生まれて初めて出来た友達と食事して帰ってきたら意地悪令嬢が片目パンダになっていました
その日一日中寝ていた私は、翌日には元気になっていた。
朝からエミールに迎えに来られて、そのまま学園に向かった。
お忙しい王太子にそこまでしてもらうのはとても恐縮することなんだけど……
そう言ったら、
「好きでやっていることだから、気にする事では無い」
とあっさりと言われてしまったんだけど……
エミールもそこまで暇では無いはずだ。それに、ヒロインのアニエスもいるのに……
エミールも私と違って見た目かわいい系で巨乳のアニエスの方が、地味ダサ令嬢の私よりも良いはずなのに、何故私にそこまで構うんだろう?
最近の私を見るアニエスの視線が怖いんだけど……
教室に行くと、
「まあ、今日もお忙しい王太子殿下に送っていただくなんて、どれだけ我が儘なんでしょう」
「本当にその顔が見てみたいわ」
私の遠くからバルバラとクロエの嫌みが聞こえてくるんだけど……
「クラリス、大丈夫だったの? 本当に心配したんだから」
私をみかけて、フェリシーが飛んで来た。
「ごめん。心配してくれてありがとう。単に風邪引いただけだから問題ないわよ」
私がフェリシーに言うと、
「ごめんね。危ないんだから、無理矢理止めたら良かったわ」
フェリシーが謝ってくれるんだけど、
「落ちたのは私なんだから、気にしないで」
私は首を振った。フェリシーは最近よく私を気にしてくれるし、私は出来たらもっと仲良くなりたかった。
その日の授業はお昼までは順調に終わった。
数学のシュトラウス先生の時は当てられたら困るのか、皆本当に静かだった。
そして、お昼の時間になったのだ。お昼時間になって、私は思いきってフェリシーにお昼を一緒に食べようと誘ってみたのだ。
「えっ、でも、殿下は大丈夫なの?」
フェリシーは心配して聞いてきたが、
「学園に入ったら私も友達づきあいをしなさいって王妃様からも言われているし、大丈夫よ」
「えっ、王妃様からも言われているんだ」
目を見開いてフェリシーが私を見てきた。
「そう、だから全然、問題はないわ」
迎えに来たエミールを私は
「フェリシーと食べに行きますから」
とあっさりと断ったのだ。
エミールは私とフェリシーを見比べて少し沈黙したが、
「そうか、なら仕方が無いな。明日は絶対に一緒だからな」
とても悔しそうに引いていくんだけど、私がいない方がアニエスと一緒に食べられると思うんだけど……
「ねっ、だから、良いって言ったでしょ」
私達は食堂の列に並んで空いている二人席に一緒の座った。
「でも、なんか殿下に悪くて」
「だって最近毎朝、我が家で朝食を食べていくのよ。夜も下手したら食べていくから。お昼くらい、クラスのお友達と食べたいもの」
「えっ、クラリス、私の事を友達って言ってくれるの」
なんかフェリシーが驚いて私を見てくれた。
「私が友達じゃ嫌?」
いきなりクラスのぼっち女の私が友達なんて言ったらまずかったろうか?
私は不安になった。
「そんなこと無いわよ。未来の王妃様にそう言って頂けてとても光栄よ」
「うーん、でも、私、未来の王妃になるかどうかはまだ判らないわよ」
私が首を振ると、
「えっ、だって、あなたは王太子殿下の婚約者じゃない」
フェリシーが当然という顔で指摘してくれた。
「婚約者と言っても子供の頃決められた政略結婚だから、王太子殿下のお気持ちもどう変わるか判らないし」
私が暗に婚約破棄される可能性もあると匂わすと
「それは無いわ。一昨日のあなたを助けた王太子殿下のお姿見ただけで、とても溺愛されているじゃない!」
目を輝かせてフェリシーはそう言ってくれるんだけど、ゲームではアニエスにこれから惹かれていくはずなのだ。
「だって、百年ぶりの聖女様もいらっしゃるし」
私が聖女のことに触れると、
「ないない、あの聖女は無いわよ」
フェリシーは即座に否定した。
「だって百年前は聖女様が王太子殿下と結婚されたのよ」
私が過去の例を出すと、
「それはその時は相手が他に誰もいなかったんじゃ無いの?」
「そんな訳ないでしょう。高位貴族の令嬢もたくさんいたはずよ。それに聖女様はとてもかわいらしい方じゃない」
私がそう指摘すると、
「そうかな。圧倒的にあなたの方がかわいらしいわよ」
フェリシーがそう話してくれた。でも、それは絶対に友達に対するフィルターがかかっているはずだ。明るくて元気なアニエスは人気があって、今もクラスの半分くらいの生徒を集めて食事している。
ほとんどぼっちの私とは比べようがないではないか。
「そうか、あなたが殿下以外の人を好きになったの? 例えばゴンドワナ王国の留学生とか」
「マクシム様でしょ。ないない。私なんか地味令嬢は眼中にもないわよ。彼も聖女狙いだと思うけれど」
私が首を振って否定すると
「そんな訳ないでしょう。あの聖女様では高位貴族の妻は無理よ」
フェリシーが断定してくれるんだけど、
「そんなこと無いでしょ。彼女は聖女様なんだから。ゴンドワナも我が国の高位貴族も絶対に欲しいはずよ」
私が否定したら、
「百年前と違って、今は聖女の必要性を皆そんなに感じていないんじゃないかな。それよりもあなたは公爵家の宰相の娘で莫大な魔力量をもっているじゃない。それに礼儀作法も完璧だし。絶対にあなたの方が人気あると思うわ」
フェリシーが言ってくれるんだけど……
「確かに宰相の娘は事実だけど、魔力があると言ってもよく制御できないし、絶対に使うなってカンダベル先生には釘を刺されているから使い道は無いわよ」
「でも、魔力量の多いあなたの子供は魔力量が多い子供が生まれる可能性が高いじゃ無い! 絶対に他国も高位貴族もあなたの方を欲しいと思うわよ」
フェリシーが断定してくれるんだけど、魔力制御できない女よりも聖女様の方が絶対に人気があるはずだ。ゲームでもそうだったし。
「そうかな? 見た目がかわいらしい聖女の方が絶対に人気があると思うのよね。厳にクラスではアニエス様の方が人気があるじゃない」
「それは下位貴族の面々ではあなたは完全に高嶺の花だからよ。あなたを娶ろうと思ったらやはり最低限侯爵家、無理したら伯爵家の令息くらいよ。それに比べて聖女は男爵家の娘だから子爵家の面々でも、可能性はあるから人気があるのよ」
アニエスが聞いたら絶対に怒り出しそうなことを平然とフェリシーは言ってくれるんだけど。
そこまで聖女の人気は落ちてはいないと思う。
私達は話しすぎて食事を終えて食堂を出たのは予鈴の鳴った時だった。
次の授業はロッテンマイエル先生の礼儀作法の授業だ。
私は急いで教室に戻った時だ。
「キャーーーー」
教室の外で女性の悲鳴が聞こえたのだ。
私が慌てて教室に入ると私の机の前にいたバルバラが顔を押さえていた。
「どうしたの?」
私が聞くと、
「クラリスさん。あなた、バルバラになんてことをしてくれたの?」
クロエが私に叫んできた。
「えっ?」
私は何のことか全く判らなかった。
「これを見てごらんなさいよ」
クロエがバルバラの押さえている手を退けさせたのだ。
バルバラの顔は、片方の目の周りが真っ黒になった、片目パンダになっていたのだ。
思わず私がその顔を二度見した時だ。
「何を騒いでいるのです!」
そこにロッテンマイエル先生の怒り声が響いたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
後ろで笑っているアニエスの顔が見えるようです。
何故バルバラが片目パンダになったのか?
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