池に落ちた私を王太子が助けてくれて、皆の見ている前でお姫様抱っこで運んでくれました
私は頭から池に落ちてしまったのだ。
息が出来ない!
ギャッー!
水だ!
溺れる!
私は手足をバタバタさせたのだ。
「クラリス!」
「クラリス!」
フェリシーの声と共に、何故かエミールの声が聞こえた。
ドボン!
と言う大きな音がして、次の瞬間私は誰かに抱きかかえられていた。
この感じはとても安心感がある。
顔を見るとエミールだった。
「エミール!」
私は思いっきりエミールに抱きついた。
「クラリス、無事だったのか?」
ぎゅっとエミールが抱きしめてくれた。
「怖かったの。水の中で息が出来なくて」
「本当にクラリスは昔から泳げないよね」
呆れたエミールの声が聞こえるんだけど……
そうだ。確か昔、お花の蜜の甘さに填まってしまった事があった。その時は本当にいろんな花の蜜を吸って楽しんでいたのだ。
丁度王宮に大きな睡蓮の花が咲いていて、これだけ大きいんだからどれだけ甘いんだろう?
そう思うといても立ってもいられなくて、その蜜を吸おうとして、池に落ちたことがあった。
その時助けてくれたのもエミールだった。
「だって水が怖いもの」
私はもう一度ぎゅっとエミールに抱きついた。
昔から何かあったらエミールは助けてくれるのだ。
エミールの腕の中は安心感があった。
それに子供の時よりも体が安定していて更に安心感が増したかも……
それに抱きついた胸も硬かった。
良かった。エミールには胸がない!
エミールにまで胸の大きさで負けたら立ち直れなかった。
私はつまらないことを考えていた。
「で、何故、池に落ちたの?」
「筆入れを取ろうとして」
私は手の中の筆入れをエミールに見せた。
「えっ、筆入れを池に落としたのか?」
「違うの。池に浮いていたからとろうとしたら、落ちちゃって」
私が少し赤くなって言うと、
「クラリス、それでなくてもドジなんだから、そういう時は俺を呼べ」
「でも、そんなことでエミール様を呼ぶのは悪くて」
私が言い訳すると、
「落ちて溺れる方が大変だろう」
呆れてエミールが指摘してくれた。
「それはそうだけど……まさか落ちるとは思わなかったんだもの」
私が膨れて言うと、
「普通に歩いていても転けるんだから、確実に落ちるだろう」
なんか酷い事をエミールが言ってくれている!
「と言うか、ここってめちゃくちゃ浅いのに、クラリスは何故溺れていたの?」
ぼそりとフェリシーの呆れた声がした。
んっ?
私は考えたらフェリシーもいたことを思い出していた。
えっ?
周りを見たら池の周りは鈴なりの人達がいて、周りの校舎からも皆、私達を見ているんだけど……
ちょっと、待って、やってしまった!
私は真っ赤になってしまった。
「ハクシュン!」
そして、安心したのか、急にくしゃみが出たのだ。
まだ五月だ。水に入るには少し早い季節だった。
「大変だ。クラリス、濡れて冷えたら風邪を引くよ。すぐに着替えないと。保健室に行こう。替えの服くらいあるはずだ」
そう言うと、慌ててエミールはお姫様抱っこのまま、池から上ってくれた。
そのまま下ろしてくれたら歩いていくのに、私を抱き上げたまま、歩いて行くんだけど。
それも皆が生暖かい視線で私達を見ている中を……
なんか、殺気を感じてそちらをみたらアニエスが鬼のような視線をこちらに向けているんだけど……
やばいと思わずエミールの胸の中に顔を隠していた。
それが更に怒りに火を付けるとは思ってもいなかったのだ。
「どうした? 寒いのか?」
顔を寄せて来た私を見て、ぎゅっとエミールが抱きしめてくれるんだど……
「いや、ちょっと、エミール様。私は歩けますから」
私が赤くなって下ろしてくれと頼むと、
「何を言っているんだ。クラリスはあんな浅い池で溺れるくらいだぞ。それにクラリスが歩くより俺が抱き上げて歩いた方が早いし、クラリスがまた転けたら大変だろう?」
そう言うと、エミールはそのままスタスタと保健室に歩いて連れて行かれてしまった。
保健室の先生には池で溺れたというとあんな浅い池で? と呆れられてしまったが……
着替えを出してくれて、着替えたら、今日はもう授業にも出られないから帰った方が良いと言われて、そのままエミールが送ってくれる事になったんだけど。
「いや、でも、エミール様も授業が」
「何言っているんだよ。授業なんて座学はクラリスと一緒に終えているじゃないか。全然問題はない」
平然とエミールは言ってくれるんだけど……
と言うか、私を馬車までお姫様抱っこで連れて行くのは止めてほしい。私も歩けるし恥ずかしい。
そう文句を言ったら
「何言っているんだ。クラリスは急いで歩いたら転けるだろう。普通に俺の胸の中で大人しくしていればいいのさ。その方が早く歩けるし」
そう確信を持って言いきってくれた。失礼な! 私も転けずに歩けるわよ。
そう思ったが、何度もやらかしている私は強くエミールに反論できなかった。
それにエミールの腕の中は安心感があった。
でも、授業中で良かった。ほとんど誰も見ていないし……
いやでも、池の時は皆見ていた。
そもそもあの池は中庭にあって大半の教室からも見えるのだ。
明日からが怖い。
特にアニエスのあの恐ろしい視線が……
私はあの怖い視線を思い出してエミールの服をぎゅっと握っていた。
「眠かったら、眠って良いぞ」
何故かそのまま馬車の中でも膝の上に抱き上げられていたんだけど、ちょっと熱っぽかった私はエミールの胸の中で寝てしまったのだ。
そして、体がそこまで強くない私はその夜熱を出してしまったのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
過保護なエミールでした……
でも、アニエスの反撃は……
続きは今夜です。
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