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魔物討伐に行く王太子に初めて唇を奪われました

「クラリス、大変だ。ゴモラの街でスタンピードが起こった」

 夜に学園から帰ってきたお兄様が報告してくれた。

「えっ、スタンピードって百年前の聖女様の時以来じゃないの?」

 ゴモラの街のスタンピード発生の報は私達にとって将に青天の霹靂だった。


 少なくとも私が生まれてからスタンピードなんて起こったことはなかった。


 ここ最近は冒険者や騎士達の力が強くなりすぎて、各地でダンジョンが衰退して、魔物が激減しだしているのが現状だった。下手したら魔物が絶滅危惧種にリストアップされる今日この頃なのに!

 ゴモラの街のダンジョンも最近魔物の数が急激に減りだしたと報告されていたダンジョンだった。


 そのダンジョンが魔物が溢れるスタンピードが起こったなんて信じられなかった。


 溢れた魔物はゴモラの街を蹂躙したらしい。


 直ちに騎士団が派遣されることになった。

 それをエミールが王族として率いることになったらしい。



「クラリス、すぐに魔物を討伐して帰って来るから」

 その夜遅くに訪れたエミールが応接で私の隣に座って、笑みを浮かべて出発の挨拶をしてくれた。


「エミール様、ご無事のお帰りをお待ちしております」

 私は形通りの挨拶をした。


 私は胸騒ぎしかしなかった。スタンピードは100年ぶりで、その時の聖女と王太子は結婚しているのだ。ゲームでも魔物討伐訓練でエミールとアニエスは仲良くなる設定だった。今回は魔物討伐がなくなったのに、こんなところで復活するなんて、これがゲーム補正というものなのかもしれない。


 私が幾らあらがっても、悪役令嬢になるのは変わらないって女神様には言われていた。当然聖女も今回の討伐には加わるそうだ。王太子がヒロインの聖女と仲良くなるのに絶交の機会だ。


 でも、それ以上にスタンピードは魔物が大量に出現しているはずだ。いくらエミールが魔力が強くて剣術も優れているとはいってもとても心配だった。


「クラリス様。こちらを殿下にはお渡しされればいかがですか?」

「えっ?」

 私はデジレが持って来た黒いハンカチを見て目を見開いた。


「なんだ、それは?」

「いえ、エミール様。これは練習用でして」

 私が慌てて隠そうとしたが、さっとエミールによって取られてしまった。


 刺繍の練習用に一年前にエミールの名入れのハンカチを作ってみたのだが、もう一つだったので私の引き出しの奥にしまってあったものだ。

 あまりうまく出来ていないから引き出しの奥にしまっておいたのに!

 何故今ここに持ってくるかな!

 私は恨めしそうにデジレを見上げた。


「凄い! クラリスが俺の名前を刺繍してくれたんだ」

「いえ、あの、できが悪くて、失敗作なんですけれど」

 私が真っ赤になって必死に言い訳した。文字の太さが均等でなくて歪んでいたのだ。普通は婚約者にあげられるような立派な刺繍ではないのに!


「いや、本当にありがとう。クラリス手ずからの刺繍入りのハンカチをもらえるなんて思ってもいなかったよ。絶対に大切にするから」

 そう言うと私の真横に座っていたエミールの顔が近付いてきて、私の唇と合わさったのだ。


 えっ?


 私は何が起こったか一瞬理解できなかった。

 エミールと私がキスした!


 私は真っ赤になったのだ。


「ちょっと、殿下! どさくさに紛れて何をしてくれるんですか?」

 二人だけには出来ないと強引に座っていたお兄様が、文句を言った。


「良いじゃないか、セドリック。俺達は婚約者なんだから、キスくらいしても」

「結婚するまでは絶対に駄目です」

 エミールの言葉にお兄様が目をつり上げて文句を言っているんだけど……

 私はそれどころではなかった。


 キスされた、エミールに! 

 それも前世も含めて初めての正真正銘のファーストキスだった。

 私は頭が真っ白になってしまった。


「殿下、出発は明日の早朝だと聞いております。準備もお忙しいでしょう。今日はもうお引き取りを」

 氷のように冷たい声でお兄様がエミールに言い放っていた。


「なんだ。セドリック、戦場に赴く男にとても冷たいぞ」

「戦場といっても高々魔物退治です。危険度が違いますよ」

 お兄様とエミールの言い合いを私は他人事のように聞いていた。


「さあ、皆、王太子殿下のお帰りだ」

 お兄様はあっさりとエミールを追い返してくれたんだけど……


 私はそのままエミールを見送りのために玄関の馬車のところまで送っていった。


「じゃあ、クラリス、行ってくるよ」

 馬車に乗る前にエミールが私を振り向いた。


 そして、次の瞬間には私はもう一度エミールに唇を奪われたのだ。


「殿下、何をするんですか!」

 玄関口に立っていたお兄様が激怒して叫んでいるんだけど。


「じゃあ、クラリス! 無事に帰って来るから」

「はい。是非ともご無事でお戻りください」

 私はもう真っ赤になっていて何を話したかも覚えていなかった。


 ただ、私の唇にエミールの唇の感触だけが残っていた。


 私はエミールの馬車が見えなくなるまで手を振っていたのだ。

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

魔物討伐に旅立ったエミールでした。

ここから聖女の暗躍が始まります。

果たして二人の間はどうなるのか?

続きが気になる方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾


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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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