4 叔父の反乱②
「そしてマティス、お前もこの場でケイラー魔術師団長に殺されるのだ」
「!」
リュカとマティスは目を見開き、その意味を理解する。
「そういうことか」
リュカは、止血が終ったマティスに「立てるか?」と声を掛け、立たせると自分の背に庇う。マティスはどうにか倒れそうになる体を踏ん張りブノアを睨み言う。
「この騒動の黒幕は叔父上、あなたでしたか」
ブノアはそれには答えず酷薄な笑みを浮かべ、右手をすっと挙げた。するとブノアの魔術師達が一斉に杖を構え、リュカへと魔法を繰り出した。刹那、リュカの体をいくつもの鎖が捲き付き拘束する。
「!」
リュカはすぐに外そうとするが、動けば動くほど鎖が体に食い込み、身動きが出来なくなった。
「くっ!」
――拘束魔法か。
「リュカ!」
するとブノアが笑みを浮かべながら言う。
「ケイラー魔術師団長、動かない方がいい。これはここにいる20人の魔術師全員で魔力を流している鎖を施している。さすがの君でもこの人数の魔力には対処出来ないだろう」
1人ではリュカには勝てないが、大勢ならば勝てると思ったようだ。
「なるほど。犯人を俺になすり付け、口封じのため俺をここで消そうという魂胆か」
「その通り。大魔術師の君も私の計画には邪魔だからね。あ、君の友達のあの女精霊魔法士も死んだみたいだな。あの者も大人しくしていればよかったものを。嗅ぎ回るから命を落とす羽目になるのだ」
「!」
リュカとマティスはぎっと睨む。
「叔父上、アイラまでも手に掛けたのですか!」
「なんだ? あの女精霊魔法士が死んだのがそんなに悲しかったか? だが喜ぶがいい。すぐに同じ場所に行けるぞ」
「あなたという人は! よくも父上とアイラを!」
目尻に涙を貯めながら怒りを爆発させるマティスにブノアは鼻で笑う。
「みっともない姿だなマティス。やはりお前もお前の父もこの国の王には向いていない。王の座は心配するな。私がしっかりとこの国を守ってやるからな」
「くっ!」
怒りが頂点に達するが、うまく言葉が出ず立っているのもしんどくなってきていた。そんなマティスをブノアはあざ笑う。
「毒が回ってきたようだな」
そこでマティスは、自分を刺した剣に毒が塗られていたことを知る。
「マティス大丈夫か?」
リュカが声をかける。
「ああ。体のだるさより怒りの方が勝っているから大丈夫だ」
マティスの返答にリュカは小さく「そうか」と笑う。
「ケイラー。余裕だな。今自分の置かれた状況を把握した方がいいぞ」
――呼び捨てか。
リュカはフッと笑う。
「ああ。よく分かっている。お前から色々聞き出すためにあえて動かないでいるだけだ」
ブノアは鼻で笑う。
「強がりも大概にして置いたほうがいいぞケイラー。こちらが有利には変わりないのだから。まずケイラーを始末しろ」
ブノアが命令を出す。だがそこでリュカの目がすうと座り魔力を爆発させた。
「強がりかどうか、よく見ておくんだな」
「!」
膨大な魔力と突き刺す眼差し、そして圧のある声音が、ブノアや魔術師達を恐怖で体を強ばらせ動けなくする。
「なめられたものだ。たかが20人の魔術師で俺を止めれると思われるとはな」
次の瞬間、鎖がパンと弾け飛ぶ。
「外された!」
「やはり大魔術師には俺らでは勝てないんだ……」
「バケモノだ!」
驚きと恐怖の声を上げ逃げ腰になる魔術師達は無視をし、リュカは後ろのマティスの肩を抱くと耳元で「逃げるぞ」とだけ告げその場から消えた。
「なっ!」
「転移魔法だと!」
だがもう遅い。2人の姿は城のどこにも見当たらなかった。
「まあいい。どうせマティスは助からない。放っておいても死ぬだろう」
ブノアは微笑み、そして言う。
「邪魔者は消えた。さあ新しい国王の誕生だ!」