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41 国守玉の浄化①

菊理ひとみです。

こちらを見つけていただきありがとうございます。

もし少しでも気になるなーと思ったら、ブックマーク、いいねをしていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします(^^)

では、どうぞ!




 国守玉の部屋の前にジン達はやって来た。魔獣を倒したからだろう、地震も収まり嫌な気配がなくなったからか今はもう警備の者2人が元の配置に戻り国守玉の入口を守っていた。

 ジンは近くにいた警備の魔術師団員に訊ねる。


「マシュー・メレス魔術師副団長はおられるか?」

「おまえ達は?」


 怪訝な顔を団員2人は見せる。そりゃそうだろう。見たことがない白い服を着て鼻と口をバンダナで隠したジンに、後ろにはフードを深く被り同じくバンダナで鼻と口を隠したアイラとリュカがいるのだ。どうみても怪しいとしか思えない。

 ジンは胸元から国王の許可証のペンダントを見せて言う。


「ベレスと言っていただければわかります」

「!」


 国王の許可証はどこでも入れることが出来る証だ。だが誰でも持てる物ではない。国王が特別な者と認定した者のみ持つことが出来る特別な証なのだ。それを見せたジンは特別な人物なのだと理解した団員はすぐさまマシューを呼びに行った。


「マシュー副団長は先生が『国守玉の脚』だと知っているんですか?」


 リュカが小声で訊ねる。


「ああ。俺が『国守玉の脚』だということは、国王と側近の一部の者、そして魔術師団長のユーゴ先輩とブレッド副団長とマシュー副団長、そしてイライザ精霊魔法士長は知ってるな。それに、俺は元魔術師団員だ。だからマシュー副団長はよーく知ってるんだなー」


 そう言えばそんなことをユーゴが前世で言っていたことを思い出す。

 するとマシューがやって来た。


「ジンか」

「お久しぶりっす」

「何しに来た?」


 不機嫌そうに言うマシューにジンは片方の眉をあげて言う。


「この場所で俺のこの格好を見て、それ聞きます?」

「……」


 王宮に『国守玉の脚』の者が隠密で来ることがあっても身分を公にして来ることはほとんどない。あるとすれば今回のように何か問題が起きた時だけだ。そのためジンが身分を公にして来たということは、国守玉に問題が起きたということを示していた。


「なにが起きているか知っているのか?」

「え? 分からなかったんですか?」


 ジンはわざと訊ねる。


「魔力と姿を消す魔獣がいたんですよ。気付きませんでした?」

「!」


 マシューは目を見開き驚く。


 ――分団長の言っていたことは正しかったのか!


「き、気付いていたに決まっているだろう。それを今探していたところだ」


 それを聞いたリュカは目を細める。


 ――分団長の言うことを信じてなかっただろ。


 ジンもマシューが嘘を言っていることは分かっていた。


 ――相変わらずのクズだな。


「そうですか。あ、魔獣はさっき『国守玉の脚』の俺が倒したのでご心配なく」


 その言葉に後ろにいたリュカとアイラは「は?」と言う顔をジンに向ける。


 ――倒したの、俺だけど。

 ――倒したの、リュカだけど。


 そんな視線を向けられていることに気付かずジンは話を続ける。


「後はこの国守玉の浄化をしなくてはなりません。ですから魔術師団の人達を部屋から出してください」


 するとマシューはアイラとリュカへと視線を向ける。


「その者達は?」

「俺の部下です。顔は見せれませんからフードを被ってます」


 『国守玉の脚』の者は極力他人に顔も職も知られてはいけない存在だ。そのためリュカとアイラが顔を隠していることはごく普通のことだった。


「国守玉の浄化もお前が出来るのか?」

「ええ」


 それを聞いたリュカとアイラは「嘘だ」と内心突っ込む。


「分かった。あとこのことは団長には言うなよ」

「なぜです?」

「迷惑をかけたくないだけだ」


 ――よく言うよ。ただ自分の失態を知られたくないだけだろ。だがまあ俺も知られたくないけどな。


「仕方ないですね。言わないでおきましょう。さあ早く出て行ってください」

「くっ!」


 マシューはその場にいた魔術師団員全員にジン達は国守玉の定期点検だと説明し、今から調整するため外に出るように言う。そして部屋を出ていく時に、


「調子に乗るなよジン。お前が有利に立てるのはこの場所だけだと覚えとけ」


 と捨て台詞を言って出て行った。それを見たリュカとアイラは言う。


「嫌われてるな」

「ほんとに」


 ジンはフンと鼻を鳴らす。


「大丈夫だ。俺もあいつは嫌いだ。実力もないのに上に立ち有意義な気分を味わいたいだけのクズだからな」


 的を得た発言に2人は苦笑する。


「さあ、ちゃっちゃとやっちまうぞ。アイラ、国守玉の浄化しろ」

「あ、はい……」


 そう応えながらリュカをチラチラと窺うように見る。


「なに?」


 リュカが訊ねると、


「あ、いや、私が国守玉を浄化することをなんとも思わないのかなーと思って……」


 そこでリュカとジンは、リュカがアイラが時を戻ったことを知らないのだと気付く。


「お前は精霊魔法が使えるんだ。国守玉を浄化出来るのは普通じゃないのか?」

「う、ううん。あってる!」


 アイラは笑顔で応えると、リュカも微笑む。


「じゃあやってくる」


 そう言ってアイラは国守玉へと1人で向かった。


「うまく言ったじゃないか」


 ジンはリュカの脇を肘で突きながら言う。


「別に本当のことを言っただけですけど?」


 するとジンが目を瞬かせる。


「おまえ、知らないのか?」

「? 何がです?」

「国守玉の浄化は普通の浄化じゃない。国守玉と1度同調する。そのやり方は王宮の精霊魔法士しか知らないんだ」

「!」


 リュカは初めて聞く話だった。

 前世では、偽聖女のソフィアが浄化をする時、一種の恒例行事であったため、いつもマティスと一緒に立ち会っていた。だからアイラ達精霊魔法士がその後、国守玉を浄化していたことは見たこともなく知らなかったのだ。


「知りませんでした」

「そうか。まあ知らなくてよかったな。お前は学生だから本当の国守玉の浄化の仕方を知らないからの言葉だとアイラも理解したはずだ」


 そしてジンはアイラへと視線を向ける。


「じゃあ良い機会だ。よく見とけ。アイラがするのが本来の国守玉の浄化だ」


 そう言ってジンは今から楽しいことが始まるかのようなわくわくした表情を見せる。リュカもアイラへと視線を向けると、ちょうどアイラが浄化を始めるところだった。


 ――国守玉の浄化か。


 アイラが本格的に使う精霊魔法を見るのは、マティスの発作を治した時以来2回目だ。


 ――この浄化をあいつはどう思っているのだろうか。


 今世ではアイラは精霊魔法士にはならないと決めている。マティスの発作を治すのは個人的なことだとして、今アイラがしようとしていることは精霊魔法士の仕事なのだ。


 ――したくないとは思わないだろうか。


 だがすぐにその考えが浮かんだ自分を鼻で笑う。


 ――余計なお世話か。それにあいつにはこの状態でそのようなくだらない考えを持つことはまずあり得ないな。ただ国守玉を助けたいと思っているだけだろう。あいつはそういうやつだ。


 そして願う。


 ――頑張れアイラ。










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