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筆入れを誰かが池に浮かべてくれたので、取ろうとして失敗して頭から池に落ちてしまいました

 それからが大変だった。


 訓練場のこちら側は私が張った障壁である程度の被害は防げた。まあ、十人くらいは私が伏せろって言っても伏せなかった者は吹き飛ばされていたけれど、軽傷だったはずだ。的の近辺には真っ黒な巨大なクレーターが開いていた。


 そして、反対側は完全にフェンスから何から何まで吹き飛んでいたのだ。

 かろうじて学園の壁は残っていたけれど、訓練場の向こうが林で何もなくて良かった。


 そして、ロッテンマイエル先生以外にもいろんな先生や生徒やお兄様、エミールまで飛んで来た。

 あまりにも爆発が大きすぎて隣の王宮からも見えてしまったとかで、騎士団まで飛んで来たのには驚いた。

 アニエスは知り合いの騎士達に手を振っていたけれど……


 果てはお父様まで飛んで来たんだけど……


 お父様は問題を起こしたのは私なのに、超上から目線で、学園長を始めロッテンマイエル先生にまで怒りだした……


「こんな危険なところに娘を置いておく訳には行かない」

 って言い出したんだけど……


 いや、危険な事したの私だから!

 私はいたたまれない気持ちになった。


 でも、私の事で怒り始めたらお父様は止まらないのだ。


「学園長! 元々クラリスには学園では魔術の訓練はさせないという話だったではなやいですか?」

「いやあ、私もそのつもりだったのですが……どうなっているんだね、ロッテンマイエル君?」

 学園長はお父様の剣幕に慌てて私の担任を見た。


「それはクラリスさんに聞いていただかないと」

 ロッテンマイエル先生は私に振ってきたんだけど……


「いえ、そのダンケル先生にやれと言われまして」

「誰だ、ダンケルなぞ、私は知らんぞ!」

「いや、魔術師の教師なんですが、クラリス君の担当はカンダベル先生だったと思うのですが」

 学園長は父の剣幕にしどろもどろになっていた。


「それが今日は王宮で会議があるからと言うことで、代わったようなのです」

 ロッテンマイエル先生が説明してくれた。


「いやあ、派手にやってくれたね。クラリスさんがやったの?」

 丁度そこにその当事者のカンダベル先生本人がやってきた。

 顔は笑っているんだけど……


「カンダベル君、困るじゃ無いか! クラリスさんのことは君が責任持ってやってくれないと」

 学園長がカンダベル先生に噛み付いた。


「いや、だからダンケルには、クラリスさんには絶対に魔術は使わせるなと釘を刺しておきましたよ」

「じゃあ何故クラリスさんに命じて魔術を使わせたのだ?」

 学園長が眉をつり上げて聞いてくるんだけど、それは本人に聞いてほしい。


 もっともダンケル先生本人は私の魔術の被害を止めようとして、とっさに障壁を張ってくれたんだけど、防ぎきれずに爆風で弾き飛ばされてしまったのだ。

 今は医務室に運び込まれているはずだ。

 重傷では無いと思うけれど、衝撃で意識は無いみたいだった。


「まあ、クラリスさんが魔術を使うとどうなるかは判っただろう。今後は何を言われても使わないようにね」

 カンダベル先生が笑って言ってくれるんだけど、今更言われても遅いわよ!

 私はこの件で爆発女とか言われるようになったらどうしてくれるのよ!

 それで無くても地味ダサ令嬢とか言われているのに!


 まあ、やったのは私だから、心で思っただけで何一つ文句は言えはしなかったけれど……


 お父様がまず文官の人が迎えに来て帰って行って、騎士団も何もないのならばと帰り、対応に疲れ切った学園長が解散してくれたのはお昼前だった。

 ロッテンマイエル先生はまだ何か言いたそうだったが、授業の準備があるとかで職員室に戻っていった。


 私はほっとしたのだ。


 でも、それから心配したお兄様とエミールに生徒会室に連れて行かれたのだ。


「いやあ、クラリスさん、大変だったね」

 バジルが笑いかけてくれた。


「バジル、大変では済まないぞ。あのダンケルの奴、何をしてくれるのだ。あと少しでクラリスの命も危うかったんだぞ。そもそも、フェリスとジャックは何故止めなかったんだ」

 なんかエミールが今度は激怒しているんだけど……

「弟は止めようと出来る雰囲気では無かったって言っていましたけれど」

「そこを止めるのがお前の弟の役目だろう」

「えっ、弟さんって、そうか、ジャックさんはシャルル様の弟だったんですね」

 私は今初めて気付いた。

 シャルルをよく見たらジャックと顔もよく似ていた。


「本当に、あと少しでクラリスの命が危なかったかと思うと、俺はダンケルの奴だけは許せないよ」

「本当に、クラリスにあんなことをさせるなんて信じられませんよね」

 エミールとお兄様に散々こき下ろされたダンケル先生は、この後、教会に返されることになった。


 私はエミールの文句を聞きながらエミールに食べさせられていた。

 エミールの機嫌が悪くて、文句を言える雰囲気では無かったのだ。


 そして、この時を境にして、エミールがとても過保護になったのだ。

 その日から、毎日、朝の迎えと放課後の送りをしてくれるようになったのだ。


 そこまでされると私としてもたまったものではなかった。


 まあ、エミールが送り迎えしてくれるのは嬉しかったけれど、エミールも仕事がいろいろ忙しいと思うのだ。まあ、我が家と王宮は近いというのもあったが、それでも毎日1時間くらい余分にかかることになる。私は悪いから、止めてほしいとお願いしたんだけど、エミールは聞いてくれなかった。

「俺は、クラリスと一緒に少しでも長い間いられて嬉しいから」

 そう言ってくれるんだけど……

 でも、エミールの時間を犠牲にするという他にも、今度は皆の目と言うものもある。


 最初は聖女のアニエスとかも、静観していたみたいだけど、一週間も経つと取り巻きも含めた私への当たりもきつくなってきた。


 多くのものがエミールを独占する私に白い目で見るようになったのだ。


 ただ、魔術お宅のフェリシー・ドッチモーア伯爵令嬢が急に私に親しく話しかけるようになってきた。

「クラリス様。あのファイヤーボールは凄かったです。どうやってあそこまで大きくされたのですか?」

「いや、私のは制御が出来ないだけだから」

「制御が出来なくてあそこまで大きなファイヤーボールを作られるなんて凄いですわ」

 感激してくれたんだけど……

 単に、制御が下手なだけなのに!


 王宮でも小さい時に、魔術師団のいる王宮の塔をあと少しで破壊しそうになったり、王宮の訓練場を破壊しそうになってから、基本的に魔術の使用は禁止されていたのだ。

 だから自慢できることは何一つないんだけど……


 まあ、クラスで一人でも友達ができて良かったんだけど。



 そんなある日だ。私が食事を終えて部屋に帰って来ると、机の中に入れていた私の筆入れが無くなっていたのだ。


「あれ、無いわ」

 私が周りを探していると

「どうかしたの?」

 フェリシーが聞いてきた。

「筆入れが無いのよ」

 私が言うと

「変ね」

 一緒に探してくれたけれど、見つからなかった。


 結局フェリシーにペンを借りたんだけどどこにしまったんだろう?

 昼に行く前はちゃんとあったのに!



 そして、次の授業は魔術実技だった。

 私が更衣室に向かおうとした時だ。


「まあ、池の上に何か浮いているわ」

「本当になんなのかしら?」

 アニエスらが笑って騒いでいるんだけど……


 不吉な予感がして私はそちらを見ると私の筆入れだった。


「ちょっとクラリス!」

 私はフェリシーが止めるのも聞かずに、池に駆けつけたのだ。


 筆入れは池に浮いていて、手を伸ばせば取れそうな所にあった。


「クラリス。危ないわよ」

「大丈夫よ、これくらい」

 私は自分がドジなことを忘れていた。


 ドボン!


 次の瞬間、私は池に頭から落ちてしまったのだ。


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

落ちたクラリスはどうなる?

やったのは誰?

続きは明日です



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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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