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55 ユーゴへの説明



 その時だ。1人の人物が転移魔法で現れた。


「!」


 リュカとジンはその人物へと視線を向ける。

 そこにはユーゴがいた。

 ジンは目を眇める。


 ――やはり嗅ぎつけてきたか。


「ユーゴ先輩、どうしたんですか? 今日は講義の日じゃないですよね」


 何事もなかったようにいつもの感じでジンはユーゴに話しかけると、ユーゴも笑顔で毎日の挨拶をかわすようなテンションで返してきた。


「いやね。さっき異変を感じてね」

「異変ですか?」


 ジンは何も知らないていで首を傾げて見せる。


「うん。いきなり巨大な魔力を感じたから調べてみれば、誰かが空に浮いていてね。国全体を囲むように空に巨大な魔法陣が貼られていたんだ」


 やはり見られていたかとリュカとジンは表情は変えずに警戒する。


「様子を見ていたら、そのうち消えて、次に現れた場所がここだったんだよね」


 そしてユーゴはリュカを見て言う。


「どういうことか説明してくれないかなー。リュカ君」


 長年見てきたユーゴだ。もう何もかも分かっていて訊いているとリュカは確信する。


 ――やはり団長には誤魔化しはきかない。どう応える!


 逡巡していると、ジンが代わりに応えた。


「はあ。やっぱ先輩は気付いたかー。まあお願いしたいこともあったから手間が省けたからいいかー」


 頭をかきながらわざとらしく言うジンを見て、リュカはユーゴに隠すのではなく、言う方向にシフト変更したのだと理解する。


 ――確かに団長には知っていてもらったほうが後々やりやすいだろう。一般人の俺や先生では魔術玉の出所などを調べるには限界がある。それならば王宮に動いてもらったほうがいい。それに……。


 リュカは笑みを浮かべる。


 ――これは団長が興味を示す案件だしな。 


「お願いとは何かな?」

「『罪人の墓場』って知ってますよね?」

「! ああ」


 ユーゴの顔つきが変わった。やはり興味を持ったとリュカは口元を緩める。ジンもそうだ。ユーゴは興味があるものはとことん調べる性格だ。まさにこのような謎に包まれた案件は大好物なのだ。


 ――食いついた!


 ジンは心の中でガッツポーズをし、アイラへ視線を向け説明する。


「そこにうちの生徒のアイラ・フェアリが転移魔法で転移させられました」

「!」


 ユーゴは驚きリュカの横にいるアイラへ視線を向ける。


「そうなのかい?」

「はい」


 アイラは頷く。


「よく怪我もなく無事だったね」

「リュカが助けてくれたので」


 そこでリュカがなぜ探索魔法をしたのかを説明をする。


「アイラの場所を特定するために俺は国全体を探索魔法で探しました。そして見つけて向かった先が『罪人の墓場』と称される場所でした」


 そこでユーゴはある疑問が浮かび眉を潜める。


「なぜその場所が『罪人の墓場』だと? その場所は大昔に使われていた場所で、今ではどこにあるのか不明だったはずだが?」

「その場所は地下の洞窟にあり、沢山のバラバラになった白骨化した人間の死体と罪人が付ける首輪がありました。昔『罪人の墓場』の著書を読んだことがあります。その場所の特徴とそこに住む猛獣が酷似していたため、そう判断しました」


 しっかりと的確に説明するリュカにユーゴは驚き感心する。


「なるほど。君の話を聞く限りそこは『罪人の墓場』で間違いないだろう。で、そこの猛獣はどうしたのかな?」

「え?」


 不意な問いにリュカは目を瞬かせる。それに対しユーゴが補足した。


「その場所にはかなりの数の人食いヒルがいたはずだ」

「えっと……すべて焼き払いました……」


 それにはユーゴとジンは驚き目を瞠る。


「すべて?」

「あ、はい……」


 リュカは何かいけなかったのか眉根を寄せ不安になる。


「あの人食いヒルをねー。どうやって?」

「火魔法でです」

「なるほど。わかった」


 ユーゴは納得しそれ以上聞いてくることはなかった。するとジンが、


「先輩にお願いしたいのがこれです」


 と魔術玉を見せる。


「魔術玉?」

「はい。これに転移魔法が付与されてました」

「!」

「殺害を目的とした場所への転移魔法は100年以上前に禁止されているため、今ではその魔法を付与出来る者はいないはず。だが現にその魔法が付与されていた」

「それはあまりいい話じゃないね」


 ユーゴも眉を潜める。


「ですよね。誰かが『罪人の墓場』の場所を特定し、魔術玉に殺戮転移魔法を付与したことになります」

「元々その魔術玉がなぜ学園にあるんだい?」


 それに関してはリュカとジンもまだ分かっていないためアイラを見る。アイラはリゼットに魔術玉を探してほしいと探す場所を中庭と指定され、行ったら魔術玉があり発動したのだと3人に話した。

 アイラの話を聞いたジンが腕組みをして唸る。


「やはりリゼットだったか」

「じゃあその子に聞けば分かるのかな?」


 ユーゴが言うとジンは首を振る。


「でもたぶん彼女はしらを切ると思いますよ」

「だからと言ってこれは見過ごせない案件だ。たぶん彼女は軽い悪戯のつもりでアイラ君をはめたんだろうが、下手をすればアイラ君は命を落としていた」


 アイラはギュッと唇を噛む。今も思い出しただけで恐怖が押し寄せてくる。


「だけど、そのリゼット嬢はそれを知らずに購入したんだろうね。そして魔術玉を売った者は試作品を彼女に売ったんだろう」

「試作?」


 ジンが眉根を寄せる。


「ああ。たぶんこの作りだと魔法が発動した後、静電気のようにピリピリ電気が走り、触れなかったはずだ」


 ジンはそうだったと頷く。


「確かに触れなかったな」

「ちゃんとした物ならば、それを抑えるように作られているはずだ。だがこれは違う。だとするとちゃんと転移できるかを見るために作られた試作品の可能性が高いね」


 それを聞いてリュカもユーゴの見解に同意見だった。だから洞窟の中でアイラにも試作品だと説明したのだ。


「だとすると、本来これを誰かに使うために実験に使ったということになるよね」


 ユーゴの言葉にリュカは記憶を辿るが、前世でそのようなことがあったということは把握していない。まだこの頃は学生だったためリュカは知ることがなかったとしても、後にリュカの耳に入ってもいい重大案件だ。それなのに情報がないということは、前世ではこのことは魔術師団は把握してなかったのだろう。

 だが前世であった出来事は今世でも意識して変えない限り同じようになるものだ。だとしたら、今回は標的がアイラだっただけで、前世では他の者だった可能性が高く、実験は今回と同様、成功していたということになる。


 ――前世でも、ただばれていなかっただけで同じようなことが行われていたということか。


 それはマティスとアイラが殺害されたことと何か関係があるのかと考えていると、ユーゴが魔術玉をジンから受け取り話し始めたためリュカは考えるの止める。


「この件は僕に任せてもらおうかな。そのリゼット嬢にも話を聞きたいからね」

「ですね。王宮魔術師団の団長が聞いたほうがリゼットも素直に話すだろうし」

「確かにそうだね。でだ。ずっと気になっているんだけど」


 そう言ってユーゴはリュカを見る。


「リュカ君、さっきの探査魔法だけど、どこで教えてもらったのかな? あれは王宮の密偵部隊の十八番でね。君が知ることはまず無理なんだよねー」














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