方がない。

少し話を聞いてやるか。


 

「ぷっ…はははは! 初日から家事手伝いって!

 ひー!お腹痛ぇ!」思わず机を叩いて笑い転げる。


「笑い事じゃない。」

声は落ち着いてるけど、不機嫌全開だ。


「朝から洗濯、薪割り、水汲み、庭掃除、廊下磨き…。厨房の洗い場にもいた。」

そう言って、凌偉は筆を置き、近くのなつめに手を伸ばした。


「今日は馬小屋の掃除と餌やりも手伝っていたそうだ。」


呆れ声でそう言いながら、棗の皮を剥いて口に運ぶ。


「はははっ! 完全に使用人じゃん!」

オレも棗をつまんで口に放り込みながら笑う。


「うちの使用人より働いてるぞ。すぐ根を上げると思っていたのだが…」

棗をもう一つ手に取り、凌偉は淡々と続ける。


「挨拶以外でこちらに話しかけてこない。ここ数日、まともに言葉を交わしていない。」


「うわぁ、今まで来た娘と全然違うタイプだな。」


オレはニヤニヤしながら肘をついて話を聞く。

面白くて仕方ない。今まで押しかけてきた女の子達は

みんな凌偉にお近づきになれる機会を常に伺っていたからな。


「気に入られたくて働いているわけでもなさそうだし…。

 商家の娘だと聞いていたが、あんなに奴婢ぬひ(奴隷)のように働く者は見たことがない。」


凌偉の声には、困惑と少しの苛立ちが混じっていた。


 実際、春燕が屋敷に来てからというもの、

使用人全員が彼女の話題を持ち出してくる。

常に春燕とあれをしただの、これをしただの…。

必要のない報告ばかり。

おかげで凌偉の仕事は滞りがちだった。


「確かに“好きに過ごせ”とは言ったが…。

 このままでは取引相手から

『琳家は婚約者を使用人扱いしている』と

 誤解されかねない。琳家の面子に関わる。」

頬杖をつき、渋い顔をする凌偉。


「いやいや、まだ来たばかりなんだし。

 緊張してるんだよ、きっと。」


「婚約者(仮)なんだからさ、もうちょっと仲良くなったらどう? 贈り物とかさ。」


「贈り物?」凌偉が顔を向ける。


「そう。“ようこそ琳家へ”って。歓迎と、大切にするって気持ちが伝わるでしょ?」


ふむ、と顎に手をやり考え込む凌偉。

そしてすぐに頷くと、使用人に命じて街の

商人たちを呼び寄せた。

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