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42 国守玉の浄②

菊理ひとみです。いつも読んでいただきありがとうございます。

優しい読者様に感謝です。

もう2024年も終わりですね。

最近はとても寒くなってきました。

インフルエンザも流行ってますね。どうかお体にはお気を付けください。

来年も、アイラ、リュカ共々よろしくお願いします。


3日に一度0時に投稿をしておりますが、たまに伸びたりします(^^;)

その時はすみません。

ではどうぞ!



 アイラは国守玉の前に来ると祈るように胸の前で手を合わせ目を瞑る。するとアイラの全身が淡い黄緑色に光り出した。同時、国守玉も金色に光り出す。その金色にリュカは見覚えがあった。ジンがリュカを拘束し額に手を当てた時と洞窟で浄化をした時と同じだ。


「もしかして先生がたまに見せる金色の光は国守玉の力ですか?」

「ああそうだ。俺の家系は国守玉の脚となり動く代わりに力を分け与えられているからな」


 そこで思う。


「じゃあ先生が国守玉の浄化をすればいいんじゃないですか?」

「そう思うだろ? 俺は国守玉から力をもらっている。そして国守玉に貯まっている不浄なものは国守玉が浄化出来ないものだ。国守玉が浄化出来ないものを国守玉から力をもらっている俺が出来るわけないだろ」


 言われて見ればそうだ。


「同調が始まったぞ」


 見ればアイラと国守玉の光りがお互い吸い寄せられ同調し始めた。


「今国守玉がアイラを受け入れたところだ。そして浄化が始まった」


 アイラの顔は苦痛に歪んでいた。


「苦しそうだな」

「アイラは聖女じゃないからな。国守玉の魔力は神力に近い。聖女に選ばれた者はその神力に堪える力を持って生まれる。だから国守玉と同調しても拒絶はしない。だがアイラは違う。ただ国守玉がアイラを気に入っているため、国守玉がアイラに合わせて同調している。だがそれも限度がある。どうしても力が強い国守玉の魔力に引っ張られる。だからアイラは今、不浄の物と国守玉の魔力で体中が拒否反応を起こし、苦痛と気持さに見舞われているだろうな」


 ジンの説明を聞いてその通りだろうとリュカも感じる。今離れた所から見ているリュカでさえもあまりいい気分じゃないからだ。

 アイラといえば、ジンの言う通り全身が気持ち悪く、国守玉の不浄なものをすべて体に取り込んでいるため、酷いめまいと吐き気に見舞われていた。


 ――き、きつい。


 前世の精霊魔法士の時とは比べものにならないほどのつらい状況だ。その理由は今自分は学生で、まだ未熟だからだろうと分析する。


 ――経験と魔力の質は上がってるけど、やはり体はそのままだからきつい。


 その後30分ほど浄化は行われた。あと少しという時だ。ふとアイラの周りの音が消え、周りが暗闇と化した。


「え?」


 アイラは驚く。


 ――どうなってるの?


 すると暗闇の中に大きく青白く光る1本の木が目の前に現れた。葉もすべて白く光り、小さな粒が空へと上がっていっている。そして丸い光る球体が実のように幹にぶら下がり、カランカランと不思議な音色を奏でていた。


「綺麗……」


 アイラはただその神秘的な光景に魅入る。どれだけ見ていただろう。気付けば目の前の木の根元に少年が1人立っていた。


「え? 子供?」


 だが人間ではないことはすぐに分かった。幽霊でもない。


 ――精霊?


 アイラは子供へと歩み寄る。


「こんにちは。君は?」


 すると子供はただ微笑み、一言言った。


「やっと会えた」




 次の瞬間、バッと目が覚める。


 ――夢?……。


 そして見たことがない天井が最初に目に入り、今自分はベッドに寝ていることに気付く。


 ――ここはどこだろう。


 そこで意識がはっきりしてくると同時に国守玉の浄化をしていたことを思い出す。すると近くで声がした。


「起きたか?」


 声がする方――横を見れば、リュカだ。


「リュカ? 国守玉の浄化は? あとここはどこ?」

「それより気分は?」

「え? ちょっとだるいぐらい」

「そうか……。ならよかった」


 リュカは安堵のため息をつく。


「まずここはジン先生の家だ。そして国守玉の浄化はすべて綺麗に終った」


 それを聞いてアイラもよかったと安堵する。


「で、なんで私、先生の家のベッドに寝てるの?」

「覚えてないのか? お前は最後いきなり倒れたんだよ」

「え……」

「そして丸1日ここで寝ていたんだ」

「!」


 まさか1日経っているとは思わなかったアイラは驚く。


「目を覚ましてよかった。このまま覚めなかったらと思ったら俺も先生も気が気ではなかった」


 そう言いながら安堵の顔を見せるリュカに、アイラは心配してくれたのだと申し訳なく思う。


「先生は?」

「もう来るだろうよ。気付いたら連絡が入る魔法をかけてたからな」


 するとドタバタと走ってくる音がし、いきなり扉が開かれた。


「アイラ! 起きたか!」


 やはりジンだ。


「もう少し静かに入って来てくれませんか」


 リュカが呆れ顔でジンに言うとジンは、「悪い」とだけ応えアイラの元へと来る。


「大丈夫か?」

「あ、はい。ご心配かけました」

「いや、気にするな」


 そしてジンはその場にしゃがみ頭に両手を当てる。


「はあーよかったー。もうどうなるかとヒヤヒヤしたぜ」

「すみません。なんか倒れたみたいで」


 アイラはヘラヘラ笑いながら言うと、ジンは真顔になり立ち上がると顔を乗り出しアイラに訊ねる。


「アイラ、お前、最後どこに行った?」

「え?」

「浄化が終る寸前、お前の意識はどこかに飛ばされたはずだ」

「!」


 アイラは驚きジンを見る。リュカは事前にジンから聞いていたため、アイラがどう応えるのかじっと見守る。

 浄化がもうすぐ終ると思った時、ジンはアイラの魂が国守玉に吸い込まれる感覚がした。バッとアイラを見れば、やはりアイラの体はすうっと横に倒れるところだった。すぐにリュカが抱き止め床にぶつけることはなかったが、その後何度もアイラを呼び起こそうしたが起きなかったのだ。


「お前は息はしていて眠っている感じだったが、どれだけ呼んでも、どれだけ刺激を与えても起きなかった」


 そこでなぜ頬に湿布が貼られジンジン痛いのかが分かった。ジンが頬を叩いたからだろう。


「その時お前は何を見ていた?」


 アイラは、真っ暗な空間に青白く光る大きな木の場所に飛ばされ、そして男の子が現れ「やっと会えた」と言われたこと。そしてその瞬間目が覚めたことを話す。

 それを聞いたジンは「やはりな」と呟く。


「たぶんお前は国守玉の意識の中に入ったのだろう」

「国守玉の意識?」

「ああ。お前は国守玉に気に入られているからな」

「え? 私が気に入られている?」

「ああ。お前が今こうして生きていることが証拠だ」


 それは国守玉がアイラの時を戻したことを言っているのだとリュカは理解する。

 そして思う。


 ――前世でアイラが殺されたことで国守玉は浄化がうまく出来なくなり国が滅びへと向かったと思っていたが、違うのかもしれない。


 今ならわかる。国守玉の浄化は時間はかかるが精霊魔法士がいればある程度出来たはずなのだ。それなのに滅びへと向かった。それはアイラが殺されたことを国守玉が怒り、浄化を拒否したからなのではないかと。そう考えれば、色々なことが腑に落ちるのだ。


「たぶんお前は国守玉の中に招かれたんだろう」

「そこにいた男の子は?」

「それはわからん。今まで国守玉の中に入った者を聞いたことがないからな。だが状況からして国守玉の意識体なのかもしれないな」

「意識体……」

「ああ」

「だとしたらなぜやっと会えたと言ったのだろうか……」


 そこが分からない。

 考え込むアイラを見てジンは言う。


「そのうち分かるだろうよ。だからあまり気にするな」

「はい……」

「まずお前はここでゆっくり休め。ここは俺しかいない。だから気にするな」

「え? 悪いので帰ります」


 アイラは慌てて起き上がろうとするが、


「あれ、起きれない……」


 体が鉛のように重く起きることが出来なかった。


「あれだけの浄化をしたんだ。体が悲鳴を上げてるんだよ。今日1日はたぶん動けないだろう。だからここでゆっくり休め。俺は今から出かけなくちゃいけない。だからお前の世話はリュカに頼んである」

「え?」


 アイラはリュカを見る。


「今日、明日は学校も休みでやることもないから気にするな」

「でも……」


 休みだからと言ってリュカに世話をしてもらうのは気が引ける。


「動けないのに、トイレとかどうするんだ?」


 確かにそうだとアイラは思う。今も本当はトイレに行きたくて仕方がない。


「俺なら魔法で動かせるからな」


 そう言うとアイラの体を浮かせる。


「わっ!」


 驚き声を上げる。


「ということで、リュカ、アイラを頼むな。夕方には帰る」


 そう言ってジンは出て行った。すると浮いたままのアイラがリュカを呼ぶ


「リュカ」

「ん?」


 降ろしてくれと言うのかと思いきや、


「……トイレ」


 と恥ずかしそうに言う。リュカはフッと笑うと、


「了解」


 と言って、アイラを魔法でトイレに運んだ。






少しでもよかったらブックマーク、いいねなどよろしくお願いします。

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