聖女視点 前世の恨み辛みを転生してきた悪役令嬢にぶつけることにしました
私は女神様に前世のゲームのヒロインに転生させてもらった。
女神様はこの世界を作った神様だ。
その神様が私をヒロインに転生させてくれたのだ。
当然、私は無敵のはずだった。何をしてもうまくいくはずだと思っていた。
私はゲームではフルコンプリートして逆ハーレムまでやり遂げていたから、当然、この転生した世界で狙うのは逆ハーレムエンド。出来たら全ての男子生徒を虜にしたかった。
そして、ゲームのスタート時点で王太子のエミールに学園に送ってもらうのに成功した。
ゲームではそんな設定はなかったのにだ。さすが女神の愛し子の聖女様々だ。
王太子エミールはツンデレだったけれど、誤差の範疇だろう。じきに私に夢中になるはずだ。
私はゲームではエミールで苦労したことはないのだ。
しかし、何故かエミールはなかなか私に靡かなかったのだ。
その後、転けた振りして抱きついたりもしたんだけど、全然駄目だった。
おかしい。エミールルートでこんなに苦労したことないのに!
大サービスで私の大きな胸でその麗しい顔を挟んであげたのに、私に向ける視線がとても冷たいんだけど……
絶対に変だ!
何故に?
翌朝、今朝も女神様が枕元に立たれて、朝から王太子殿下のところに行くように言われましたと昨日と同じ言い訳をして王宮に行ったら、なんと、エミールは悪役令嬢のところに行ったというのだ。
ええええ!
絶対にあり得ない。
ゲームではエミールは悪役令嬢の我が儘ぶりに手を焼いていて、自ら会いに行くなんて絶対に無かったのに!
「まあ! クラリス様も王太子殿下を呼びつけられるなんて、さすが公爵令嬢は違うのですね」
私が無い知識を総動員して、なんとか嫌みを言うと、
「本当にね。あの子には聖女様の面倒をきちんとみるように言っておいたのに! 本当にあの子が婚約者を構い過ぎるのは良くないわよね」
王妃様がうっすらと笑みを浮かべてくれたんだけど……
「えっ?」
私は王妃様の言ったことがよく理解できなかった。
あのエミールが婚約者を構うってどういうことなんだろう?
悪役令嬢を溺愛しているって事?
あの我が儘公爵令嬢を?
ゲームの中では我が儘放題していたクラリスをエミールは避けようとしていたはずだ。
構い過ぎるなんて事はあり得ないのだが……
「驚いて、どうかしたの?」
「いえ、何でもありません。王太子殿下は婚約者のクラリス様とは仲がよろしいのですね」
私は笑って誤魔化して、かまをかけてみたら、
「そうなのよ。忙しい中、無理矢理に週に二回も会う時間を作って、食事したり遊びに連れて行ったりしているのよ。私はせめて週に一度にしろって注意するんだけれど、全く聞かないのよ」
王妃様が少し険しい目つきをして愚痴ってくれた。
そんなことゲームでは絶対にあり得なかった。
「月に一度もお茶に付き合わされて、本当に嫌になるよ」
ゲームではエミールが私に愚痴っていたのに!
それが週に二回も自ら進んで会っているなんて信じられなかった。
そうか、やはり悪役令嬢が変なのだ。
考えたら、あの悪役令嬢の性格からして、入学式の前にエミールと一緒に馬車から降りてきたのを見たら、その場で文句を言いに来るはずなのに、来なかった事からしておかしかった。
その後でエミール様は私のものよ宣言までしたのに、私に対してお小言も一言も言ってこなかった。
それが変だったのだ。
ゲームなら怒り狂って私をこき下ろしてくれたのに!
それに対して涙目になった私を気遣って殿下達が私を慰めてくれるはずが、完全に調子が狂うじゃない!
いや、心なしか、悪役令嬢が涙目で私を見てくれたような気がしたんだけど……
ちょっと待って!
悪役令嬢がヒロインの私を見て涙目になるって絶対におかしいでしょう!
私はエミールに抱きついたりしてスキンシップをとってもみたけれど、エミールはゲームの時と違って、喜んでくれないのだ。
他の攻略者にしてもそうだ。
悪役令嬢の兄のセドリックも、我が儘三昧の妹がいい加減に嫌になっているはずなのに、妹を喜んで送り迎えしているし、数学のシュトラウス先生も私が出来てもあっそうで終わってしまった。
何故かクラリスの方がよく出来るのだ。
変だ。ゲームでは出来なかったクラリスの方が数学は出来るのだ。
絶対におかしい。
クラリスはひょっとして転生者かもしれない。
そう考えたら、つじつまが合った。
おのれクラリス、いや転生した大山華子め。
前世で虐めてくれた上に、仕返ししようとしたら今度は逆に邪魔されているんだけれど、もう絶対に許せなかった。
こうなったら呆れている王妃様に味方になってもらおうと王宮に行ったら、今度はエミールがぶち切れているんだけど……
ええええ! 私は女神様に定められたヒロインなのよ!
こんな仕打ちは許されないわ。
仕方が無いから私は泣いてやったのだ。
号泣した。
やるなら徹底的にやらないと!
その間に教皇がうまい具合に、王宮に出入りする許可を取ってくれたのだ。
教皇もエミールが婚約者のクラリスの方を向いているという情報に少し焦っているみたいだ。教会としては私は百年ぶりの聖女で、教会の勢力拡大に向けて、何としても私をエミールの婚約者にしたいらしい。後養父のボラック男爵にしてもそうだ。
そいつらの力を使いつつ、どれだけクラリスがエミールの気を引こうと私は王妃になることを諦めるつもりは毛頭なかった。
何しろ私は女神に選ばれたヒロインなのだから。
最後は私が必ず勝つのだ。
無駄な抵抗をするクラリス。
覚えていてね。
エミールの心を奪うのは当然のこと、絶対に断罪の上で悲惨な目に会わせて上げるわ!
私を前世で虐めたことを後悔させてやるわ!
私は少し強引に乗せてもらったエミールの馬車の中で、つまらなそうに窓の外を見てくれるエミールを視界の端に捉えながら、心の中で叫びまくったのだ!
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
しつこい聖女の前に気弱な地味令嬢のクラリスは対抗できるのか?
続きは今夜です。
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