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84 魔晶箱



「魔晶箱?」

「よく分かったね。そうだ魔晶箱だ」


 魔晶箱とは、何かを隠すために魔法がかかった箱に入れて魔唱石の鍵で閉める箱だ。その中身はピンキリで、宝物であったり倒せない魔獣の封印だったりする。


「先日拾ったんだ」


 リュカは箱を観察する。箱の形からしてかなり古いものだ。


「相当古いですね」

「そうなんだ。だからなかなか開かなくてね」

「あなたなら開けれるのでは?」

「いや。無理だったんだ」


 ――団長で無理だと?


 魔晶箱の魔唱石の鍵は、強力な魔力があればこじ開けることは可能だ。ユーゴの魔力は相当強い。それなのに無理だとはどういうことなのかと眉を潜め、もしかしたらわざとではないのかと疑う。


「じゃあ俺では無理です」


 全力の魔力を注ぎ混めば出来るだろうが、ユーゴで無理ならば学生のリュカが出来るわけがないと思うのが普通だ。だから無理だと断る。それに前世からの経験から、


 ――この人のことだ。何か企んでいる場合があるからな。


 と警戒する。それを察したのかユーゴが苦笑しながら言う。


「もしかして僕がわざと言ってると思ってるかい?」

「はい」


 素直に返事をする。ユーゴはそういうことをする人だ。


「ひどいなー。そんなことするわけがないじゃないか」

「いや、するでしょ」


 ブレッドが間髪入れずに突っ込む。その後ろで団員達がうんうんと頷いている。皆考えは同じのようだとリュカは内心笑う。


「……あはは。君達、僕をそういう風に思ってるのか……。ひどいなー」


 ユーゴは肩を落とし嘆息し、そしてリュカへと視線を戻す。


「これは封印魔法がかけられている」

「はい」


 それはすぐにわかった。


「そして厄介なことに僕でも無理になった」

「なった?」


 ユーゴの言葉に眉を潜める。


「この魔晶箱は、普通の魔晶箱ではない。この魔晶箱を封印した魔術師よりも強い者でしか開けることができないようになっている」

「え?」

「大昔の魔術師は相当能力が高いようだ。今ではこの魔術は伝承されていない。ある一族独特の魔術だったんだろう」


 確かに昔は争いが頻繁にあったことから、独自の魔術を生み出し、家族のみしか扱えない秘匿の魔法が多く存在していた。だがそのような方法を取っていれば、伝承されずに消滅していくのも多かった。そのため現代に残った魔術は、秘匿とせず誰でも知り得るものだけになっていた。


「でも団長ならこの封印を解くことは出来るのでは?」

「んーそうなんだけどね……」


 ユーゴは気まずそうな顔をする。


「さっきも言ったけど、出来なくなったんだよ」

「なぜです?」

「この魔晶箱にはもう一つ魔法が施しているようだ」


 ――ようだ?


 ユーゴの曖昧な言い方が引っかかった。ユーゴは魔法と魔力の分析に長けている。ならばこの表現はおかしい。だが今はそこが問題ではないと聞き流す。


「もう一つとは?」

「一度知った魔力は無効にする魔法が施されている」

「!」


 リュカは目を見開く。そのような魔術があることは聞いたこともない。


「そんなことが出来るのですか?」

「出来るんだろうね。現にそうなっているみたいだから」


 さっきから曖昧な言葉を並べるユーゴにやはりリュカはひっかかった。普段のユーゴなら曖昧なことを言うことはない。どんな魔法が施され、対処法はこうだとはっきり言うのだ。

 どういうことだと眉根を寄せ訊く。


「確かユーゴ団長は魔法と魔力の分析に長けていたと聞きましたが、団長でも解らないのですか?」

「よく知ってるね。一部の人しか知らないはずなんだけどな」

「!」

「あ、お父さんから聞いたのか」


 そこでオーエンは船乗りになる前は魔術師団だったことを思い出す。ならユーゴの能力を知っていてもおかしくない。


「はい。父から伺ってます」

「そうか」


 ユーゴは疑うことなく納得した。疑われずに済みリュカは内心ほっとする。


「さっきも言ったけど、魔力を知られたため、魔力での分析も無効にさせられて調べることが出来ないんだ」


 ユーゴの言い方から、最初に魔晶箱を調べるために魔法を使ったのだろう。その時にユーゴの魔法を知られてしまったため、その後のユーゴの魔力が無効になったということのようだ。

 だからユーゴは曖昧な言葉を言っていたのかとリュカは納得する。


「一度証拠を見せよう。リュカ君、後ろに下がってくれるかな」


 言われた通り後ろに下がる。


「見ててくれ」


 ユーゴが魔力を最大限にし魔晶箱へと手を翳すと魔法陣を展開させ発動させる。刹那、ドーンと凄い音と共に巨大な魔力が勢いよく魔晶箱へと落ちた。まさしく本気モードでユーゴが魔力を使ったものだった。だが魔晶箱はビクともせず傷1つ与えることはできなかった。


 ――本当だ。団長の魔力があの箱に当たった瞬間消えている。


 ここまで見て最初からあった疑問が確信へと変わる。


「拾ったというのは嘘ですよね。これはどうしたのですか?」


 こんな物が落ちているわけがない。


「所々湿っていて土が付着した跡があることから埋められていたのでしょう。だとしたら拾ったというのは無理があります」


 するとユーゴは参ったと言うように肩を窄める。


「ほんと君、その洞察力といい、やること成すことベテランの魔術師団員みたいだね」


 そりゃそうだ。半年前までは前世で魔術師団長をしていたベテランだったのだから。だがそんなことを言えるわけはないため黙る。そんなリュカの態度にユーゴはやはり何も応えないかと苦笑する。


「そうだ。これは拾ったんじゃない」

「団長!」


 ブレッドが抗議の声を上げる。ブレッドの反応から、リュカは魔術師団の機密事項に当たるのだと察する。


「大丈夫だ。ブレッド。リュカ君は無関係じゃないから?」


 無関係ではないとはどういうことだとリュカは眉を潜める。


「魔晶箱はある人物からもらったものだ。その人物はグレイ・ホルスマン伯爵だよ」

「!」




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