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王太子とパーティーまでに婚約破棄したかったのに、父と兄は認めてくれませんでした

 翌日、その放課後に職員室にわざわざ様子を見に行ってくれたフェリシーに教えてもらったのだが、エミールとアニエスはロッテンマイエル先生に延々2時間くらい怒られていたようだ。

 本当にいい気味だった。


 でも、その後エミールが私の所に謝りには来なかった。

 普通は土下座せんばかりにして謝りに来るはずなのに……


 私は女神様の言葉を思い出していた。

 どんなに足掻いても、未来が変わることは無い、と……


 エミールのことは好きだったけれど、どうやら無理みたいだった。

 エミールとの楽しい想い出が脳裏をよぎった。

 こんな事なら、ゴモラのダンジョンにも私が行かなかったら良かった。二人で仲良くしていたのだ。いずれは一年くらいかけて浄化できたのかもしれない。そうすればこんな惨めな気持ちにもならずに、二人で知らないうちに幸せになってくれたのかもしれなかった。


 私がゴモラに行ったせいで、二人の仲が進展しなかったけれど、今こうしてゲーム補正が働いたみたいだった。

 何か一人で馬鹿を見ているみたいだった。

 苦労してダンジョンまで行ったのに、本当に馬鹿だった。


 こうなれば私も諦めるしか無い。私のために公爵家が没落するのは防がないといけない。



「お父様、折り入ってお願いがあるのですが」

 私は夕食時にお父様にお願いしたのだ。


「なんだい、可愛いクラリス。お前のお願いならば何でもかなえるよ」

「クラリス。お父様だと駄目なのかい! お兄様で出来ることなら何でも、するよ」

 親馬鹿のお父様だけで無くてシスコンのお兄様まで私の方を期待に満ちた目で見てきたんだけど……


「いえ、あの、その」

 二人の期待に満ちた視線の中でエミールとの婚約を破棄したいなんて中々言い出せなかった。


「ドレスが欲しいのかい。何なら王都中のドレスでも買いそろえるよ」

「ドレスより、宝石じゃないかな。何なら王都一のジュエリーショップブルゾンの宝石の宝石を全て買い占めようか?」

 二人とも止めてほしい。そんな無駄遣いしたらさすがの公爵家でも傾くじゃない!


「いえ、そんなことでは無くて」

「じゃあ、どんなことだい?」

「何でも言ってごらん?」

 二人がキラキラした視線で私を見てくれるんだけど……

 そんな中で言える訳無いじゃない!


 私はしばし逡巡した。


「父上、そんなにクラリスを見たら言い出しにくいのだと思いますよ」

「セドリック、お前もクラリスを見過ぎだ」

 二人がそう言って食べ出してくれた時だ。


「実は、殿下との婚約を破棄したくて」

 私が言い出した途端だ。

「「ぶっはー」」

 お父様とお兄様が二人して食べていたものを吹き出したんだけど……


「ちょっと、お二人とも汚いです」

 私が注意するが、二人は咳き込んで大変みたいだった。


「だ、大丈夫ですか?」

 私は慌てて二人の背後に回って背中をさすってあげた。


「く、クラリス、どうしたんだ?」

「あんなに仲が良かったじゃないか?」

 お父様とお兄様が驚いて私を見てきた。


「それは昔の話です」

 私は即座に否定したのだ。


「聖女と殿下の関係かい?」

「でも、それは殿下が必死の言い訳の手紙を書いていたよね」

 二人とも何故か殿下の肩を持ってくれるんだけど……なんで?


「手紙は確かにもらいましたけれど、今日も殿下はアニエスさんに胸を手に押しつけられてとても嬉しそうにしていました」

「胸を押しつけられただと」

「許せませんね」

 二人は私のために怒ってくれた。


「だから、もう、殿下とはお別れした方が良いかと……」

「うーん」

「クラリス、殿下の気の迷いということもあるんじゃないかな」

「そうだよ。クラリス。婚約をこちらからお断りするのは簡単なのだが、もう少しだけ待ってみては」

 でも、私がそう言うと二人はとても難しそうな顔をしてくれたんだけど……


「何でなんですか? 生徒会のエマ様にお話ししても、私のお話に賛成してくれましたし、私の友人のフェリシーも『あんな最低の殿下とは別れた方が良い』とはっきり言ってくれました。留学生のマクシムさんなんて、『ゴンドワナ王国では婚約者を蔑ろにするなんてあり得ない』ってとても憤ってくれたんです」

 私がむっとして言い返すと、


「いや、クラリスの怒るのはよく判るよ」

「そうそう、だけどマクシム君はゴンドワナでも女たらしとして有名だからね。あんまり近付かない方が良いんでは無いかな」

「何でなんですか? アニエスに胸を押しつけられて喜んでいるのは殿下くらいですよ。『あんなあざとい手に引っかかるのはいやらしい証拠だ』ってはっきりとマクシムさんもおっしゃっていらっしゃいましたし」

 私はむっとしてお父様とお兄様に反論したのだ。


 でも、お父様もお兄様ももう少し我慢したらとしか言ってくれないんだけど……


 私は公爵家が没落したら嫌だからサマーパーティーまでになんとか婚約破棄したかったのに、二人は認めてくれそうに無かった。


 何か女神様の悪意をそこに感じたのは私の被害妄想なんだろうか?




ここまで読んで頂いてありがとうございます

そろそろ山場に突入です

お楽しみに

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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