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86 魔晶箱にかけられた魔法


「これが四凶しきょうに関する箱だとしたら?」

「! ほう……それは興味深い」


 ユーゴの目が光る。その横にいたブレッドは、


 ――あー興味もっちゃったよ。相手の思う壺じゃないですかー。


 と嘆息する。


「どうします? グリフィス魔術師団長」


 グレイは片方の口角を上げる。


「なるほど。私のことは随分と調べているようだ。ならご希望通りこの箱はいただいていきましょう」


 その横で口をあんぐり開けるブレッドだった。





「――ということがあったんだ」


 ブレッドの説明を聞いてリュカは目を細めてユーゴを見る。


「なに相手の思惑にはまってるんですか?」

「そういう言い方も出来るね」


 ユーゴは笑顔で応えた。リュカは相変わらずだとため息をつく。


「で、ホルスマン伯爵はどこで拾ったんですか?」

「わからない」

「……」


 相変わらず興味のないことは聞かないユーゴだとリュカは嘆息し魔晶箱を細かく観察する。

 箱の蓋に付いている鍵となっていて名前の由来でもある埋め込まれた魔晶石を見る。


 ――これが封印魔法がかけられている鍵か。


 それを見たユーゴは感心の声を上げる。


「ほんと君、ベテランの魔術師団員みたいだね」


 そりゃそうだ。魔術師団に何年もいたのだ。どこを調べるのか把握済みだ。だが言えるわけもないため違う理由を述べる。


「父にどこを調べるのかを教わっていましたから」


 困った時の父頼みだ。魔術師団関係ならオーエンの名前を出せば、どうにか切り抜けれることに気付いた。これは便利だとオーエンの名前を使わせてもらうことにした。だがこれ以上突っ込まれるのを恐れ話を変える。


四凶しきょうって、あの聖女誕生の物語のですか?」

「ああ」


 聖女誕生物語とは、


『大昔、山1つほどの巨大な大人しい魔獣の竜がいた。だがいつも寝ていたため、いつの間にか山と一体化してしまい、人間は皆、山が竜だということを忘れていった。だがある日、その巨大な竜がいる山に巨大な光が落ちた。巨大な竜は四体の竜に分かれ、そして目覚めた。その四体の竜は、大人しかった巨大な竜と違い凶暴になり、大暴れし、人々を殺し、ありとあらゆる物を破壊していった。人間は討伐を試みたが、4体の竜には太刀打ち出来なかった。誰もがもう国が滅びるであろうと覚悟を決めた時、国守玉が聖女を召喚させ、国守玉が力を与えた魔術師と精霊魔法士と共に四体の竜を倒し、国の四方地下深くに封印し国は平和を取り戻した。』


 と言う話だ。



「作り話だと思ってました」

「確かに作り話だが、それは現実に起きた出来事が元になっている」


 初めて聞く話だとリュカは目を見開く。


「現実にあった話は、この王宮の図書室に保管されている古書に書かれているため、一般市民は知らないことだ」


 王宮の図書室の書物ならば知らないのは当たり前かと納得する。


「そしてこの魔晶箱のことも古書には書かれている。それもこの魔晶箱と同じ外観の物がだ」

「!」


 王宮の図書室にある書物は誰でも見れるわけではなく、限られた者しか見ることが出来ない。その書物に書かれている魔晶箱の外見と同じということは、本物だと言うことを指していた。


「そしてその古書にはこうも書かれていた。『相反する八神足と四凶、そして3つの光が交わる時、暗黒の闇は明白と化し、根は大地を這い、葉は大気を浄化し、実は国を潤すだろう』と」


 ユーゴは何かを語るように呟く。


「この文章は国守玉のことを言っているのだろうと僕は推測している」

「国守玉ですか?」

「ああ。八神足というのは『国守玉の肢体』を現わしているのだろうね。そしてこの古書には、四凶しきょうとは大昔に現れた4体の特級クラスの竜の魔獣で、倒すことが出来ないために封印され、国の四方――東西南北に人柱の役割として埋められたと伝えられている。ただ3つの光はわからないけどね」


 聖女誕生物語と似た感じだ。


「聖女誕生物語を作った者は、この古書を見たか聞いたかして書いたのかもしれないね」

「その四凶しきょうの1つがこの魔晶箱だと?」

「そう考えたんだけど、四凶の竜の魔獣の大きさを考えるとこの箱では無理だと思うんだ。だから四凶しきょうではないと思っている。でもホルスマン伯爵は四凶しきょうと関係があると言った。だとしたらなんらか関係しているんだろう」


 そこでリュカが訊く。


「団長はホルスマン伯爵の言うことを信じるのですか?」

「僕も最初は疑ったさ。だがよく考えたら、あの状況で嘘を言う理由がないと思ったんだ。もし本当に魔晶箱だったら、王宮の魔術師団の僕に知られば没収されることはわかっていたはずだ。もし欲しかったら隠すのが普通だろ? だがあえて僕に魔晶箱だと言って渡してきた」

「それはホルスマン伯爵はこの魔晶箱がいらないということですか?」

「んー、どうだろう?」

「?」


 ユーゴが言葉を濁したため、リュカは眉根を寄せる。


「違うのですか?」

「いらないというよりは、本当は知られたくなかったが、不本意ながら無理だからと言ったほうがいいかもね」

「不本意?」

「そうだ。どうやっても自分で開けることが無理だったんだろう。そしてこれは僕か僕以上の魔力の持ち主しか開けることが出来ないことにも気付いたんだろう」

「それで団長に開けさせようとしたんですね」

「うん。そう」

「でも団長は失敗したということですね」

「それを言われちゃうと何も言えなくなっちゃうな。言い訳させてもらうと、こんな魔法がかかっているなんて聞かされてなかったからね」


 ユーゴは罰が悪そうに笑う。

 そこでリュカは思う。この魔晶箱は開けないほうがいいのではないのかと。

 これほどの複雑な魔法がかかっていて、古書にも載っている魔晶箱だ。下手に開けた場合、中から何が出てくるかわからない。下手したら倒すことが出来ない魔獣が封印されているかもしれないのだ。そんな危険なものならば、そのまま封印をしておいたほうがいいのではないかと思ってしまう。それをユーゴに言うと、


「そうしたいのは山々なんだけどね……」


 とはっきりしない返事をした。何かあるのかとリュカは目を眇めていると、ブレッドが変わりに話した。


「どうも団長の魔力を今も吸い上げているみたいなんだ」

「どういうことですか?」


 また新たなワードが出てきたとリュカは眉根を寄せていると、ユーゴが1度息を吐き、間を開けてから言う。


「これは推測になるけど、この魔晶箱にはいくつもの魔法がかけられているみたいなんだ」


 一つ目は、鍵をかけた者以上の魔力の持ち主でないと開かない魔法。

 二つ目は、知った魔力を無効化する魔法。

 三つ目が、知った魔力の持ち主の魔力を吸い続ける魔法。


 その説明を聞いて三つ目の魔法にリュカは眉間の皺を深くする。


「このままだと、団長のすべての魔力を吸い尽くすということですか?」

「そうなるね」


 それはユーゴの命が失われるということだった。




最後まで読んでくださりありがとうございます。

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