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魔物討伐の王太子を見送っていたら、列を止めて、私にキスしてくれました

 エミールは早朝に騎士団とともにゴモラの街に向かった。

 私は屋敷の傍でデジレと一緒にお見送りした。


 多くの騎士が騎乗して進む様は壮観だった。

 私はそれを大勢の観客とともにブルゾン王国の旗を振ってお見送りしたのだ。


 ブルゾン王国の旗は剣と本をモチーフにしたものだった。本来なら相容れない剣と本なんだけど、初代国王陛下は剣で王国を平定したけれど、これからは知で王国を治めていかねばなるまいと自らも勉強し家臣達にも学ぶように督励したとか。王立学園もその時に設立されたのだ。

 だから歴代の国王は文武両道を求められているのだとか。


 その点、王立学園で学年一位のエミールは剣術や魔術の能力も十分にあるからその資格があった。

 本来は王妃にもその資質が求められるとか言われていたけれど、私は武は全然駄目だ。

 成績は学年一位だけれど……

「まあ、クラリス様の場合は王宮にどっしりと腰を下ろして頂ければ十分です」

 カンダベルにはそう言われていたんだけど、どういう意味なのかな?


「下手に歩くと転けるからな」

 エミールに聞くと碌な答えは返ってこなかったし……


「オーガが恐れて逃げていくくらいなら十二分に価値があるってことじゃないかな」

 最近、フェリシーが私に遠慮がなくなりつつあるんだけど……まあ、友人ってそんなものかもしれないけれど……


 そんなことを考えていたら、私の前をエミールの馬が通りかかった。エミールの胸ポケットに黒い布が見えた。ひょっとして、私のハンカチを差してくれているの!

 私は赤くなった。


 騎士の鎧を着たエミールはとても、凛々しかった。

「「「キャーーーー」」」

「王太子殿下!」

 皆が声をかける。大人気だ。さすが王太子。

 でも、私を見かけると、馬をこちらに寄せてきてくれるんだけど……

 そして、私の前で飛び降りてくれた。


 ええええ!


 ちょっと、列が止まったんだけど……

 何してくれるのよ!

 エミール!


「な、何なの?」

「どうしたの?」

 皆の注目がエミールとその前にいる私に注がれた。


「クラリス、見送りに来てくれたんだ」

 嬉しそうにエミールは言ってくれたけど、私は列が止まった事が気になって、それどころではなかった。

 頷くだけで精一杯だった。


「殿下!」

 後ろから騎士団長が急かしているし、でも、エミールはそれを無視して、私をぎゅっと抱き締めてくれた。


「行ってくる!」

「ご無事で」

 エミールにそう答えるだけで私は精一杯だった。

 真っ赤になっている私の唇にまた、エミールの唇が重なった。


「「ヒューヒュー」」

 騎士達が吹く口笛が飛び交い、歓声が沸いた。


「殿下、そろそろ」

 騎士団長が急かしてくれる。

「婚約者との別れも満足にさせてくれないのか?」

 エミールが文句を言うが、

「昨日、作戦会議の途中で抜けられて婚約者に会いに行かれた方が何を言うんですか?」

 騎士団長がムッとして反論した。

 やっぱり会議をすっぽかしてきたんだ。

 私は納得した。


「教皇の演説なんて聞いていても時間の無駄だろう。現地の状況も判っていないのに!」

 エミールはいけしゃあしゃあと答えていた。


「じゃあ、クラリス、行ってくるよ」

 そうエミールは言うと、再度ぎゅっと私を抱き締めてから馬に飛び乗ってくれた。


 私はエミールが見えなくなるまで、列を見送ったのだった。


 私はその列の後ろの馬車に乗っていたアニエスが私を射て殺しそうなほど憎憎しげに睨み付けていたのは気付かなかった。



 その朝、私は学園にはお兄様と一緒に行った。


「きゃー」

「セドリック様!」

 お兄様には女達が相も変わらず煩かった。


「あれ、今日は地味女は殿下と一緒じゃないんだ」

「殿下は聖女様と魔物討伐に行かれたのよ」

「そうなんだ。殿下もやっと、地味女の呪いから解き放たれたのね!」

「殿下と聖女様をお見送りしたけど、とてもお似合いだったわ」

 なんか、私はボロクソ言われているんだけど……


 まあ、抱き合っていたなんて、言われるのは恥ずかしいから、良いんだけど……でも、何故か、納得できない!


 ムッとして、教室にはいると、

「ああああ! 恥ずかしげもなく行軍の列を止めて、殿下と抱き合っていたクラリスだ!」

 ここにはもっと最悪な、フェリシーがいた。


 そう事実を言われるのもとても恥ずかしかった。


「あれは、殿下が、強引に私のところに来られたから」

「まあまあ、婚約者と仲が宜しいようで」

「本当に熱々ですね」

 伯爵の令嬢達が寄ってきて、話しに加わってくれた。

 私は真っ赤になってしまった。


「でも、今朝の出陣式では聖女様と王太子殿下は仲が良いように見えましたわ」

「そうよ。今まで虐げられていた、聖女様と殿下がとても、仲良さそうでしたわ」

 アニエスの取り巻き達が遠くで噂してくれた。


 私は出陣式には出ていないので、それが事実かどうかは判らないけれど、朝の感じを見る限りは、エミールはまだ私の方を見てくれているはずだ。


 でも、これから討伐現場ではエミールは聖女と一緒に行動することが多くなりそうだ。

 私は少し不安に思った。そしてその不安はものの見事に現実となったのだった。

ここまで読んで頂いてありがとうございます

ここからクラリスの試練が始まります

クラリスを応援したい方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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