婚約者の対応について怒り狂っていたら、翌朝婚約者が謝りに来て食べさせられてうやむやにされてしまいました
「本当に信じられない!」
私は家に帰っても、思い出す度に今日の婚約者のエミールの行いが許せなかった。
今日はなんと、朝から婚約者の私は捨て置いて、聖女のアニエスと一緒に学園に通学してきたのだ。
私なんて王宮に送り迎えしてもらった事なんて一度もないのに……いや、まてよ、そういえば昨日は初めて送ってくれた。でも、その一度きりだ。
なのに、聖女のアニエスとは最初から一緒に登校するなんて……私という婚約者がいるのに!
普通は考えられなかった。
ゲームでも私が知る限り入学式から一緒に登校するなんてあり得なかったのに!
それに入学式の最中も二人で仲よさそうに話していた。アニエスはエミールの話を途中から横取りしてくれたし……エミールの前で最初に転けたのは私よ!私!
エミールもエミールよ。昨日は卒業したらすぐに私と結婚すると言ってくれたり、私のファーストキスを奪ってくれたくせに、聖女とイチャイチャしてくれて、信じられない! 最後は二人して抱き合ってくれていたし、あのまま聖女を送って行ったんだろうか?
これは私がゲームみたいに悪役令嬢をしていないから、女神様が怒って二人が仲良くなるタイミングをはやくさせたのだろうか?
でも、そんなのあり?
もう絶対に許せなかった。
その夜は怒りのあまりその夜も中々寝れなかった。
「お嬢様、お嬢様、大変です!」
私はデジレに揺り動かされて、起きた。
「えっ、もうそんな時間なの?」
私は寝過ごしたかと慌てて起き上がって時計を見たら、まだいつもの時間よりも早かった。
「まだ早いじゃ無い!」
私が文句を言うと、
「それが王太子殿下がいらっしゃっていて」
「追い返して」
私はその言葉を聞いた瞬間、布団をもう一度かぶったのだ。
「えっ、クラリス様。そんなわけには」
「いいから、二度と王太子殿下とは会いたくないわ」
私がそう叫ぶと、
「クラリス! 頼む。俺が悪かった!」
廊下からエミールの大声がした。
「ちょっと殿下。困ります。これ以上入られるのは」
お兄様の悲鳴に近い声がする。
「セドリック、頼む。一目でいいからクラリスに会わせて謝らせてくれ」
「だから殿下。判りましたから、私が言い聞かせて一階に下ろしますから、下でお待ちください」
お兄様の声が聞こえるんだけど……
「お兄様。私は絶対に王太子殿下とは会いません!」
私は宣言したのだ。
「いや、クラリス。俺が悪かった。もう母の言うことは絶対に聞かない。だから機嫌を直してくれ」
なんかエミールが問題発言をしているんだけど、王妃様の言うことを聞かないのと私が許すのは違う話だと思うんだけど……
私が怒って布団をかぶって寝ていると、ドアがノックされた。
デジレが対応してくれていたが、
「クラリス様。セドリック様が是非とも食事に降りてきてほしいとおっしゃっていますが」
デジレがそばに来て伝えててくれた。
「嫌です。絶対に殿下には会いません」
「クラリス、そう言うな、殿下はお前に会うまでは絶対に帰らないとおっしゃっているんだ」
私がお兄様に向かって叫ぶと、お兄様が説得してきた。
「はい? お兄様の力で追い出して下さい。殿下といえども家宅侵入罪で追っ払えるはずです」
「まあ、クラリスの言うそれが何かは判らないが、そう怒らずに頼むよ。会うだけ会えば良いから」
「嫌です」
「クラリス様。殿下が王宮のイチゴを持ってきて頂いています」
横からセバスチャンが口出ししてきた。
「いくら、私でもイチゴくらいでは釣られないわよ」
少し布団を上げて私が文句を言うと
「そうですか? 残念ですね。その数が100個もあるんですが……」
「えっ、100個も」
その数にさすがの私も少し体を起した。な、なんと言うことだ。食べ物で釣るなんて……婚約者にすることか?
「そうだよな。お前がいらないんなら俺が全部食おうか」
「えっ」
お兄様ならやりかねない。
「それと王宮のシェフが作ってくれた大きなイチゴのデコレーションケーキがあって、一緒に食べようとおっしゃっていらっしゃいますが……断られるなら、皆でわけるしかないですね」
セバスチャンが悪魔のささやきをしてくれた。
「判ったわ。すぐにおります」
仕方が無い。私は降りることにしたのだ。
でも、会うだけだ。
絶対に許さないんだから!
私は呆れた表情のデジレの視線を無視して服を着替えたのだ。
私が一階の食堂に降りていくと、座っていたエミールが慌てて私の前に飛んできたのだ。
ふんっ、とわたしが、顎を振り上げると、
「クラリス、昨日は本当に申し訳なかった」
なんとあのエミールが私に頭を下げて来たのだ。それも90度曲げてくれて、究極の謝罪の姿勢を取ってくれているんだけど。
それも驚愕しているお父様やお兄様や使用人達の前でだ。
王太子が頭を下げるなんて普通はあり得ない。
「王太子殿下。人前で頭を下げるなんておやめ下さい」
私はそう言って無視して行こうとして、足がもつれた。
日頃は傲慢冷酷なエミールが私の前で頭を下げているから調子が狂ったのだ。
決していつも転けているわけではない!
「キャッ」
私は叫ぶとそのまま、私の声に驚いて起き上がったエミールを巻き込んで転けてしまったのだ。
私はエミールの胸の中に飛び込んだ形になってしまった。
「良かった、クラリス! 許してくれるんだ」
地面に倒れ込んだエミールの胸の中に倒れ込んでそのままエミールに抱きしめられたんだけど。
いや、ちょっと待って! まだ許していないから!
私はそう思ったけれど、
「クラリス! ありがとう!」
思いっきりエミールに抱きしめられているんだけど……
「ちょっと、殿下、朝から何をしてくれているんですか」
「そうだ。俺の前で妹を抱きしめるのはやめてください!」
「いや、絶対に離さない」
怒り狂ったお父様とお兄様の前で私を思いっきリ抱きしめてくれて、ちょっと息が苦しいから!
止めて!
三人からやっと解放された時、私はゼイゼイと息をしていた。
その後、椅子に着いたが、何故か私の席の横にエミールがちゃっかりすわっているんだけど……
私はエミールを許したわけではないのにだ。
無視して食べようとしたら、私の前だけケーキもイチゴもないんだけど……
「セバス……アグ」
セバスチャンを呼ぼうとして、私の口の中にイチゴが放り込まれたのだ。
そちらを睨むと楽しそうなエミールがいるんだけど……
「人の……うぐっ」
人の口の中に勝手に入れないでよ!
全部飲み込んでそう叫ぼうとしたらまた口の中に入れられたんだけど……
ちょっとどういう事よ!
「私は……うぐっ」
私は許していないのに!
私が睨みつてもエミールは平気な顔しているし、何か嬉しそうだ。
お父様もお兄様も苦虫をかみつぶしたような顔はしているけれど注意をしないんだけど……
結局なし崩し的にエミールに食べさせられてしまったのだ。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
エミールに餌付けされるクラリスでした……
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