表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水月鏡花―中華恋愛譚・静かに灯る初恋―  作者: 麻倉ロゼ
第二章「花心、光にほどく」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/113

第三話「逢引」5

第3話「逢引」は6分割で更新していきます。これは5つ目です。

春燕しゅんえん、街はどう?」


隣で、愁飛しゅうひが笑いながら尋ねる。


「何もかもが大きくて……

活気も、店の数も、人も……

私達が住んでいた所とは、比べ物になりません。」

思わず、正直な感想がこぼれた。


前に一度来た時は、市外だったから気がつかなかった。

本当の街の中心部が、こんなにも息づいているとは。


「この街は、琳家の商いに合わせて大きくなった街だからね。

琳家が育てたみたいなものだよ。」

愁飛は点心を頬張りながら、当たり前のように言う。


「こんなに大きな街を……!?」

春燕は、思わず息を呑んだ。


商家が、街そのものを育てた――

その規模も、歴史も、想像できなかった。


自然と、視線は凌偉りょういへと向かう。


見上げると、ぱちりと目が合った。


「そうだな。」

凌偉は、少しだけ照れたように視線をそらし、

湯気の立つ茶に口を付ける。


「凌偉!お前はもう少し、愛想良くしろよ。」

愁飛は、椎茸と筍の点心を皿に置いた。

どうやら凌偉の好物らしく、おかわりをしている。


「うるさい。」

凌偉の声は、春燕と接する時より

ほんの少しだけ砕けていた。


そのやり取りが可笑しくて、春燕は「ふふっ」と笑う。


二人の間には、春燕と雪麗せつれいにも似た、

長い時間で育った絆があるのだろう。


「愁飛様は、凌偉様とは昔からのお知り合いなのですか?」

前から気になっていたことを、そっと尋ねる。


「そうだよー!」

愁飛は、満面の笑みで答えた。


「楊家は琳家に代々仕えてる武道一家で、

琳家一族専属の護衛役なんだ。」

そう言って、わざとらしく凌偉の肩に腕を回す。


「凌偉とは、生まれた時から一緒!

凌偉のことなら、なーんでも聞いてね!」


「おい。余計なことは言わなくていいからな。」

凌偉は、遠慮なく愁飛の腕を払いのけた。


「凌偉が小さい時の面白い話とか、

怒られて泣いた話とか……。」

愁飛がニヤニヤしながら言った瞬間、


凌偉は、すかさず脇腹へ一撃を入れる。


――が、素早く愁飛の掌で受け止められた。


まるで、兄弟そのもののじゃれ合いだ。


春燕は、また笑ってしまう。


「無愛想な仕事バカだけど、いい奴だから。

よろしくね、春燕。」

愁飛は、からかうでもなく、まっすぐな声で言った。


「はい。」

春燕も、まっすぐに応えた。


次々と運ばれてくる点心は、どれも温かく、香り高い。

食後には、花の香りが広がる茶を味わい、

楽しい時間は、ゆっくりと流れていった。


食後、店の庭に広がる池を眺めながら、

春燕と雪麗は並んで歩く。


鯉が水面を揺らすたび、

二人の表情にも、柔らかな笑みが宿った。


その後ろ姿を、少し離れた場所で見守りながら。


「楽しそうで良かった。」


「そうだね。」


凌偉と愁飛は、穏やかに微笑んでいた。

※作者より

「水月鏡花」の更新は【週3日/月・水・金 21時頃】です。

春燕と凌偉、それぞれの心の距離が、

少しずつ近づいていく時間を、

見守っていただけたら嬉しいです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ