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新入生代表の挨拶を聖女に取って代わられて、王太子と仲の良い所アピールをされました

 私はなんとか涙を抑えて入学式の講堂に入った。

 舞台の上の席に生徒会長のお兄様と王子のエミールと、何故か聖女までいた。

 遠くから見る限りエミールと聖女は楽しそうに話をしていた。

 それを見て私は胸に痛みを感じた。

 そうか、これからずっと二人の仲の良い所を見なければいけないのか……

 私は目をそらした。

 こんなの見ていられない。ゲームのクラリスがアニエスを虐めた理由が少し判った。


 講堂に入る前にクラス分け表では私はAクラスだった。Aクラスには当然聖女のアニエスもいた。どんな顔をしてアニエスと顔を合わせれば良いのだろう?


 それと一番嫌なことには、担任があのロッテンマイエル先生だということだった。せっかく王宮からいなくなったと思ったのに学園で担任になるなんて、なんて最悪なの!

 ズドーンと私の心は暗く沈んでいた。

 アニエスにしろロッテンマイエルにしろ会いたくなかった。

 私は碌な三年間が送れそうにないと思えてきた。


 一応入学試験で私はトップの成績だった。王妃様からはどんなことがあってもトップを取りなさいとプレッシャーを受けていたので、取れてよかった。取れていなかったらまた、グチグチ文句を言われるところだった。

 でも、そのお陰で私は新入生代表に選ばれた。スピーチをしなければならないのだ。一応文章は清書して何回か練習した。準備は万端だったのだ。


「クラリスさん」

 その私の所にロッテンマイエル先生がやってきたのだ。

「はい、何でしょう?」

 私はとても警戒した。


「あなた、新入生代表に選ばれたでしょう。ただ、在校生代表もあなたのお兄様の生徒会長がするでしょう。新入生代表と在校生代表を両方ともロワール公爵家がやるというのもどうかという意見が出たので、ここは聖女様にゆずってもらいたいのだけれど」

 ロッテンマイエル先生の言うことはもっともだと思えた。兄と妹で代表を務めるというのもなんだし。別に聖女に譲るのは嫌だけど問題なかった。

 でも、それなら前もって言ってほしかった。

 文章を考えて練習するのに5時間はかけたのだ。


「別に大丈夫ですよ」

 私は笑みを浮かべて、仕方なしにゆずった。


 最初の挨拶は学園長の挨拶でだらだらとやたら長く私はうんざりした。


 次はお兄様の挨拶だ。

 私は目を見開いて舞台を見た。


「それでは在校生代表はこの王国の王太子殿下であるエミール・ブルゾン殿下にして頂きます」

 私はそのアナウンスに驚いた。エミールがやるのならば、私が新入生代表でも良かったのではないかと思ったが、少なくとも今はエミールと婚約しているし、婚約者同士でやるのも良くないのかもしれない。


「新入生の皆さん。この王立学園にようこそ。最初に皆さんにお伝えすることはこの王立学園では親の身分によって差別されることはないということです。王子であろうが、公爵令嬢であろうが、聖女であろうが、全ての生徒は平等です。だから、親の地位を笠に着て横柄な態度を取ったりすることは禁止されています。特に貴族の方は気をつけてくださいね。

 もう一つお伝えすることとは、人を見た目で判断しないようにして下さい。

 私は小さい頃から周りからはよくできると言われて、当時は同学年で自分より出来る者はいないはずだと天狗になっていました。しかし、私より年下のとある少女に出会って私の張りぼての自信は木っ端みじんに砕け散ったのです。彼女は見た感じ、鈍臭そうで、いきなり私の前で転けてくれたのです。

 私はこんな子が私より出来る訳は無いと思ったのです」

 ちょっと待って、これは私のことじゃないの?

 何故かエミールがこちらを見ているし……

 私は真っ赤になった。


「でも、その子は私が当時読めもしなかった古語を平然と読んでくれたのです。更には数学でも私が解いたことも無い問題をすらすら解いてくれたのです。私は呆然としてそれを見るだけでした。

 それから私は死にもの狂いで勉強したのです。こんな奴に負けてなるものかと。

 天狗になっていた私が勉強するようになったのはその子のお陰です。

 この王立学園は全国から秀才と呼ばれている者が集まっています。今まではトップでも今日からは皆さんよりも出来る者はいやというほどいるのです。今日から新入生の皆さんもこの王立学園の仲間です。皆で頑張って切磋琢磨して勉強していきましょう」


「素晴らしいです」

「王太子殿下!」

「凄いです!」

 皆盛大な拍手をした。

 そんな中で自分のことを話題に出された私は真っ赤になっていた。


「次は新入生代表の聖女アニエス・ボラックさん」

 聖女が呼ばれて立ち上がった。ピンク髪をたなびかせて弾むように歩く様は女の私が見てもかわいらしかった。


「凄い」

「聖女様が代表だなんて」

「テストの成績は聖女様がトップだったんだ」

 周りがざわめいた。一応トップは私なのに……と思わないでは無かったが……ここは大人の対応をしないといけないと私は我慢した。


「皆さん、初めまして、と言っても教会で癒やし魔術をかけさせて頂いた方は私のことはご存じだと思いますが、聖女のアニエスです。先ほど挨拶されたエミール様がおっしゃいましたが、この学園では皆平等だそうです。私もアニエスとお呼び下さい。

 そして、先ほどのエミール様の前で盛大に転けたのは私です」

 おどけてアニエスが言ってくれて、皆どっと笑った。

 でも私はエミール様の前で転けたのは私よ! 私は思わず叫びそうになった。


「私は聖女の力が発動した時に、古語も読めるようになりましたし、何故か数学もできるようになりました。でも、エミール様がおっしゃったようにそれで天狗になることなく、がんばって勉強していこうと思います。エミール様はじめ、先輩の皆さんも、私達が困っていたら助けて下さい。よろしくお願いします」

 そう言うとアニエスは両手を目の前で組んでうるうるしてくれたのだ。

 ゲームしている時はなんとも思わなかったけれど、クラリスの立場に立つと本当にむかつく仕草だった。これでエミールもやられたんだ。

 席に着くアニエスにエミールがにこやかに話しかけているのを見て私は本当に悲しくなったのだ。




ここまで読んで頂いて有難うございました。

いきなりマウント取られまくりのクラリスです。

果たしてこのままエミールを取られてしまうのか

クラリスを応援したいという方はブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾


続きは今夜です。

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
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