婚約者から前線は遊びで無いから来るなと伝言されて、私は逆ギレして絶対に行くと心を決めました
「私なら、ゴモラのダンジョンを消滅させられるのではないですか?」
私の問いにカンダベル先生は一瞬、固まってしまった。
「それは確かに出きるかもしれないが、危険すぎるだろう!」
我に返ると先生は首を振ってくれた。
「でも、危険なのは王太子殿下も、アニエスさんも同じです」
「未成年のあの二人は基本的には前線には出ずに後方にいるだけだ。だからそこまでの危険はないはずだ」
先生がそう断言してくれた。
えっ? エミールは怪我をしてアニエスに治してもらって、二人の仲が良くなったのではないの?
噂ではそうなっていたのに、どうやら違うらしい。
「そうおっしゃられても、魔物討伐の終わりがなかなか見えないのならば、試してみる価値はあるかと思うのですが」
私は先生に主張してみた。
「それはそうだが……」
「先生、魔物が溢れるなど、国の危機です。ここは試してみる価値はあるでしょう?」
私が再度意見を述べるとカンダベル先生は私を見つめて考え、そして、判断してくれた。
「判った。王宮で早急に検討してみる」
私の決心が固いのを見るとカンダベル先生はそれから急に授業を切り上げて、急遽、王宮帰って行った。
「クラリス、大丈夫なの? あなた、討伐現場なんて行ったことないんでしょ」
後でフェリシーは心配してくれたが、
「アニエスさんも行っているんだもの。私が行けない訳はないわ」
私は怖かったけれど、これ以上毎日エミールの心配をするのも嫌になっていた。
情報の全く入ってこない中で、無事かどうか毎日神様に祈るのはいい加減に疲れてきたのだ。
夜もよく眠れなかったし。
それに、制御できない魔術をぶっ放したらどうなるかは判らなかったけれど、うまくいけばダンジョンは消滅するはずだ。
私が魔術をぶっ放す時間くらい騎士達が時間を稼いで私を守り切ってくれるだろう。
私も何も考えていない訳では無いのだ。
「クラリス! 魔物討伐に参加したいなど、どうしてそう思ったのだ?」
王宮から帰って来るなり、お父様が私に向かって怒り口調で詰問してきた。
「騎士団の皆様が苦戦していらっしゃるようなので、私でもお手伝いできるかと思ったのです」
私がお父様に答えると、
「しかし、とても危険ではないか!」
お父様が心配して言ってくれるのは判るけれど、
「私も公爵家の者です。国の危急の時は役にたちたいのです」
私はそう言い張ったのだ。
「しかし、何も令嬢であるお前が第一線に立たなくても」
「無駄に魔力だけはありますから、回りを気にしなくて良いなら十分にお役に立てると思うのです」
私が再度主張した。
「しかし、後方にいる聖女と比べてもとても危険ではないか」
お父様はあくまでも反対みたいだった。
お兄様も女のお前がやるべきではないと、反対してくれたが、
「聖女も前線にいるんでしょう?」
「何を言っているんだ。聖女は絶対に安全な後方で何重にも守られているのだ。前線に出るお前と危険度は全く違う」
お兄様も聖女が後方にいると言ってくれた。
じゃあアニエスの取り巻きが流してくれた噂ってほとんど嘘なの?
「聖女の友人がどこから情報を仕入れたのかは判らないが、聖女は確実に安全なところから出ようとはしていないみたいだ」
お兄様は苦虫をかみつぶしたような顔をした。
それを私が知っていたらここまで強く言わなかったかもしれないが、もう言い出してしまったのだ。今更後には引けなかった。
翌朝私は王宮に呼ばれた。
丁度制服を着て学園に行こうとしていたので、そのままお父様の馬車に乗って王宮に向かった。
私はお父様と会議室に通された。
会議室には国王陛下と王妃様はじめ、前線から飛んで帰ってきた魔術師団長もいた。
「クラリス。その方、前線に出て、ダンジョンを破壊する事が出来るのでは無いかとカンダベルに進言したとのことだが、私としては、女性で未成年のお前を前線に出したいとは思わないのだが」
陛下が頭を振って言ってくれた。
「しかし、聖女アニエスさんは未成年ですが、前線にいるかと」
私がそう言うと
「聖女やエミールは騎士達が厳重に警戒している後方の野戦病院にいるだけだ。決して前線で戦っている訳では無い」
陛下もアニエスが前線にはいないと断言してくれた。
「しかし、討伐が始まってから早くも、三週間が経ちましたが、未だに終結のの見込みが無いとか。どうなるか判りませんが、魔力制御の必要が無いのならば、私もお役に立てるのではありますまいか」
私が陛下に提案すると、
「しかし、クラリス。あなたは未来の王妃なのです。何もそのような危険なことをせずとも良いのではないですか?」
王妃様も止めようとしてくれた。
「そうだぞ。エミールからも、クラリスは危険だから来るなと手紙が私宛に届いた」
私は陛下の言葉に完全に切れていた。
今までエミールには何回も手紙を送っているのに、返事もくれないくせに、来るなという手紙だけはくれるなんて! それも陛下に送ってくるなんて、信じられない。
エミールが無事だというだけでも返事くれていたら、私は安心していられたのに!
エミールが安全でいることさえ知っていれば、こんな提案はしなかったのだ。
私はエミールのことが心配で最近はあまり寝れていなかった。
エミールはあまりにも勝手すぎるんじゃないかと私は思ったのだ。
それにエミールも後方の安全なところにいるのならば、返事くらい書く暇はあるはずだ。
聖女とイチャイチャしていて返事を書く暇がないのかもしれないが、人を心配するだけさせてイチャイチャしているなんて許せなかった。
「騎士団の皆様や、魔術師団の皆様のお役に立ちたいのです。是非とも行かせてください」
私はあくまでも主張したのだ。
最終的には魔術師団長が全責任を取って私を戦場から無事に連れ帰ると断言してくれたので、私が前線で試してみることが決定した。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
ついにクラリス出陣です。
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