7 初めての女友達
アイラは2階にある自分のクラスへと向かいながら考える。
――なんでリュカ・ケイラーがこの学校にいたんだろう? あの人ランカル学園に行ってたはずよ? やっぱり私が進路を変更したから?
だが考えたところで答えが出るわけではないためそれ以上考えることはやめる。前回の人生でそうやって余計なことに首を突っ込み殺されたのだ。深追いなどしたところでいいことがないことは分かっている。
「考えるのはやめよう。今度の人生はマティス関連の人達とは関わらないと決めたんだから!」
そこで周りの風景に目が止まる。前回のAクラスの時とはまったく違う風景がそこにあった。
「なんか違う学校に来たみたい。まあそうよね。A・Bクラスは格別だったものね」
魔法学園のクラス編成は、A・Bクラスは皇族と貴族、そして成績優秀者で固められ、廊下や教室自体も普通の教室とは違い豪華絢爛な作りになっている。だがそれ以外のC・D・Eクラスは、成績順でCからEに振り分けられ、廊下や教室も一般的な作りになっていた。
――この学園も皇族や貴族の寄付などで運営されている。結局、貴族は優遇されるってことよね。でもそのおかげでマティスとは関わることがないからいいけど。
アイラは笑顔で廊下を歩く。誰もアイラに視線を向ける者はいない。前回の人生での3階の時は、貴族ではないアイラを軽蔑や嫌悪をするような視線を毎日のように浴びていた。そんな居心地が悪い視線はここにはない。
――なんて素敵なんだろう。
そこでふと笑顔の自分に気付く。
――そういえば私、最近よく笑ってるなー。王宮精霊魔法士の時では考えられないわね。
仕事が忙しかったのと、笑ってられない出来事が多かったからなのだが。
――これも新しい選択をしたからね。これからが楽しみだわ。
ウキウキしながらアイラは自分のクラスに入り、指定された席に着き周りを見渡す。
――部屋の作りも、机も椅子も2階とは全然違って普通ね。
キョロキョロしていると、後ろからポンポンと肩を叩かれた。
「ねえ」
振り向けば、ショートカットのボーイッシュな女性だった。
「私、サラ・クラッセン。あなたは?」
「あ、わ、私はアイラ・フェアリ」
なぜか緊張で声が裏返る。
「アイラね。よろしく。この辺じゃ見ない顔ね。ねえどこの出身?」
「ここからずっと北に行った場所のシルリカよ」
「へえ。遠くから来たのね。私は――」
ペラペラと話すサラにアイラは最初圧倒されるが、なぜか自然と打ち解け、途中からは笑顔で話せていた。そんな自分に気づき驚く。いきなり黙り呆然とするアイラにサラは首を傾げた。
「アイラ? どうしたの?」
「ご、ごめん。私、人見知りだし女友達が今までいなくて……。どう接していいのか分からなかったんだけど、今サラと普通に話せてるなーと思ったらびっくりしちゃって」
アイラは顔を赤くして正直に言う。そんなアイラにサラは一瞬目を丸くし、そしてふっと笑う。
「そっか。じゃあ私が初めての友達ね」
「え?」
アイラはサラを見る。
「友達?」
「そうよ。違うの?」
アイラは感極まり嬉しさでサラの手を握る。
「ありがとう! 私嬉しい!」
涙目で嬉しそうに言うアイラを見てサラは笑う。
「アイラ面白いわね。私も嬉しいわ」
そしてアイラの新しい生活が始まった。