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26 ユーゴの授業



 アイラのEクラスでユーゴの授業が始まった。


 ――教科書と魔術玉借りれてよかったー。


 アイラは教科書と魔術玉を机の上に出しほっとする。

 ユーゴの説明が始まり、少し経つと後ろの席のサラがアイラの背中を突き小声で言ってきた。


「これ、絶対A・Bクラス向けの授業だわ」


 その通りだとアイラも苦笑する。

 ユーゴの授業は基本というより応用的な内容だ。話している内容も、所々専門用語が出てきてEクラスの者達には理解不能だろうと思う箇所が多々あった。アイラもあまり分からないが、元王宮精霊魔法士だったこともあり、なんとなくユーゴが言いたいことはわかった。


「じゃあ、ここからは魔術玉を使っての練習をしようか」


 ユーゴは魔術玉の説明をする。


「魔術玉はその丸い魔石に使いたい魔法を1つだけ付与でき、誰でも魔法を使えるようにする便利な魔道具だ。とても実用的で幅広く使われているから君達もそこは説明しなくても分かっているね」


 魔術玉は料理道具や玩具、そして武器として多彩な使い道があり、世間一般で普通に普及しているポピュラーな物だ。値段も形や用途、そして付与する魔法の強さなどで変わりピンキリだ。

 そして今日授業で使う魔術玉は、学校専用に作られた練習用の特注の物で、魔法を具現化する魔法が付与してあるものだ。


「説明はこの辺にして、実戦でやってみよう。まずイメージしたものを具現化する練習だ。魔術はイメージが大事だからね。ではまず光の玉を作ってみるよ。イメージしながら魔術玉に魔力を注ぎ込んでみよう。でもただ光の玉を作ればいいというものじゃない。どれだけ光が小さく強い玉が出来るかが重要だ。簡単そうでけっこう難しいんだ。さあやってみようか」


 生徒は言われた通り魔術玉へと魔力を注ぎ込み始めた。すると、


 パリーン!


 魔術玉が割れる者が数名出てきた。


「言い忘れたが、ただ大量の魔力を注ぐだけだと魔術玉は割れるからね。質が重要なんだ。だから気をつけてくれ。割れた者は新しい魔術玉を渡すから取りに来るように」


 説明を聞いてアイラは焦る。


 ――やばい。私まだ制御がうまく出来ない。


 制御は今リュカから習っているところだ。まだほとんど出来ていない。


「出来た」


 後ろのサラの声が聞こえ振り向いて見れば、綺麗な直径5㎝ほどの光り玉が出来ていた。


「すごいサラ」


 感嘆の声を上げると、


「ほう、うまく出来たな」


 ユーゴがやって来てサラの光り玉を見る。


「色もなかなかいいじゃないか。君、才能あるよ」

「ありがとうございます」


 サラは笑顔で応えた。


「私も負けてられないわ」


 アイラも前を向いて魔力を注ぎ込む。だがやはり制御が出来ず大量の魔力を注ぎ込んでしまった。


 ――しまった!


 割れると思ったが、魔術玉は割れずに30㎝ほどの白い光り玉とは言いがたいものが出来た。それを見ていたユーゴは苦笑する。


「んー、これは光り玉とは言いがたいなー。それに魔力を注ぎ過ぎだね。もっと質のいいものにしてみよう」

「はい」

「それより君、この魔術玉は君のかい?」

「え?」


 アイラは驚きユーゴを見る。


「い、いえ。忘れたので友達から借りました」

「なるほど。その友達はAクラスの子かい?」

「? あ、はい」

「そうか。あ、別に忘れたことを責めてるわけじゃないから気にしないで。さあがんばりたまえ」

「はい……」


 ユーゴはアイラの頭に手を当てるとそのまま去って入った。


「? なんだったんだろう。まあいいや。がんばろう!」


 ユーゴは笑顔を見せる。


 ――あれは、あのリュカという子の魔術玉だな。強化されている。


 アイラが膨大な魔力を注ぎ込んだ時、ユーゴは魔術玉は堪えられなくなり割れると思った。だが魔術玉は割れなかった。ヒビも入らずだ。それはあの魔術玉が強化されているということを意味していた。


 ――あんな芸当まで出来るのか。プロ並みだね。ますます興味深い。


 そしてアイラへと視線を向ける。


 ――で、あの子がイライザが言っていた子だね。魔力に精霊魔法が混じっている。精霊魔法を魔力に変換してやっているのか。凄いな。でもまだまだだね。まだやり方を教わったばかりかな。


 そこでジンを思い出す。


 ――教えたのはジンかな。珍しいな、ジンが人に教えるなんて。


 まずジンは人とあまり深く関わらない。それは家系の問題だと言っていたことを思い出す。


 ――精霊魔法が使えてジンが関与しているとなると、国守玉こくしゅぎょく関連なのかな。


 だが理由までは分からない。ジンに聞いても教えてくれないだろう。はぐらかされるのが目に見えている。


 ――興味がますます沸くねー。僕の気になる子とイライザが気になる子が友達で、ジンが関与している。何かありそうだね。


 含み笑いをするユーゴを見て、補助役で来ていた副団長のブレットは目を眇める。


 ――団長、また何か見つけた顔をしている。お願いだから何もしないでくださいよ。


 ただ祈るブレットだった。




 昼休憩の時、アイラとサラはいつものように食堂へと行くと、ライアンとカミールがやって来た。アイラは2人に言う。


「ちょっと、あなた達今登校したでしょ」

「朝からいたぞ」


 ライアンが応える。


「うそ! 私、一時間目が終ってからAクラスに行ったけど、あなた達まだ来てないって言ってたわ」

「あ、ばれたか」


 悪びれることもなく言うライアンにサラは嘆息する。


「相変わらずね」

「でも何しに来たんだ?」


 アイラは教科書と魔術玉を借りに行ったことを言う。


「そっか。それは悪かったね」


 カミールが申し訳なさそうに言うのをアイラは首を振り大丈夫だと笑う。


「リュカに借りたから」

「リュカ? ああ、あの根暗なやつな」

「根暗って……」


 アイラは苦笑する。リュカは確かに無口ではあるが根暗ではない。ちょっと人見知りだから余計にそう見えるが慣れればちゃんと話すし笑う。そして見た目とは正反対に優しく、アイラのことをよく考えてくれるいいやつだ。


「リュカはああ見えて根暗じゃないわ」

「そうか? あいつが笑ったところ見たことないぞ」

「人見知りなだけよ。仲良くなれば笑うわ。それにすごく優しくていいやつよ」

「へえ。そうなんだ」

「ほんとよ! そりゃあリュカは顔だけ見れば、性格もきつそうでちょっと根暗に見えるかもしれないけど、」


「誰が性格がきつそうで根暗だ?」


 後ろから声がしてアイラは「え?」と後ろを振り向く。そこには不機嫌そうに目を細めて見下ろしているリュカがいた。












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