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聖女に文句を言いにいったら婚約者が聖女の肩を持ったので、その場から涙をためて飛び出しました

 それからロッテンマイエルに暴露されてアニエスが静かになるかというと全然そうはならなかった。

 相も変わらず、徒党を組んで歩いているのだ。それもクラスの男達も連れて歩いていた。


 騎士団長の息子のフェリス・マルベールとかエミールの側近のシャルル・アルザール伯爵令息の弟のジャックとかもその中にいた。


 アニエスはその他子爵令息や子爵令嬢等クラスの過半を集めて一大グループを作り出していた。


 片や公爵令嬢の私はというと、大半はフェリシーと二人で行動しており、お昼とかは伯爵令嬢を中心に7人くらいで食べるようになっていた。

 男爵令嬢のグループの3分の一以下だ。


 まあ、相手はこのゲームのヒロインだから私の方が弱いのは本来は当然なんだけれど……


 それにエミールが毎日アニエスをが送り迎えしているんだけど……どういう事?

 今もわざわざ教室に来てそのアニエスを横に置いて笑っているエミールがいるんだけど……

 私を抱きしめて喜んでいたエミールはどこに行ってしまったんだろう?



「クラリスさん、あれで宜しいんですか?」

「本当に! あの聖女、殿下の手にクラリスにない胸をなすりつけているわよ」

 ルイーズとフェリシーが指摘してくれた。


「いいのよ、別に。勝手にすれば」

 私が何でもないことのように言った。

 でも、何故か皆はぎょっとして私を見ているんだけど、何で?


「あなた、ペンが折れているわよ」

 フェリシーが教えてくれた。

「ペン?」

 私は自分の手の中にあったペンが確かに真っ二つに折れているのを知った。


「何でもないと言いつつ、めちゃくちゃ気にしているじゃ無い!」

 フェリシーが指摘してくれるが、

「そんなこと無いって」

 私は次の授業の教科書を取り出した。


「クラリス、次はお弁当の時間じゃ無いわよ」

 私は机の上に、礼儀作法の授業の教科書では無くてお弁当を出していた。


 本当にアニエスはむかつく!

 私に胸が無いからって胸をエミールの腕に押しつけるな!


「アニエスさんもアニエスさんです。王太子殿下にはクラリスさんと言う立派な婚約者がいらっいゃるのに、あんなにベタベタとして、許せませんわ」

 私の取り巻き達がいってくれたけれど……


 これがゲーム補正というやつだろうか?

 エミールとアニエスは急激に親しくなっているんだけど……



 そういう事がしばらく続いた時だ。

 私達は食堂でお昼を食べていた。


「クラリス、あなた、聞いた?」

 他の教室で選択授業を取っていたフェリシーが目をつり上げて私に突進してきたのだ。


「何を?」

 私が慌てて聞くと、

「今回のスタンピードはあなたが黒魔術を使って起こしたとか噂が出ているわ」


 ダン!

 と食器を机に怒りに任せて置いたフェリシーが教えてくれた。


「はい?」

 私はフェリシーが何を言っているか理解出来なかった。


「何をおっしゃっていらっしゃいますの? 今回のスタンピード討伐を成功させたのはクラリスさんではありませんか? クラリスさんが起こすわけないでしょ」

 ルイーズが否定してくれた。

「だからよ。奴らはクラリスが自分で起こして、自分で収めたって言ってるのよ」

「そんな事するわけないでしょ!」

 私が言ったが

「奴らはそう言い張っているわ」

 何でも私がマッチポンプのように、黒魔術か魔道具を使ってスタンピードを起こして、ばれそうになったので、慌てて証拠もろともダンジョンを消滅させたと言い張っているそうだ。


「なんですって!」

 日頃はあまり目立ちたくないから、関わらなかったのに……エミールが怪我するかもしれないと気が気でなかったから、わざわざあの地までお父様やお兄様の皆が反対するのを押しのけて、行ってあげたんじゃない!

 それを何よ!


 当のエミールは、聖女の胸を押し付けられて、ニヤニヤしているのが、見えた。

 噂を流しているのはアニエスらだろう。

 私は完全にぷっつん切れると、アニエス達に向かって歩きだしたのだ。


「ちょっとアニエスさん! あなた、私が今回のスタンピードを起こしたって、噂を流しているって本当なの!」

 私は怒りに任せて、アニエスに怒鳴り込んだのだ。


「まあ、エミール様、クラリスさんが怖いです」

 アニエスの奴はかまととぶって、私のエミールの影に隠れてくれたんだけど。それも、胸をこれ見よがしにエミールの背中に押し付けてくれていた。

 ちょっと何するのよ!


 驚いた、エミールだが、私の怒りの視線を浴びると、私から視線を躱してくれたんだけど……


「ちょっと、クラリスさん。いきなり、アニエス様に難癖をつけるのは止めて頂けません!」

「そうよ。アニエス様は何もおっしゃっていらっしゃらないわ」

「あなたがやましいところがあるから、そう思うのではなくて」

「そうだ。それに、クラリス嬢が、何も後ろ暗いところがないなら、何を言われても問題ないだろう」

 バルバラやクロエが反論しているところに最後はエミールが視線を会わさずにアニエスを見て言ってくれた。


 私はそのエミールの言葉に完全に切れたのだ。

 私はエミールが死んだら嫌だと思ったから、目立ちたくないのに、わざわざ、現場まで行ったのだ。もともとエミールのために無理して行ったのに!

 なのに、私を援護もせずにそんなこと言うんだ。


 私の全てが完全に切れてしまったのだ。


「そう、判ったわ」

 私はそう言うと皆に背を向けて歩き出したのだ。

 でも、もう怒り狂っていた。

 そして、そんなことしたら、私がまともに歩ける訳無く、足をもつれさせて盛大に転けてしまったのだ。


 それを見て皆どっと笑ってくれた。

 エミールの笑い声も聞こえた。


「クラリス!」

 慌ててフェリシーが駆け寄って来て、私を助け起こしてくれたんだけど……


「ちょっと殿下、クラリスに対してあんまりじゃ無いですか!」

 フェリシーが私の肩を持ってくれたけれど、

「何言っているのよ。勝手な言いがかりをつけて勝手に転けたのはクラリスさんでは無くて」

 アニエスが笑ってくれたのだ。


「何ですって!」

 フェリシーが怒り狂って反論してくれようとした。

「フェリシーいいの!」

 私がフェリシーを止めた。

「でも、クラリス」

「ゴメン、もういいの!」

 私はそう言うと、皆に背を向けて駆け出したのだった。

 目に涙を浮かべて必死に泣くのを耐えながら食堂を飛び出したのだ。

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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
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