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王太子視点 祖母が婚約者を助けてくれてほっとしましたが、それからは祖母に邪魔されてなかなか婚約者と会えなくなりました

 早速お妃教育が始まったが、クラリスは古語が楽々と読めるだけではなかった。

 なんと絶対に出来ないだろうと思えた数学も得意だったのだ。


「いやあ、あのクラリス様が、殿下よりも賢いとは思いませんでした」

 数学の教師が言い出してくれて、俺は開いた口が塞がらなかった。絶対に論理的な考えなんて出来なさそうなクラリスが二次方程式を解いたというのだ。

 俺は数学なんて王族には必要ないだろうと馬鹿にしてあまり熱心にやっていなかった。


 でも、あのほんわかしたクラリスに負ける訳にはいかない。

 俺は古語の勉強に加えて、数学の勉強も必死にやり出したのだ。


「どうしたのだ、エミール? 最近やけに熱心に勉強しているそうではないか」

 父に言われたが、

「いえ、気分転換に勉強も良いかなと思いまして」

 俺は父に格好付けたのだ。


「クラリスに負けてやる気になったのよね」

 余計な事に母がばらしてくれた。

「ほおおお、クラリス嬢は勉強が出来るのか?」

 父は驚いていた。


「私も信じられなかったけれど、あの気難しい歴史の ヘロドトス教授が驚いていたわ。なんでもクラリスは難しい古語を楽々と読むそうよ」

「ほお、我が儘三昧に育って家庭教師を首にしたと聞いていたが、必要なかったからなのだな」

「そうみたいね。あの子の見た目からは信じられないけれど……」

 両親は驚いていた。


「本当だな。応接でいきなり転けられた時はどうなることかと心配したが、それだけ出来ればお妃教育は問題なかろう」

「相変わらず、ロッテンマイエルには泣かされているようだけれど」

 母が同情していた。その顔を見るに母もロッテンマイエルには苦労させられたようだ。


「ああ、ロッテンマイエルは異常だからな。彼奴から高評価される者の顔を見てみたいわ」

 父までそう言いだしたんだけど。なら王宮に連れてこなければ良いのに!


「本当にね。過去にクラリスに首にされたことを根に持っているみたいだから」

「うーむ。一度ロッテンマイエルにも釘を刺しておいた方が良いだろう。クラリス嬢の前の礼儀作法の教師のステーシーに聞いたところ、公爵令嬢の最低限の礼儀作法は出来るそうだからな」

 父がクラリスのために言ってくれた。

「そうよね。まあ、運動神経は良くないみたいだけれど」

「別に騎士になる訳ではないのだから、問題はあるまい」

「最近は暇になると王宮図書館に通っているそうだけれど」

「そこまで勉強が好きなのか?」

 父は驚いていた。


 でも俺はそれが違うことを知っていた。

 何故か王宮図書館には恋愛小説なるものが置いてあって、クラリスは夢中になってそれを読んでいるだけなのだ。

 あんなのどこが面白いのか俺にはよく判らなかったが……


 両親とこんな話をした後に、俺は中庭でクラリスとお昼を食べていた。

 俺はクラリス以上に剣術の訓練や魔術の訓練もあって忙しく、中々クラリスと一緒にいる機会は少なかったが、無理矢理お昼を食べる時間を週に2回くらい作るようにしていた。先生や側近達には文句を言われたが、それがどうした! 

 婚約者にたまに会う時間を作るのに何も問題はないはずだ。


 クラリスはいつ見ても表情が豊かで面白かった。

 思わずニヤニヤしそうになるので、俺は仏頂面でいたのだ。

 相も変わらず、デザートはチョコレートのショートケーキだ。俺の分も食べさせたら、本当に美味しそうに食べるのだ。俺の至福の時間だった。


 最近はクラリスはロッテンマイエルに虐められているみたいで、ロッテンマイエルもやり過ぎなんじゃないかと、父にも言ったのだが、父も母も俺もロッテンマイエルが苦手みたいで黙ってしまうのだ。なら何故学園から王宮に移したのか、両親に文句を言ったら学園長が推薦してきたらしい。おそらく学園でも手に負えなかったんだろう。それを王宮に押しつけるのはどうかと思うのだが……受ける両親も両親だ。


 クラリスがロッテンマイエルの悪口を言っていた時にロッテンマイエルが来たので、俺は思わず逃げ出してしまった。


 さすがに婚約者を置いて逃げるのは男としてどうかと思う。


 ただ、俺もまだ6歳で、さすがの俺もロッテンマイエルは苦手だったのだ。


 後で給仕をしていた侍女に確認したら、ロッテンマイエルは明日からは昼食の時も礼儀作法の授業をやるというのだ。

 さすがのクラリスもそれはあまりに可哀相だ。

 俺は勇気を振り絞ってロッテンマイエルに逆らおうとしたのだ。


 当然俺一人で戦っても、一撃で負けるに決まっていた。俺の授業にロッテンマイエルの礼儀作法講座がプラスされるのは避けたかった。そこで俺は無理矢理父を連れ出すことにしたのだ。


 父はまだ、ロッテンマイエルにものが言えるはずだ。

 最初は父もロッテンマイエルと話すのは嫌そうにしていたが、前日クラリスが4時間も補講を受けさせられて泣いていたと誇張して言うと、さすがにまずいと思ったのか来てくれた。


 俺と父は物陰に隠れて取りあえず様子を窺おうとしたら、別の場所で同じように隠れて見ている祖母を見つけたのだ。


「げっ母上!」

 父は祖母を見つけて嫌そうな顔をした。

 実の息子である父ですらそうなのだ。

 その父の息子の俺も祖母は苦手だった。

 これはますます口を出しにくくなった。


 でも、俺達がやりたいことは全て祖母がやってくれた。


 ロッテンマイエルをあっという間に学園に送り返してくれて、ステーシーを王宮の礼儀作法の指南役にしてくれたのだ。


 俺はほっとした。



 でも、それから問題が起こったのだ。


 祖母がクラリスを気に入って、やたらと一緒に行動し出したのだ。


 これには教師も母も父までも驚いたし嫌がった。

 何しろ祖母はいろいろと口うるさいのだ。


 でも、何をしたのか判らないが、クラリスに対してはその口うるささが引っ込んで、幼子を見守るマリア様のように慈愛の表情で見てくれるんだけど……

 クラリスにとって陰の国王と呼ばれる祖母に可愛がられることは良いことだが、婚約者の俺には良いことばかりではなかった。


 クラリスと二人きりになろうとすると邪魔してくれるのだ。


「申し訳ありません。エミール様。その日は王太后様が観劇に連れて行っていただく予定で」

「その日は王太后様にクッキーの作り方を教わる予定で」

 せっかくクラリスと遊びに行こうとしても、よくその前に予定を入れてくれていたのだ。


 クラリスは俺の婚約者なのだ。祖母の婚約者じゃ無い!

 俺は余程そう叫びたかった。でも怖くて言えなかったけれど……

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

エミール視点でした。

ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾


そろそろ次回は王立学園まで話が飛びます。

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