聖女視点 悪役令嬢に色々やってみましたが、邪魔されたので、天罰を与えることにしました
いい気になっている悪役令嬢を今度こそぎゃふんと言わせてやる!
私はバルバラにクラリスの礼儀作法の教科書を取って隠すように命じたのだ。
「キャーーーー」
しかし、ごそごそクラリスの机ので引き出しを触っていたバルバラがいきなり悲鳴を上げてくれた。
何をしてくれるのだ? 私は自分の席からバルバラを見たら片目が黒い炭を塗ったようになっていた。
片目パンダだ。思わず笑いそうになった。
「どうしたの?」
そこにクラリスが入ってきたのだ。
「クラリスさん。あなた、バルバラになんてことをしてくれたの?」
クロエがクラリスに叫んでいた。そうだ。ここはクラリスがバルバラに酷い事をしたことにすればいい。私はクロエの機転の利かせ方に感心した。
「何を騒いでいるのです!」
そこにロッテンマイエルが怒鳴り込んできた。
よし、これでクラリスの断罪が決定した。
そう思ったのだ。
皆はバルバラを見て笑ったので、
「先生、クラリスさんは今笑いそうになりました!」
私はロッテンマイエルを怒らせるために注進していた。
「クラリスさん。これはどういう事ですか?」
ぎろりとロッテンマイエル先生が眼鏡を直しつつクラリスを睨み付けた。
よし、説教部屋行きが決定した。あれは本当に悲惨だ。ヒロインの私ですら死ぬ思いだった。女神様の下した試練だと思って我慢したのに、エミールは慰めもしてくれなかったけれど……
やられ損だったので、それ以来ロッテンマイエルには逆らわないようにしていたのだ。
「あのロッテンマイエル先生。クラリスさんは今まで私と一緒にいたので、関係無いと思いますけれど」
横から伯爵令嬢風情がクラリスを庇うのを見て私は切れそうになった。これは教皇から伯爵家に釘を刺してもらった方が良いだろう。
「そんな訳無いでしょう。バルバラさんがクラリスさんの教科書に触った途端にこうなったのよ」
「そうよ。絶対にのろいか何かの罠をかけていったのよ」
クロエと私もバルバラを援護した。
「でも、そもそも、何故バルバラさんがクラリスさんの教科書に触れるの? おかしいじゃない!」
伯爵令嬢が突っ込んでくれた。
バルバラはうまく答えられなかったのだ。
クロエに比べるとアドリブが苦手みたいだ。バルバラを重用するのは考えものかもしれない。
結局バルバラはロッテンマイエルに白状させられていた。
「クロエさん。あなたも知っていましたね!」
「えっ、いえ……」
「クロエさん!」
「も、申し訳ありません!」
クロエまでロッテンマイエル先生の一喝に頭を下げていた。
二人は後ろに立たされたのだ。
「先生。このような呪いをかけたクラリスさんは罰を受けないのですか?」
私はロッテンマイエルに依怙贔屓ではないかと突っ込んでみた。
そうしたらなんとエミールが自分がやったと白状して外から入って来たのだ。
「いや、私の愛する婚約者が虐められていると聞いたもので」
「あ、愛する婚約者ですって!」
私は頭を殴られたみたいだった。
私のエミールがクラリスを愛しているですって!
ゲームではそんなことあり得なかったのに!
クラリスに脅されていようが何しようが、エミールはクラリスを嫌っていたはずだ。
それがどうしてこうなったのだ?
私は頭が混乱した。
「それもこれも殿下に教科書に守護魔術をかけてもらったクラリスさんが悪いのではないですか?」
私はショックのあまり少しおかしくなっていたのだ。いわずもがなのことを言っていた。
「アニエスさん。と言うことはあなたはクラリスさんの持ち物に余計な事をしようとした者よりもクラリスさんの方が悪いと言うんですね」
ロッテンマイエルの言葉に私はやばい気配を感じた。
「いえ、そこまでは。ただ、お忙しい殿下をクラリスさんの我が儘で付き合わすのはどうかと思っただけたで……」
「判りました。あなたがそこまで言うのならば私も考えがあります」
そして、ロッテンマイエルは話し出した。
「一昨日のクラリスさんの筆入れが池に浮かんでいたのはクロエさんがアニエスさん、あなたに示唆されてしたことだという目撃談が複数のルートから報告されています」
「そ、そんな事はありません」
私は必死に否定した。誰だ! 余計な事を言ったのは。
「ほお、アニエスさん、そうするとクロエさんが一人でやったというのですか?」
「私は一切関与しておりません」
「そんな、アニエス様」
クロエが必死に助けを求めてきたが、私はゲームのヒロインなのよ。周りの皆は私のためだけにいる。こういうときは当然見捨てられるべきだ。
「判りました。クロエさん、バルバラさん、それとアニエスさん、放課後、私の所に来るように」
「えっ、いえ、放課後は教皇猊下に呼ばれておりまして」
私は教皇の名前さえ出せば許されると思っていたのだ。
「丁度良いですわ。私アズナヴール猊下とは久しぶりにお話ししたいと思っていたのです。二人して私の所に来なさい」
「えっ、あの、アズナブール様は女神教の教皇猊下で」
「それがどうしたのです。あなたの身元保証人でしょう。私が来いと言えばすぐに飛んでくるはずです。今まで手加減しすぎました。今日はじっくりと貴方たちの保護者の方々ともお話ししたい気分です」
教皇の名前を出したのに全然動じてくれなかった。教皇は権威がないのか?
そして、私達三人は保護者と共にロッテンマイエルに延々と怒られたのだ。
「ロッテンマイエル先生、私も忙しい身なのだが」
「アズナヴールさん、私も忙しいのです」
教皇の言葉はあっさりとロッテンマイエルに却下された。
「あなた、卒業生からは最近態度が横柄だという意見が上っているのを知っているのですか? 私は卒業する時に言いましたよね。偉くなればなるほど謙虚になって頭を垂れなさいと。それが出来ていないということはどういう事なのです」
「いえ、あの……その」
もう教皇はタジタジだった。なんでも、教皇はロッテンマイエルの最初の生徒で、王太后を激怒させた時にロッテンマイエルが一緒に謝ってくれたそうで、ロッテンマイエルには頭が上がらないのだとか……
何で! 何故こうなる?
私は女神様、すなわち神様に認められたヒロインのはずなのに!
私はこの後1週間の停学を食らって奉仕活動に従事させられたのだ。
本当に最悪だった。
「本当に申し訳ありませんでした」
更にはクラリスにまで謝らされたのだ。
本当に二回も悪役令嬢に頭を下げさせられるなんて最悪だった。
ここは我慢だ。
これも女神様が私に課した試練なのだ。
私は憎き悪役令嬢に魔物討伐訓練にて、天罰を与えてやることにしたのだ。
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続きは今夜です。