聖女視点 転生した事を思い出して聖女になったので、悪役令嬢を引きずり下ろすことにしました
私は前世の名前は白鳥麗子だったと思う。多分……
詳しいことはもう忘れてしまった。
家は大金持ちでは無かったけれど、両親は共働きでそこそこお金はあった。
小学校の高学年からお受験の勉強させられて、中学からはお嬢様学校の付属校に通っていた。
お嬢様学校なだけあってそこには金持ちの娘がゴロゴロいた。
明るくて容姿も良かった私はその中でも一躍人気者になった。
しかし、それがとあるお嬢様の逆鱗に触れたみたいなのだ。
その子の影響力は強く、私は完全に学校で浮いてしまった。その女を恐れて友達はあっという間に皆離れていった。
「ねえ、聞いた? 白鳥さんところ、実は社長の娘じゃ無いんですって」
「えっそうなの? 家も豪邸って聞いたけれど」
「そんなの全然嘘よ。埼玉の片田舎のマンション住まいだそうよ」
「何だ。それで大山財閥のお嬢様の華子様とやり合おうとしたの?」
「本当に馬鹿よね」
私は見栄を張って社長の娘だと吹聴していた嘘も皆にバレてしまった。
残酷な悪意にさらされてあっという間に私は皆から仲間はずれにされてしまったのだ。
学校に行くのも嫌になり、私は『ピンクの髪の聖女』という名の乙女ゲームに嵌まってしまった。乙女ゲームも最初は大山華子そっくりの悪役令嬢クラリスに虐められたけど、王子のエミールに助けられたのだ。それが嬉しくて、朝から夜までそのゲームをやり尽くした。そのゲームは難易度が高いとネットとかには載っていたが、私はあっさりと一番人気のエミールルートを攻略していた。他のルートはちょくちょく苦労したが、最後の逆ハーレムモードまでフルコンプリートし尽くしたのだ。
破落戸に私を襲わせた悪役令嬢を最後は断罪処刑にしてやって私はほっとした。
途中からは黒目黒髪の悪役令嬢の顔が私を虐めてくれた学校の大山華子に見えたので、私は徹底的にやっつけてやったのだ。
よし、現実世界でも私を虐めてくれた大山華子に仕返しをしてやる。
そう決意して学園に通い出した私は、仕返しする間もなく、コロナにかかってあっさりと死んでしまったのだ。
なんなのだ、これは!
私は死の病床で苦しみながら涙した。
でも、天は我に味方してくれた。
なんと天国で出会った女神様が私をゲームのヒロインに転生させてくれるというのだ。
私は飛び上がって喜んだ。
幸いなことに悪役令嬢は黒目黒髪だ。
あの大山華子が死んだら絶対に悪役令嬢に転生させてほしいと私は女神様にお願いして転生したのだ。
私は平民アニエスとして田舎の農家の三人兄弟の末っ子として転生した。この家はとても貧しかった。狭い畑を皆で耕していたが、私達5人が暮らしていくだけで精一杯だった。
私はこんな生活はおかしいと心の底では思っていた。でも、何がおかしいかは最初は判っていなかった。
それが判ったのは14歳の時に聖女の力が発現した時だった。
飢えを凌ぐために、私は良く山に木の実を取りに行っていた。
その日も恋人のカールを連れて山に入った。
しかし、そこにいきなり魔物が襲いかかってきたのだ。
「アニエス、逃げろ!」
カールは私を前に棒きれで戦おうとしたが、カールは魔物の右手の一撃で弾き飛ばされていた。
血だらけでカールが飛んで行った。
そして、魔物は私を睨み付けた。ゆっくりと近づいてくる。
死ぬのは嫌だと私が思った時だ、
私の頭の中に急遽前世の記憶が蘇ってきたのだ。そして、聖女の力が……
「いやあーーーー!」
私は叫び声とともに手から金に光る閃光を魔物目がけて発射していた。
魔物は一瞬で浄化されたのだ。
私はヒロインとして前世の記憶とともに覚醒した。これで絶対に今度こそは大山華子扮する悪役令嬢に仕返しして王妃になってやると私は決心したのだ。
それからはトントン拍子だった。
私は迎えに来たその地の領主ボラック男爵の養女となった。
ボラック男爵は小太りの男で、大きな商会を持っていた。元々平民からの成り上がりで、一代でその商会を大きくしており、その金で男爵位を買った男だった。その上昇志向は凄まじく、今度は私を元に爵位をあげようともくろんでいた。
男爵は金を私の家族に払って今後一切私との関わりを禁じていた。
記憶の戻った私も家族やカールには何の未練も無かった。
「そんな、行くなよ、アニエス」
カールは一人で私にすがりついてきたのだ。
「離して、カール!」
私はカールの手を振り払ったのだ。
「そんなアニエス、どうしたんだ?」
信じられないという顔をカールがした。
「私はもう男爵令嬢になったのよ。気安く話しかけてこないで!」
呆れた笑みでカールを見下すと私は首を横に振ったのだ。
「何だとアニエス!」
怒り狂ってカールが私に掴みかかろうとしてくれた。
「貴様、お嬢様に何をするのだ」
騎士達が間に入ってカールを止めてくれた。
なおも暴れるカールを騎士達が殴りつけて取り押さえようとしていた。
私は暴れるカールを見もせずに男爵の馬車に乗り込もうとした。
「アニエス! 俺が魔物から命がけで守ってやったのに! 聖女になった途端にあっさりと見捨てるのか」
その時、カールが叫んでいた。
パシン!
私はつかつか歩いて行くと暴れているカールの頬を引っ叩いたのだ。
カールは驚いた顔で私を見た。
「何言っているのよ。あなたは魔物にあっさりとやられていたじゃない。私が聖女の力で魔物を浄化してあんたを助けなかったら今頃死んでいたでしょ。あんたを守ってあげたのは私よ。間違わないで!」
それだけ言うと私はカールの方は二度と振り返らずに私は馬車に乗ったのだ。
「アニエス!」
うなだれて泣き叫ぶカールの声が聞こえたが、無視した。
「恋人か?」
不快そうに口をゆがめて男爵が言った。
「ただの腐れ縁ですわ。お義父様の子供になった私にはもう関係のない男です」
私がそうはっきりと言うと、男爵はにやりと笑った。
「それが判っておれば良い。その方は100年ぶりの聖女になったのだ。相手は選り取り見取りだ。あのような男に関わっている暇はない」
「はい。王太子殿下のお心を掴んで見せますわ」
「そうかその心意気だ。百年前の聖女様は実際にも王妃様になったのだからな。その力を使って儂を大いに引き上げてくれ」
私が決意を語るとお義父様は笑ってくれた。
「ええ、お任せ下さい。その代わり婚約者の公爵令嬢を引きずり下ろすお手伝いをお願いしますわ」
「ロワール公爵家のクラリスか。我が儘令嬢だと噂の令嬢だな。ふん、面白い。やれるものならばやってみるが良い。儂で出来ることなら何でもやってやろう」
「それでこそ私のお義父様ですわ」
私とポラック男爵は二人して高笑いしたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございました
ついにやる気満々の聖女登場です。
クラリスの運命や如何に?
続きは今夜です。
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