教室の手前で私達の前に現れた聖女は、止めようと突き出したエミールの手に自分の大きな胸を押しつけてくれました
「「「キャーーーー!」」」
エミールが馬車から降り立った途端、女達からの悲鳴にも似た甲高い歓声が飛んだ。
「王太子殿下よ!」
「エミール様!」
「エミール様は今日もお姿が凜々しいわ!」
女達の声援が響く。
「でも、今日も誰かを連れておられるみたいよ」
「また、聖女様かしら?」
女達の声が聞こえた。
皆の注目を浴びている。
「クラリス、行くぞ」
なんかエミールがやる気満々なんだけど……
ええええ!
この中に私が出ていくの?
私は嫌だったんだけど……
「さあ」
強引に手を引かれて下ろされたのだ。
「だれ、あの地味な子は?」
「あれよ。あれ。王太子殿下の婚約者の」
「確か、ロワール公爵家のご令嬢だと」
「でも、本当に地味よね」
ギャラリーからも呆れられているんだけど……
だから私はエミールと一緒に降りたくなかったのに!
「でも、エミール様。あの子の手を引いているわよ」
「それも、恋人つなぎよ」
「嘘、信じられない!」
女達の悲鳴が響いた。
「エミール様なら可能性があると思っていたのに」
「あなた、何を言っているのよ。腐っても相手は公爵令嬢よ。子爵家のあなたがクラリス様に勝てる訳ないでしょ」
「そんなの判らないじゃない!」
女達は好き勝手に言ってくれてるんだけど……
ゲームでは婚約破棄されて、その上断罪までされて、男爵令嬢のアニエスに取られるからその通りなんだけど、腐ってもって何よ!
それに私の手を引いているエミールはニコニコしているんだけど……これって王家特有の愛想笑いじゃないの?
私の前では素顔でいるって言ったのに!
私の心の疑問は無視して、そのままエミールは私の手を引いてゆっくりと教室の方に歩いて行ってくれた。いつもよりもゆっくりだ。私を時たま見ては笑顔なんだけど、これって絶対に王家の愛想笑いだよね!
でも、そのまま何事もなく行ける訳もなく、
「エミール様!」
後ろから声がしてアニエスが走ってきたのだ。
ゲームではこんな場面なかったんだけど……
まあ、ゲームではエミールはクラリスの我が儘な態度にいい加減嫌になっていたし、クラリスの手を引くなんて事はなかったけれど……
婚約者が二人で歩いているところに、普通、男の名前呼びながら駆け寄ってくるか?
さすが空気を読まない聖女だ。
でも、今日のエミールは慌てて私を後ろに守る形にして、前に出てくれた。
一応守ってくれようとしたのだ。
しかし、なんと駆けて来たアニエスはそのままエミールに抱きつこうとしてくれたんだけど、信じられない!
でも、さすがにエミールがさっと身を引いてくれた。
運動神経の悪い私なら確実に転けていただろう。
しかし、アニエスは運動神経は良いみたいで、そのままエミールの動きについてきた。
そして、そのアニエスの動きを止めようとしたエミールの左手に抱きつこうとしてくれたのだ。
止めようと前に突き出したエミールの手にそのまま抱きつくと丁度アニエスの大きな胸が当たったのだ。
「キャッ」
「「えっ?」」
エミールの手はアニエスの大きな胸をむにゅっと掴む形になっていた。
エミールは驚いた顔をして固まっていた。
私はエミールのたわわな胸を掴んでいるアニエスの手を見て唖然としていた。
アニエスは一瞬驚いた顔をしたが、
「キャッ、エミール様って大胆です。でも、もっともんでくれていいですよ」
そう言って喜ぶと両手でエミールの手を更に自分の胸に押しつけたのだ。
嘘、エミールがアニエスの胸をもんでいる!
ピキッと自分の中で何かが切れるのが判った。
「おい、やめろ! アニエス!」
エミールは余裕のない声で狼狽して手を引こうとするが、アニエスはぎゅっとエミールの手を掴んで離さない。それもエミールはアニエスを名前呼びした!
「いや、クラリスこれは違うぞ」
エミールは慌てて振り向いて私に言い訳してくれた。
そういう事はアニエスの巨乳から手を離してから言いなさいよ!
私は切れていた。
慌てたエミールはアニエスの胸から手を無理矢理引っ張って離そうとした。
でも、アニエスはエミールの手を掴んで思いっきり自分の胸に押ししつけていたから、そのまま、一緒に引かれてエミールに抱きついてくれたのだ。
「えっ?」
半分私の方を見ていたエミールは大きく体勢を崩した。
そしてアニエスに抱きつかれたまま倒れてくれたのだ。
その倒れる前に私はエミールの手から自分の手を思いっきり引き抜いていた。
「エミール様! 強引なエミール様も好きです」
「いや、違うぞ、クラリス」
完全に切れた私は抱きつかれて言い訳してくるエミールを無視して歩き出したのだ。
私の視界の端で思いっきり自分の胸をエミールに押しつけるアニエスの姿が見えた。
その目は勝ち誇って私を見ていたのだ。
「いや、ちょっと、クラリス!」
後ろからエミールの悲鳴が聞こえたが、私は振り返りもしなかった。
嫌なら抱きつかれなかったら良かったのだ。
それもアニエスの胸をもんでいた!
ピキピキッと私は完全に切れていたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
完全に切れたクラリスでした。
続きは今夜です。
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もう一つの更新中の
『もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい』
はお昼更新予定です。
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