襲ってきた教会暗部を返り討ちのしました
私に張り飛ばされたエミールは段の下に飛んで行った。
ギャッーーー
ギャッーーー
「キャーーーー」
「あの女、王太子殿下を張り倒したわよ」
「不敬だわ!」
騎士達がエミールに巻き込まれて、倒れていた。
ざわめきが起こるが知ったことか!
騎士達は目を見開いて、口を開けて私を見ていた。
私が、じろりとにらむと、
「ヒィィィィ」
と騎士達が慌てて目を逸らした。
その横でカンダベル先生が頭を抱えていた。
「ふんっ」
私はそのまま壇の裏から飛び降りるとずんずん会場を後にしたのだ。
「クラリス様!」
後ろからカンダベル先生の慌てた声が聞こえたが、知ったことではなかった。
何が私一筋よ!
何が任務よ!
そんなことは前もって私にちゃんと説明してからやるものじゃないの?
私はエミールから事前に何も聞いていなかった。
私の脳裏にはアニエスに抱きつかれて大きな胸を手に押しつけられて鼻の下を伸ばしているエミールの顔が浮かんだ。
「許さない!」
私は拳を込めて目の前の木に叩きつけていた。
ドシーン
でかい音がしてその木が倒れていった。
確か樹齢五百年とか言われていた大木のような気がしたが、無視だ。
この二週間ばかり、アニエスと仲良くしているエミールの姿は散々見せつけられた。絶対に許さないんだから!
私は止まっていた馬車に乗り込んだのだ。
「お、お嬢様?」
御者が驚いて聞いてきたが、
「すぐに屋敷に帰るわ」
私が言うと、
「あのうセドリック様は?」
「えっ?」
そういえばお兄様を忘れてきた。
まあ、でも、お兄様は生徒会長だ。途中で抜ける訳には行かないだろう。
「もう一度迎えに来て」
「し、承知いたしました」
何故か御者が脅えている。
そんなに私が怖かったんだろうか?
うーん、仕方ないよね。
全部悪いのはエミールだ。
もう、絶対に許さないんだから!
馬車が軽やかに動き出した。
今までエミールと一緒に仲良くやってこれたと思ったのに、私に断りもなしに他の女と仲良くしていた事が私は許せなかった。それも、私の前でイチャイチャしてくれたのだ。あのアニエスの自慢たらたらの顔を見せられながら、私は爆発するのを我慢していたのだ。
いや、もう絶対に断罪婚約破棄されるものだと思っていた。
それが私一筋だって!
笑わせないで!
絶対に許さないんだから!
私は更に怒りが湧いてきた。
そんな時だ。
ヒヒーン!
いきなり馬がいなないて馬車が急激に止まったのだ。
私は地面に投げ出されていた。
「何なのよ!」
私が怒りで叫ぶと、
「判りません。いきなり多くの者達に囲まれて」
私はその声にカーテンを開けると黒ずくめの男達に囲まれていた。
こんな街の真ん中で黒ずくめの奴らが襲ってくるなんて普通は考えられない。
そういえば、私、前世のゲームの中で悪役令嬢を断罪した後に、破落戸に襲われて殺されたのだった。
普通ならば真っ青になりそうな事だった。
でも、私は今はエミールに酷い目に合わされて完全に切れていたのだ。
「おい、お前、退け」
御者が引きずり下ろされた。
そして、馬車の扉があっという間に開けられたのだ。
そこには黒いマスクをした男がにやりと笑って現れた。
私の一番嫌いないやらしい笑みだ。
「クラリス・ロワール公爵令嬢だな」
男が聞いてきた。
「そうだけど、それがどうかしたの?」
「ふん、生意気な令嬢だな」
偉そうな男が眉をあげてくれた。
「どちらが生意気なのかしら?」
私は切れているのだ。
公爵家の馬車を止めて、私に下卑た笑みを浮かべて襲いかかろうとしたのだ。何をしても良いよね?
「生意気な女も好きだぜ。今から貴様を引きずり下ろして、じっくりとその体に聞いてやるわ」
私はぞわりと背筋に悪寒が走った。
もう許せなかった。
その生意気な男が、下卑た笑みを浮かべて私にてを伸ばしてきたのだ。
私は体を引いた。
「ふ、ふ、ふ、二度と生意気な口が聞けないようにじっくりと躾をしてや、ギャーーーーー」
「煩い!」
私は男の顔を思いっきり、蹴飛ばしてやったのだ。
男は一瞬で顔を押さえて吹っ飛んでいった。
「おのれ、よくも……」
他の男達が慌てて私に向かってこようとした。
「煩いわね! 私は今、メチャクチャ気分が悪いのよ! なんか文句あるの!」
私は馬車から乗り出して睨んでやったのだ。
私の体から黒いモヤモヤがぞわーーーーーと広がって行く。
完璧な威圧だ。
「「「ギャーーーー」」」
男達は一斉に胸を押さえて、その場にへたり込んだのだ。
ゴブリンかオーガだかしらない魔物が一瞬で逃げ出した奴だ。
生身の人間が耐えられる訳は無かった。
カンダベル先生に教わって更に強化したのだ。
魔力を制御できない私でも使えるはずだ。
「誰に頼まれたの?」
私は一人の男の胸ぐらを捕まえて聞いていた。
「言えん」
「言いなさい」
「ギャーーーー」
男は断末魔のような悲鳴を上げて失禁して倒れてしまった。
「そこのあなた。教皇の命令なのかしら」
私が横の男の胸ぐらを捕まえた。
「はい、猊下と聖女様です」
「皆、聞いたわね」
その頃には私達は公爵家の騎士達に囲まれていた。
そもそも公爵家と学園の間で私を襲って生きて出られるなんて思っていたんだろうか?
脳天気な教皇等に笑いたくなった。
「直ちに大聖堂を急襲、教皇を捕縛しないさい。逆らったものはついでに全員捕縛して良いわ」
私が命じたのだ。
「宜しいので」
「私の殺害容疑よ。当然よ。文句言ってきたら全部エミールに回して良いから」
私はそう命じると、伸びている馭者を馬車に乗せて一路公爵邸に向かったのだった。
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ラストまで後少しです。
お楽しみに