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83 もうしゃべるな



 リュカとダンテは一緒にアイラ達が待つ応接室へと戻った。するとすぐさまアイラが聞いてきた。


「どうだった? リュカは何を言われたの?」


 アイラだけではなくサラ達も気になっているようだ。リュカの言葉をまだかと待っている顔をしている。だが前世のことだ。言えるわけもない。


「見たくないものをちゃんと見れば、道は開かれると言われた」

「見たくないものって?」


 アイラが体を前のめりになり質問する。だがリュカはそんなアイラに、


「内緒」


 とだけ応えた。


「えー、気になるじゃない」

「そうだぜ。リュカ、ちゃんと言えよ」


 ライアンもアイラと同じく気になるらしく援軍に回る。するとダンテが笑いながらリュカに援護の手を差し述べた。


「誰しも人に知られたくないことがあるものじゃ。その辺で勘弁してあげなさい」


 ダンテに言われてしまえばこれ以上追求することは出来ない。だからライアンは悪戯な笑みを浮かべ揶揄を入れる。


「なんだリュカ、そんなに人には知られたくない恥ずかしいことがあるのか?」

「そうなの? 黒歴史っていうやつね」


 アイラもうんうんと頷きながら言っている。何か良からぬ方へ行き始めたなとリュカは警戒していると、案の定、


「まあ人には知られたくない性癖があるもんだしな」


 と、ライアンがさらに輪を掛けて言ってきた。さすがにこれ以上好き勝手に言われてはたまったものではないため否定する。


「そんなものはない」

「ほんとかー? 隠すなー」

「ライアン、いい加減にしろよ」


 冗談はよせという意味でリュカはライアンに言ったのだが、アイラはそのように取らなかったようだ。


「リュカ、もう言っちゃいなよ。すっきりするわよ」

「……」


 本気で信じて言っているアイラにリュカは嘆息する。


 ここ半年以上一緒にいたからわかったことだが、アイラは精霊魔法以外は世間に疎く、少し抜けているところがある。前世でリュカと同じくあまり人と付き合ってこなかったのが原因だろう。だからか自分が心を許した者を疑うことをしない傾向がある。


 ――よく今までやってこれたな。


 そこで前世の精霊魔法士としてのアイラを思い出す。今とは違い、凜とした態度で、笑顔はなく、淡々と話す印象だった。現にリュカと話す時も笑顔はなく用件のみ話すだけだった。今のアイラとは正反対だ。

 そこで前世はどうしてたのかと考え、気付く。

 精霊魔法を使う者達は、心が綺麗な者がなると言われている。だから前世ではアイラの周りには騙す者はいなかったのだろうと結論付けた。


 そんなことを考えていると、アイラが目をキラキラさせてリュカの顔を覗き込みながら訊いてきた。


「で、リュカの知られたくない性癖ってなに?」

「……」


 アイラの心配をしているのに、当の本人は的外れな質問をしてくるため、リュカは色々な感情が入り交じりムッとする。そこへライアンが冗談で、


「アイラ、聞いてやるな。リュカだって言いたくないんだ」


 と水に油を注いだため、リュカのこめかみにピシっと青筋が入った。同時、魔法で2人の口を閉じさせる。


「んー!」

「んーんーんー!」


 案の定、声がでないとアイラとライアンはリュカに詰めより文句を言ってきた。だがリュカは、


「お前ら、うるさい」


 と一言で一掃する。これで少しは静かになるだろうと視線を外した矢先、


「ひどーい! だからって魔法で口封じするのは反則よ!」


 と話せないはずのアイラが反論してきた。リュカは驚きアイラへ視線を戻す。


「なぜ……」


 話せるのかと思って見れば、カミールが笑顔で手を上げている。カミールがリュカの魔法を外したようだ。


「カミール!」


 抗議の声を上げると、


「こんな楽しいもの、止めちゃだめでしょ」


 と飄々と言って退けた。するとライアンがさも悲しいと言った表情でまたもや揶揄する。


「リュカ、俺はお前のことを思って言ってやってるのに、ひどい仕打ちだなー」

「そうよ!」


 アイラもそうだと賛同する。ライアンの言う言葉と意味が全く違うのに変に噛み合っているのが面倒くさい。リュカは頭に手を置きながらアイラに言う。


「何がそうよだ。お前はしゃべるな」

「何でしゃべっちゃだめなのよ! リュカが性癖を気にしてるから心配してるんでしょ!」

「……」


 リュカは呆れた顔をアイラに向けていると、サラが苦笑しながら言う。


「アイラ、根本的に間違ってるわ」

「なにが?」

「リュカは性癖なんてないわよ。ライアンがからかってるだけよ」

「え……」


 アイラはライアンを見るとくつくつ肩を揺らして笑っている。そしてリュカを見ると、呆れた顔をして大袈裟にため息をついた。そんなリュカにアイラは、


「違うの?」


 と聞けば、


「お前はもうしゃべるな」


 と一蹴したのだった。




 冬休みも中盤にさしかかった頃、リュカはマティスに呼び出された。王宮へと来ると、いつものようにマティスの部屋へと行く。そして扉を開け、目の前の珍客に目を見開く。そこにはユーゴがいた。


「あっ……」

「やあ、リュカ君」


 ユーゴが笑顔で挨拶する。どういうことだとマティスを見れば、両手を合わせ「すまない」と謝ってきた。そこで理解する。


 ――団長に頼まれたんだな。


 ユーゴもこうと決めると思い通りになるまでとことんする。それがマティスであろうと国王であろうとだ。マティスの感じからして断り切れなかったんだろう。

 リュカは嘆息し訊く。


「俺に何か用ですか?」


 あからさまに嫌な顔を向けるが、ユーゴはまったく気にせず普通に笑顔で応える。


「うん。君に会いたかったんだけど、エタン君に頼んでもなかなか君に繋げてもらえなくてね」


 そこで、ああとリュカは納得する。エタンは何かを察してリュカをユーゴに会わせないようにしたのだ。

 エタンは『リュカ大好き人間』だ。昔からリュカに危害が及ぶと判断した者には絶対に会わせないようにしてきていたのだ。エタンの中でユーゴは危険人物と判断されたのだろう。


「そこでマティスに頼んだってことですね」

「うん。でも君に正直に言うと会ってもらえないと思ったから、殿下に僕がいることは黙ってもらったんだ。結果、君を騙すようなことをしてしまって悪かったね。謝るよ」

「そう思うなら、2度とこういうことは止めてください」

「うん。わかった」


 軽く承諾するユーゴに、絶対嘘だと心の中でリュカは突っ込む。前世でもそうだった。守られた試しがない。相変わらずだと嘆息し、もう一度訊く。


「で、俺に何の用ですか?」

「ちょっとね。ここではなんだから、一緒に来てくれないかなー。殿下、ご友人を借りますね」


 そしてユーゴが案内したのは、王宮から一番離れた魔術師団の練習場だった。皆魔術師団員が自主練習などをする場所だ。今も皆練習をしていた。リュカは懐かしく思う。


 ――懐かしい。よくここで練習したな。でもなぜここに?


「ブレッド」


 ユーゴがブレッドを呼ぶと、他の魔術師団員の者がユーゴに気づき、練習を止め頭を下げた。ブレッドもユーゴに一礼しリュカを見る。


「あ、君はリュカ君か」


 リュカも頭を下げる。


「ブレッド、あれはどうなった?」

「はい。用意してあります」


 何の話だと首を傾げていると、


「リュカ君、君にお願いがあるんだ」

「?」

「こっちに来てくれ」


 ユーゴは練習場の奥に置いてある直径1メートルの正方形の箱の前までつれて行く。


「魔晶箱?」

「よく分かったね。そうだ魔晶箱だ」






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