婚約者が私が胸が無いとはっきり言ってくれたので、怒り狂って張り倒してしまいました
「酷い、エミール様。今まで私を大事にして頂けていたのに、騎士団にこんな事をさせるなんて酷すぎます」
騎士達に後ろ手に縛られながらアニエスが叫んでいた。
「何が酷いだ! 酷いのは貴様等だろうが。聖遺物なんて使って、ゴモラの街のスタンピードを起こしてくれて、どれだけ多くのものが迷惑を受けたと思うのだ!」
「だって、エミール様が全然私を振り向いてくれないから。これも全部そこの悪役令嬢が悪いのよ」
きっとしてアニエスは私を睨んでくれた。
「せっかく途中までうまくいっていたのに、クラリス、あなた転生者なんでしょ。大山華子。あなたよね?」
アニエスが私に変なことを言ってくるんだけど……
「誰よ? 大山華子ってそんな子は知らないわ」
私は首を振ってやったのだ。
「あなたはそこまでしてしらを切るの? あなた前世で私を虐めて散々な目に合わせてくれただけでなくて、今世までも私の邪魔をしてくれるなんて絶対に許さないわ。女神様に悪役令嬢をやれって言われていたにもかかわらず、やらないなんて信じられない!」
アニエスが叫んでくれた。
まあ、私も悪役令嬢をやらなかったという点ではそうだけど、元々、気の弱い私が悪役令嬢なんてやるのが無理だったのよ。そもそも女神様に一度たりともやるなんて言っていないんだから。
私は心の中で言い訳したのだ。
「おい、アニエス。何を言っている! 俺はクラリス一筋だ。一度たりとも貴様に惹かれた事なんて無いぞ」
エミールがアニエスの言葉に怒り出した。
「俺はせっかく学園でクラリスと一緒に通えるようになったから、一緒に通っていたかったんだ。それを貴様の保護者の教皇と母が結託してくれて、やりたくもない貴様の面倒を押しつけてきやがって。ゴモラの街でも騎士団長と魔術師団長に泣きつかれて、渋々貴様の我が儘に付き合わされたのだぞ。何で俺様が貴様に惹かれなければならんのだ?」
「そんな、エミール様は私の胸を押しつけられて喜んでいたじゃないですか?」
アニエスが叫んでいた。
「黙れ! 何故、俺が貴様の胸を押しつけられて喜ぶんだ?
俺は六歳の時にクラリスに会ってからずうーっとクラリス一筋なんだ。クラリスは我が家の母みたいに煩くないし、イチゴとケーキさえ与えていれば本当に天使の笑みを浮かべて俺の手ずから食べてくれるんだぞ。俺はこの一ヶ月間、貴様等が余計な事をしてくれたせいで、父と母からこの捜査の責任者にされて、クラリスに会うこともままならなかったんだ。何が嬉しくて頭が少しずれた貴様の相手をしなくてはならないんだ! 俺が優しくしただ! 貴様を調べるために近付かざるを得なかったから、仕方なしに、していただけだ。
なのに、クラリスに無い胸を俺に押しつけてクラリスの感情を逆なでしやがって。貴様のせいで俺はどれだけクラリスに嫌われたと思っているのだ。だから元々貴様の相手はいやだと母にも言い張ったのに!
ゴモラでスタンピードなんか引き起こしてくれるから、俺が相手をしなければいけなくなったんだぞ。
俺が少しクラリスの傍を離れただけで、ゴンドワナのゴキブリと我が国一のチャラ男がクラリスに近付いてくれたじゃないか! どうしてくれるんだ。この胸だけ女!
俺はクラリスが横にいてくれさえすれば良いんだ。胸の大きさもクラリスみたいにこぢんまりしていてそれでいいんだ。貴様が胸が無いとか余計な事をクラリスに言うから俺が睨まれたんだぞ。俺はクラリスがペチャパイでも全然問題ないんだ!」
「で、殿下……」
カンダベル先生がエミールの注意を払ってその口を閉じさせてくれた。
「えっ、どうかしたか?」
エミールは顔の引きつったカンダベルにつつかれてこちらを振り返ってくれた。
そう、私はエミールの言葉に完全に切れていた。それでなくても胸が無いのを気にしているのに、エミールはあろうことか私の事を皆の前でベチャパイと広言してくれたのだ。
私はエミールを許すつもりはなかった。
「誰がペチャパイなのよ!」
私は叫んでいた。
「いや、違うぞ、クラリス。俺は言っていない。言ったのはあの聖女だ」
エミールが必死に言い訳してくれたが、私ははっきりとエミールが私がペチャパイだというのを聞いていた。
それでなくても、エミールは私が地味で大人しくて面白みがないとか散々アニエスに言っていたようだ。本人は言っていないと言い張るかもしれないが、今も私がペチャパイだとはっきり言ったにもかかわらず、言っていないと言い張っている。絶対にそれに近い事を言ったに違いないのだ。
それに今まで散々大きなアニエスの胸を手に押しつけられて鼻の下を伸ばしておきながら、胸がでかいのが嫌いだ?
そういう事は休み休み言ってほしい。
「もう絶対に許さない!」
私はそう叫ぶと怒りのあまり、思いっきりエミールの頬を張り倒していたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここまで相手にされなかった事もクラリスの怒りに火をつけていました。
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