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水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第一章「氷心、春に融く」

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第三話「琳家」2

第三話「琳家」は少し長くて7分割で更新していきます。これは2つ目です。

「…何をしているんだ?」


紅花こうかに連れてこられ、凌偉りょういが来たのはりん家本邸の広々とした洗濯場。


その洗濯場に、婚約者が、いた。


「凌偉様! おはようございます!」


洗濯桶の前でしゃがみ込んでいた春燕しゅんえんが、慌てて立ち上がり頭を下げた。

両手はまだ水に濡れていて、赤くなった指先が小さく震えている。


「……何をしているんだ?」


思わず同じ言葉を二度口にしてしまう。


「朝の洗濯をしておりました。

 今日はよく晴れていますから、すぐ乾きますよ。

 お屋敷は人が多いのですね!洗濯も大変です!」


にこりと笑って答える彼女の姿に、凌偉はどう言葉を返せばいいのか迷った。


確かに屋敷は人が多い。

本邸に暮らす琳家の家族は三人だけだが、使用人は奴婢ぬひ(奴隷)を含めると四百人を超える。

 だが、それにしても――


「何故貴方が…洗っているんだ?」


あまりに当然のように桶に手を突っ込む春燕の姿が信じられなかった。


「昨日の服が汚れてしまったので…。」

泥のついた衣を擦りながら春燕は答えた。


「そんなことをする必要はない。

 身の回りの仕事は使用人にやらせればいい。」

凌偉の声には当然のような響きがある。


「いえっ!家では毎日家事をしていました。

 お世話になるのですから、自分のことは自分でしな ければ!」

春燕はにこりと笑う。凌偉は一瞬、言葉を失った。


「貴方の侍女は?」

そういえば侍女が一緒に来ていたはず…と言いながら当たりを見回す凌偉。


「あちらです。」

春燕が雪麗せつれいを指差す。


凌偉が目を向けると他の使用人と一緒に水汲みをしている。

あれもなかなか重労働の仕事だ。

他の使用人が手を貸そうとしているが、軽々と水が入った桶を涼しい顔をして運んでいる。


「そろそろ朝餉あさげの時間だから、

 迎えに来たのだが…。」

凌偉が声をかける。


「…私が凌偉様と?ご一緒するのは…失礼では?」

春燕は不安そうに問いかける。


「なんで失礼なんだ?家族にも紹介したい。行こう。」

凌偉は春燕の目を一瞥し、何事もなかったかのように廊下を歩き出す。


「はっはい!」春燕は慌てて後に続く。

朝の澄んだ光の中、二人の影が長く廊下に伸びていった。

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