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疲れ切って寝ているエミールの唇に自分の唇をそっと重ねました。

 ダンッ


 足を踏み外した私を、エミールが受け止めてくれて、そのまま重なって私達は階段の踊り場に転がり落ちていた。エミールが背中で私を庇ってくれたのだ。

 エミールが衝撃の大半を受けてくれたようだ。


 私は階段の踊り場ではっとした。

 私の下敷きにエミールがなってくれた。

 私はほとんどショックを受けなかった。


「うそ、エミール!」

 私は慌てて起き上がって、エミールを抱き起こしたらエミールが目を開けてくれた。


「クラリス、無事だったんだ」

 ほっとしたようにエミールがそう言うと、ガクッと体を倒してくれたる。

「えっ、うそ! エミール!」

 私は半狂乱になってエミールを揺すってみたが、エミールはびくともしなかった。


「クラリス!」

「クラリス、大丈夫か?」

 お父様とお兄様が慌てて降りてきた。


「私は大丈夫よ。でもエミール様が」

 私は半狂乱になってエミールを揺り動かすが、


「クラリス、これ以上殿下を動かしては駄目だ。頭を打っておられるかもしれない」

 お父様が、私を押さえる。

 お兄様がエミールの手を取って脈を診てくれた。


「スピーーーー」

 その時、何かの音がした。

「えっ?」

「スピーーーー」

 私はまじまじとエミールを見るといびきをかいて寝ていたのだ。


「もう、脅かさないでよ」

 私はエミールの胸をむっとして叩いていた……




 そのまま執事や侍女達がエミールを客間に寝かしてくれた。


「別にクラリスは殿下をここに置いておいて、学園に行って良いと思うぞ」

「そうだ。クラリス、一緒に学園に行こう」

 お父様とお兄様が言ってくれたが、私は首を振った。

 一応、落ちそうになった私を助けてくれたんだし、ここは傍について面倒を見ていた方が良いだろう。

 王宮と学園にはお父様とお兄様が話しておいてくれることになった。


 そして、私は客間でエミールを看病したのだ。


 服も汚れていたので脱がそうかとも思ったが、せっかく気分よく寝ているのだ。私はそのままにすることにした。そして、寝ているエミールの寝汗とかをタオルで拭いてあげたのだ。


 私がカンダベル先生に連れ帰ってもらってから三日が経っていた。普通は馬車の旅でここからゴモラの街までは1週間くらいかかるのだ。それを3日で帰ってきたということは、私が帰ってからエミールはここまで相当無理をしたんだろう。

「そこまで無理しなくて良かったのに」

 私はそう呟きつつ、エミールの顔を見た。


 エミールの顔は小さい頃から見慣れているけれど、最近はますますゲームの時の顔にそっくりになってきた。私の好きだった顔だ。

 まあ、でも、私はゲームでクラリスを断罪しても、最後はクラリスの雇った破落戸どもに殺されたんだった。だからエミールとはハッピーエンドを迎えたことは無かったのだ。


 だからエミールにこんな風に看病したことはゲームでは無かった。ゲームではクラリスに虐められているところをエミールによく助けられたくらいだ。


 それに比べたら、5歳の時からエミールの婚約者だし、週に2回は会ってきたから余程親しいんだけど。


 でも、今回は私の役は悪役令嬢のクラリスだった。幾ら親しくてもゲームでは絶対にエミールとはハッピーエンドを迎えられない相手なのだ。

 エミールと聖女に断罪されて、修道院送り、最悪は処刑だ。



 私の前ですやすや寝ているエミールからは絶対に想像できないけれど、女神様は私が幾らあがいたところで絶対に運命は変わらないと言い切ってくれた。


 でも、無防備に寝るエミールを見る限りはそうは思えないんだけど……


 ひれに、なんか私の前で無防備に寝るエミールがとても愛おしく見えた。


 まあ、でも、まもなく学期末になる。そして、運命の学期末のサマーパーティーだ。


 本来、そこで、私はエミールに婚約破棄されて断罪されるはずなのだ。


 まあ、私は聖女のアニエスを虐めてはいないけれど、アニエスは転生者で絶対に私を貶めようとしているはずだ。今回も色々と手を替え品を替えエミールにアプローチしていたはずだ。


 でも、その中、エミールはその聖女をほったらかしにして、私の所に必死に帰ってきてくれたのだ。だから、もう少しエミールに優しくしてもいいかもしれない。だって私の為に運命に逆らって足掻いてくれているのだ。

 私はエミールの寝顔を見てそう思った。



 私は大きく深呼吸した。


「エミール。無理してここまで帰ってきてくれてありがとう」

 そして、誰も見ていないのを確認して、私は疲れ切って寝ているエミールにそっと呟いたのだ。


 そして、そのエミールの唇にそっと私の唇を重ねていた。


 エミールの唇はとても塩辛く思えた。


「いつもありがとう」

 私はそう言うとエミールの胸元にそっと自分の体を倒したのだった。


 エミールの体は温かかった。


 なんか少し眠たくなってきた。


 私はエミールの胸元で少しの間うたた寝してしまったのだった。


ここまで読んで頂いてありがとうございました。

つかの間の安息日です。

次からはラストに向けて怒濤の展開の予定です。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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