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考えを改めない聖女達は1週間の停学になり、学園は静かになりましたが、色々画策していたみたいです

「本当にもう、殿下はくだらないことばかりして!」

 エミールが出て行った後にロッテンマイエル先生はヒステリー状態だった。

 とても危険な兆候だ。


「それもこれも殿下に教科書を触らせたクラリスさんが悪いのではないですか?」

 そんなロッテンマイエルにアニエスがまた余計な一言を言ってくれた。


 アニエスもよく言うわ。

 私は怒っているロッテンマイエル先生に余計な口を挟むなんて事は怖くて出来ない。だって、どのようなブーメランが返って来るか判らないのだ。本当に!


「アニエスさん。例えクラリスさんがお忙しい殿下に頼んだにしても、他の者がクラリスさんの物に余計な事をしなければ何も起こらなかったのではありませんか?」

 ロッテンマイエル先生はそう言うとアニエスを睨んだのだ。


「それはそうですが、殿下もお忙しいのに、我が儘言って付き合わせるクラリスさんも悪いと思います」

 アニエスが無謀にも更に言い返したんだけど……


「アニエスさん。と言うことはあなたはクラリスさんの持ち物に余計な事をしようとした者よりもクラリスさんの方が悪いと言うんですね」

「いえ、そこまでは。ただ、お忙しい殿下をクラリスさんの我が儘で付き合わすのはどうかと思っただけたで……」

 あくまでもアニエスは逆らったのだ。

 あの怒り怒り心頭しているロッテンマイエル先生に対して……


「判りました。あなたがそこまで言うのならば私も考えがあります」

 ロッテンマイエル先生が宣言したのだ。そして、にこりとしたのだ。これは見た目は笑っているが怒り狂っているロッテンマイエル先生の兆候だ。

 出来たら私は逃げ出したかった。


「一昨日のクラリスさんの筆入れが池に浮かんでいたのはクロエさんがアニエスさん、あなたに示唆されてしたことだという目撃談が複数のルートから報告されています」

「そ、そんな事はありません」

「ほおおおお、アニエスさん、そうするとクロエさんが一人でやったというのですか?」

 ロッテンマイエル先生が笑顔を浮かべつつアニエスを見たんだけど。

 私はぞっとした。これは絶対にやばい時だ。


「私は一切関与しておりません」

「そんな、アニエス様」

 クロエが必死に助けをアニエスに求めたが、アニエスは平然とクロエを斬り捨てたのだ。


「判りました。クロエさん、バルバラさん、それとアニエスさん、放課後、私の所に来るように」

 何でもないようにロッテンマイエル先生が言ったけれど、あれは相当怒り狂っている。付き合いの古い私にはよく判ったのだ。


「えっ、いえ、放課後は教皇猊下に呼ばれておりまして」

 その時になって初めてアニエスは虎の尻尾を踏んでしまったことに気付いたみたいだ。遅いのだ。


「丁度良いですわ。私アズナヴール猊下とは久しぶりにお話ししたいと思っていたのです。二人して私の所に来なさい」

「えっ、あの、アズナブール様は女神教の教皇猊下で」

「それがどうしたのです。あなたの身元保証人でしょう。私が来いと言えばすぐに飛んでくるはずです。今まで手加減しすぎました。今日はじっくりと貴方たちの保護者の方々ともお話ししたい気分です」

 そう言うとロッテンマイエル先生は悪魔の微笑みをしてくれたのだ。


 そう、ロッテンマイエル先生に文句を言えるのは王国広しといえども王太后様くらいなのだ。後は皆学園でみっちりとロッテンマイエル先生にしごかれているので、逆らえないのだ。陛下や王妃様ですらそうなのに、高々女神教の教皇では逆らえるはずもなかった。


 何やっているんだろう。本当に馬鹿だと心の隅で思ったことが顔に出ていたみたいで、私は鬼のように目をつり上げて私を睨み付けるアニエスを見てぎょっとしたのだった。



 それから一週間、アニエスとバルバラ、クロエは私に陰湿な虐めをしたということで停学になっていた。


 その次の日、慌てたバルバラとクロエの子爵家の当主達が、我が家に飛んで来て平身低頭謝罪されたのにはさすがの私も参った。


 まあ、ただ、普通はそうなるわよね。


 私は今は一応、王太子の婚約者だし、お父様は宰相。お兄様も未来の宰相の呼び声も高いのだ。

 そんな我が家に子爵家が逆らえる訳はないのだ。


「二度と娘達にはロワール公爵令嬢様には逆らわせませんので」

「本当に申し訳ございませんでした」

 何度も頭を下げる二人に私は問題ありませんからと言うことしか出来なかった。



 停学が終わってから一応アニエスとバルバラとクロエは私に謝ってきた。

 形上は……


「本当に申し訳ありませんでした」

 アニエスは完全に棒読みだったし、その瞳は爛々と怒りに輝いていた。

「「申し訳ありませんでした」」

 と頭を下げるバルバラとクロエもいやいや謝っているように見えた。

 二人の保護者達はあんなに必死に謝っていたのに、これもゲーム補正なんだろうか?

 あんまり許したくなかったけれど、ロッテンマイエル先生の前では私は素直に謝罪を受け入れたのだ。


 そのアニエスのグループは停学になってから大きな変動があった。さすがに我が家に逆らうのはまずいと当主が介入したみたいで、子爵家の令嬢達の半数が私に反抗することをよしとせずに離反したのだ。今やアニエスの周りには四人の子爵家令嬢と五人の子爵家令息だけになっていた。

 それに気を悪くして、色々と動いてくるかなと思ったのだが、それ以降新しい動きはなかったので私は安心していた。

 でも、それが甘かったのだ。



 それを聞いたのは図書館でフェリシーと試験勉強している時だった。

 私は頭の中が煮詰まったので、休憩に廊下に出たのだった。

 窓が開いていて、涼しい風が吹いてきた。

 頭を冷やしていると

 外から話し声が聞こえてきた。


 遠くだからよく聞こえなかったのだが、

「化け物を解き放つのよ」

 と言う声が聞こえた。

「ん?」

 私は外を見下ろしたけれど、誰も見えなかった。図書館の一階は別の部屋になっていて、確か準備室か何かがあったはずだ。そこで話しているんだろう。姿形は見えなかった。


「でも……」

「まずくない?」

 と言う声が風に乗って時々聞こえてきた。更に詳しく聞こうとして、

「どうしたの? クラリス」

 私が中々帰ってこなかったからかフェリシーが様子を見に来てくれたのだ。


「ううん、何でもない」

 私は答えた。

 その一人の声がアニエスの声に似ていたんだけど、その時は何でもないと思ってしまったのだ。それまで静かにしていたので、私は安心していたのだ。


 それが間違いだった。


ここまで読んで頂いてありがとうございます

次からクラリス最大の危機が訪れます。

お楽しみに

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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