王太子視点 公爵の娘を気に入りました
俺の名前はエミール・ブルゾン、このブルゾン王国の王太子で六歳だ。
父のマルセル国王と侯爵家出身の母カロリーヌの間に出来た長男だ。
弟のアシルはまだ1歳ちょっとで基本的にはこの国は俺が継ぐことになると思う。
母は自分が侯爵家出身でいろいろ嫌な目に合ったみたいで、俺の婚約者は出来れば公爵家から選びたいようだった。
一番年が近くて年下なのが宰相のロワール公爵の娘のクラリスで、後は爵位が下か、年が大分離れるかだった。ただ、クラリスは母を早くに亡くしており、父であるロワール公爵と兄のセドリックに散々甘やかされて育ったみたいで、気が強くてとても我が儘だと言う噂があった。
俺としては婚約者なんて煩わしいだけで、別に要らなかったのだが、父も母も選ぶ必要があると言うのだ。
俺は早くから王太子に立てられていたからか、女どもからはキャアキャア言われてベタベタと寄って来られるので、いつも年の近い女は冷たくあしらっていた。でも、それで却って氷の貴公子なんて二つ名がついて人気なんだそうだ。本当にやってられなかった。
クラリスという女が噂通りの女なら、俺としては絶対に婚約者なんかしたくなかった。
「まあ、エミール。女よけのためにも婚約者は早くに決めておいた方が良いわ。その方がお前もいつも女の子に言い寄られなくて良いでしょう?」
母はお気楽に言ってくれるのだが、まあ、確かに女よけにクラリスがなってくれるのならばそれに越したことはない。どのみち婚約者なんて皆同じだ。
馬鹿で噂話が好きなだけで、宝石や衣装さえ与えておけば文句は言ってこないだろう。
俺は気軽な気持ちで、
「会うだけなら良いですよ」
と母に返事しておいた。
その日はせっかく騎士達がダンジョンに連れて言ってくれると言っていたのに、顔合わせでロワール公爵が娘を連れてくる事になって、俺は朝から機嫌が悪かった。
そんな時に来たのがクラリスだ。
どれほど我が儘な奴なんだろうと俺は期待しないで待っていたら、この娘、いきなり目の前で転けてくれたのだ。
そして、ぽかんとした顔で俺を見上げてくれた。
その俺の手に娘の持ってきた公爵家の秘法の思い出の花が飛んで来たのだ。
それを握ると
「きゃっ」と叫んで転けるクラリスが映ったのだ。
最後はなんとも言えない悲惨な顔を上に向けた、クラリスが映っていた。
「わはははは」
そのあまりに呆けた顔に俺は思わず吹き出してしまったのだ。
せっかく準備しておめかししてきたのに、両親と俺の前で転けて馬鹿面をさらすなど、最高だった。
それもその証拠の品を俺の手元に届けてくれたのだ。
これを笑わずにいられようか。
それにイチゴを見て目を輝かせる笑顔が何故か俺の脳裏にとても印象づけられたのだ。
「どうだった?」
父から聞かれて、
「クラリスで良いです」
俺は即答だった。
あの様子を見た限り我が儘三昧の娘には到底見えなかったし、傍にいるだけで俺を楽しませてくれるような気がしたのだ。
あの驚いて顔を上げた馬鹿面と言ったらなかった。
それに食べる時の笑顔がとても可愛かったし。
そう、俺は一目惚れしたのかもしれなかった。
「もう少しいろんな子に会ってからでも良いのよ」
母はそう言ってくれたが、あれ以上俺を楽しませてくれる子供はいないだろう。
「いえ、クラリスで良いです」
俺は母の言葉に首を振ったのだ。
「まあ、日頃笑わないエミールが笑ったんだからな。それで良いのではないか」
「しかし、あなた、面白いだけの子供ではお妃教育が耐えられるかどうかも判りませんわ。礼儀作法のロッテンマイエルが公爵家を首になったことを未だに根に持っているみたいですし」
母はそう言うが、俺もロッテンマイエルは苦手だ。それを袖にしたと言う点は俺と気が合うと思えた。
「足りない分は私がフォローしますから」
「まあ、エミールがそこまで言うなんて、そんなにあの子を気に入ったの?」
母が目を輝かせて聞いてきたのには参ったが……
まあ、女の一人くらい面倒は見れるだろう。
俺は簡単に考えたのだ。
その次にクラリスが王宮に来た時、俺は自分の部屋に案内しようとした。
しかし、クラリスはやはりドジみたいで、いきなり廊下で転けてくれたのだ。
俺には信じられなかった。
どこまで運動音痴なんだよ!
まあ、仕方が無いから俺はクラリスの手を繋いでやったのだ。
クラリスの手はとても温かかった。
周りが俺達を見て驚いていたが、これ以上俺の婚約者のクラリスに醜態をさらさせる訳には行かない。
ここまでドジなのだ。頭の方も結構残念なのかもしれない。歴史の教授とかは文句を言いそうだと俺は少し憂鬱になったのだが、俺の部屋で本を読ませようとして、俺は固まってしまった。
なんとクラリスは俺が読めもしない古語の歴史の本をすらすらと読み出したのだ。
最初は読んでいる振りをしているだけかとも思ったのだが、どう見てもちゃんと読んでいるのだ。あり得なかった。
天才と教師共から言われて天狗になりかけていた俺でも、読めないのに! 1つ下の馬鹿面をしたクラリスがすらすら読めているのだ。俺は横っ面を張り飛ばされたような気になった。
俺はもっと真面目に勉強しようと心に決めたのだった。馬鹿にしたクラリスに負ける訳にはいかない。
そこで少しむかついた俺はクラリスのために持ってこさせたイチゴのケーキを、本を読んでいるクラリスに食べさせたのだ。
最初は嫌がっていたクラリスだったが、最後は俺の手ずからケーキをニコニコして食べてくれた。
俺は特等席でクラリスの笑顔が見れてとても嬉しかった。
まあこいつとなら一生涯楽しくやっていけそうだと俺は思ったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
王太子視点のクラリスでした。
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ここからお妃教育です。
果たしてロッテンマイエルのしごきにクラリスは耐えられるのか
続きは明朝です。
こうご期待!
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