女の子達に囲まれて虐められようとしていたら親切な隣国の伯爵令息が助けてくれました
聖女のアニエスが連れ去られて行くのをみて、私は思わず溜飲を下げていた。
というか、あそこまでロッテンマイエル先生に反抗したら通常ああなるだろう。
聖女アニエスの行動が私には判らなかった。聖女だから何でも許されると思っているんだろうか?
恐怖のロッテンマイエル先生に通用するわけないじゃない!
「まあ、可哀相なアニエス様」
「本当に」
しかし、周りの令嬢達はアニエスに同情的だった。
でも、散々ロッテンマイエル先生に虐められていた私としては、ロッテンマイエル先生にあんなに反抗したアニエスさんには当然の結果だと思った。
「連れ去られるアニエスさんを見るクラリスさんの喜んだ顔見た?」
「本当に悪役令嬢って感じね」
どこからか私を非難する声まで聞こえてくるんだけど……
私はまだ悪役令嬢らしいことなんて全然何もしていないのに!
何で悪役令嬢なんて呼ばれているんだろう?
これもゲーム補正なんだろうか?
これ以上、ここにいても良いことはなさそうだ。
私は疲れ切っていたのもあって、そのまま帰ろうとした。
「ちょっと、クラリスさん。今のはないのではなくて」
私は驚いたことに、いきなり令嬢達に絡まれたのだ。
「そうよ。あなた、わざとロッテンマイエル先生の前で先生を焚きつけて怒らせて、聖女のアニエス様が叱責されるようにしたわね」
私は気付いたら10人近い令嬢達に囲まれたんだけど……
ええええ!
いくら、学園にいる間は平等ってエミールが言っても公爵令嬢の私が下位貴族の令嬢達に囲まれないといけないの?
私は目を見開いた。
私にきつい口調で詰問してきたのはバルバラ・ビオレ子爵令嬢とクロエ・ドントレ子爵令嬢だ。
本来この子らは私の取り巻き令嬢で聖女アニエスを虐めるんじゃないの?
尤も公爵令嬢の私の取り巻きならば5人いる伯爵家の令嬢が中心になるはずだけど……
伯爵家の面々は口を開けて唖然としてこちらを見ていた。
普通、子爵令嬢が公爵令嬢を取り巻いて詰問するなんてあり得ないんだけど……
私もぽかんとしていた。
ここは私が公爵令嬢であることをはっきりと知らしめた方が良いのか?
学園内では皆平等かもしれないけれど、この中には我が公爵家に近い令嬢もいる。我が公爵家に逆らう意味がわかっているのだろうか?
お父様やお兄様が知ったら激怒してその当主と絶縁しそうだけど、良いのか?
本人達も我が公爵家の息のかかっている領主の子息との婚姻は絶対になくなるんだけど……
まあ、確かに私がエミールに婚約破棄されて、アニエスがエミールと結婚して王妃になれば彼女らも報われるかもしれない。我が公爵家も私が婚約破棄された時に一緒に没落したらそれで終わりだ。でも、お父様もお兄様も仕事は出来る方なので、今のところ私が婚約破棄されても没落する可能性はとても低いんだけど……
次の宰相はお兄様が継ぐだろうとか言われているし、今のところ、私の絵本作戦が功を奏していてシスコンになったお兄様がアニエスに靡くことはあり得ないんだけど、この子ら判っているんだろうか?
その証拠に伯爵家の面々は一切関わっていないし、一緒に見られたら嫌だと、さああああっと離れてくれた。
いやいや、ちょっと注意してあげてよ。
私はそう言いたかった。
「何をしているんだ?」
そこへ男の子が声をかけてくれた。
確か、自己紹介でマクシム・ナーランドと名乗った男の子だったと思う。
隣国から留学してきたナーランド伯爵家の令息だ。このマクシム、茶色の髪に碧眼なんだけど、絵本の中の王子様みたいにきれいだった。登場の仕方もとても、格好良かった。
我が国の男たちは恐れをなして、誰も助けてくれなかったのに!
囲んだ女たちも、マクシムを見て、思わず頬を染めて、ぼうっとするものまでいた。
「あなたこそなんなの?」
「そうよ。私達はこの女がアニエス様を嵌めたのに対して怒っているのよ」
バルバラとクロエが何とか反論していた。
「何言っているんだよ。どう見ても、あれは完全にアニエスさんが悪いだろう」
当たり前のことをマクシムが言ってくれた。
「何を言っているのよ」
「そうよ。この女がわざとそうなるようにしむけたのよ」
二人がまだ言ってくれるんだけど。ロッテンマイエル先生を私がコントロールするなんて絶対に無理だ。下手したら私もしょっ引かれるのが落ちだ。
「どう見てもロワールさんはアニエスさんに巻き込まれただけだろう」
マクシムが事実を話してくれた。
「それよりも、10人で一人の女の子を囲んで虐めているなんて、ロッテンマイエル先生に知られてみろ。お前らこそ、ただでは済まないぞ」
マクシムは女達を脅してくれた。
さすがにこの一言は効いたみたいで、二人の女の子が抜けていた。
「虐めてなんていないわよ」
「そうよ。私達は話していただけで」
マクシムの言葉にバルバラ達も少したじろいだ。
「あの先生が、そんなこと許す訳ないだろう。さあ、ロワールさん。行こうか」
強引にマクシムは私の手を引いてその中から連れて出てくれたのだ。
「いや、ちょっと、待ちなさいよ……」
バルバラが抵抗しようとしたが、マクシムに睨まれて何も出来なかった。
私はほっとするとともに、その子に手を引かれてとても恥ずかしかったのだ。
手を引かれるなんて、お父様とお兄様を除いたらエミールだけだった。
「ごめん。少し強引すぎましたよね」
教室を出てそのまま校舎を出たところで、慌ててマクシムは手を離してくれた。
「ううん。助けてくれて、ありがとうございました」
私はにこりと笑ってお礼を言ったのだ。
実際あのままマクシムが助けてくれなかったらどうなったか判らなかったし、下手したら大変な事になっていた。
他は誰も助けてくれなかったし、私にはマクシムが白馬の王子に見えたのだ。
「何をしているんだ?」
そこへ氷のように冷たいエミールの声が聞こえた。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
果たして修羅場か。
続きは今夜です。
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