悪役令嬢回避のために攻略対象のお兄様を籠絡することにしました
それからしばらくは平穏な時が過ぎた。
私の我が儘がなくなったとのことで、使用人達はとても喜んでくれた。
これまでは黄色の服を着ると言ったのに、侍女が持ってきたら赤い服が良かったとかどうでも良いことですぐにだだを捏ねていたという。
でも、今は服選びもセンスのない私はデジレに全てお任せだったし、デジレが持ってきた服を文句も言わずに着ていた。朝起きるのも中々起きずに侍女達を困らせていたそうだが、今は当然普通に起きるし、何よりも侍女にしてもらったその後お礼を言うようになったのだ。
私からしたら当然のことなんだけど、クラリスは一切お礼なんて言ったことがなかったらしい。
ただ、悪くなったことと言えば、前のクラリスはとても運動神経が良かったそうだ。
それが高熱を発してからのクラリスは運動音痴になって、たまに転けるようになった。何でもないところで何故かいきなり転けるのだ。
頭で考える動きに手足がついていかないみたいな感じだった。まあ、いきなり、大人から子供に変わったのだ。前世の私はどちらかというと運動は苦手だったし……
私は時たまとんでもないところで転けるので、廊下を歩く時も自然とゆっくり歩くようになっていた。
お父様とお兄様は早速本を買ってくれたんだけど、私はその量に驚いた。
大量の絵本が届いたのだ。何十冊もあるだろう。
それに、きれいな絵で書かれた本は絵師が全て手書きした絵本だったのだ。
そうだった。
この時代は印刷技術がなくて、本は全て写本だったし絵本は手書きだった。
ここに何十冊もあるけれど、これってめちゃくちゃ高価なのではないだろうか?
私は青くなった。
「あのう、お父様。こんなにたくさんの絵本、とてもお金がかかったのではないの?」
私は思わず聞いていた。
「何を言うんだ。可愛いクラリスのためだ。これくらい全然大したことではないよ」
「そうだぞ。クラリス。こんなのは公爵家からしたら全然なんでもないんだからな」
二人はそう言ってくれた。さすが世界の公爵家だ。しかし、前世庶民の私からしたら耐えられたものではないので、次回から気をつけようと心に決めたのだった。
それに絵本か?
スマホもゲームもないから本くらいしか読むものはないけれど、私は5歳だけれど、頭の中身は成人を越えている。さすがに絵本を読むのは憚られた。
そういえばお兄様も攻略対象者だった。
お兄様は私の二つ上で、私が死ぬ前に初めて断罪ルートまでたどり着いた時は、王子と一緒に悪役令嬢のクラリスを断罪していた。今はこんなにラブラブなのに、私があまりにも我が儘に育ってしまったからか、最後は断罪してくれるのだ。
断罪されるのは嫌だし、殺されるのはもっと嫌だ。確か、最悪の場合、ヒロインの聖女を破落戸を雇って殺させた罪で処刑だった。なんとしてもそれは避けたかった。女神様は悪役令嬢やってくれたら、次はヒロイン転生させてあげるなんて都合の良いこと言っていたけれど、あんないい加減な女神様の言う事なんて信用できない。ここは絶対に悪役令嬢にならないようにしなければ。
そのためにはまずはお兄様を籠絡することが必要だと私は思った。
気弱で人見知りな私でもこの私に過保護なお兄様ならなんとか出来るはずだ。
「お兄様。絵本を読んでほしいの!」
私は上目遣いで頼んでみたのだ。
こんなぶりっこ、前世ではやったこともなかったけれど、命には代えられない。
「そんな、クラリス。ご本なら私が読んであげるよ!」
慌ててお父様が主張してきたが、
「旦那様。王宮のお仕事は宜しいので?」
なんと、お父様は今日、絵本が配達されると聞いて、仕事を途中でほったらかしにして帰ってきたらしい。
執事長のセバスチャンに指摘されて、泣く泣くお父様は肩を落として王宮に帰って行ったのだ。
「クラリス、どの本が良いんだ?」
「これが良いの!」
私は王子様とお姫様のお話を選んだのだ。
本当のぶりっこならばお兄様の膝の上に乗るところだが、さすがの私もそれは出来かねたので、ソファのお兄様の横にくっついて座った。
お兄様は心持ち笑顔になっていた。
「あるところに王子様とお姫様がいました」
「この王子様はお兄様みたいで格好良いわ」
読み出してくれたお兄様に私は最初に言ってみた。確か、ゲームではヒロインがこれに似た事を言っていたはずだ。
「えっ、そうか?」
お兄様が満更でもなさそうな顔をしてくれた。
お兄様ってとても単純だ!
私にも判った。こんなので、公爵家の跡取りになれるのか? と思わないでもなかったが、私の敵にならないでいてくれたらそれで良いのだ。
「じゃあ、このお姫様はクラリスみたいだな」
とってつけたようにお兄様がお返しで言ってくれた。
もう少し言い方ってものがあるんじゃないか?
と思わないでもなかったが、ここは我慢だ。
その後王女様は悪い奴らに攫われるんだけど、この幼なじみの隣国の王子様が波瀾万丈の戦いを経て助け出すお話だった。
私はまさか5歳の子供が読む絵本で感動すると思っていなかった。
「凄いわ。私もこのお姫様みたいに、将来はお兄様と結婚したい」
涙目の私はお兄様の目を見ずに絵本を見て叫んでいた。
「おお、そうか、クラリス、そう言ってくれるのか」
お兄様はとても喜んでくれた。
心にもないことを言って良心の呵責を感じたが、断罪を避けるには仕方がない。
よし、クラリス、頑張るんだ。なんとしてもお兄様を虜にするんだ。
私はそれから努力することにしたのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
結構あざといクラリスでした。
続きは明日です
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