1 牢屋の中で①
――なぜこうなった?
今、アイラの胸には一本の剣が胸に刺さり体は冷たい地面に横たわっていた。そして大量の血が地面に広がっていく。
――ああ、死ぬのか……。
自分の人生が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。これが死に際に見るものか。
産まれた時から精霊が見え精霊魔法を使うことが出来た。それが普通のことだと思っていたが、魔法学校に通うようになって普通でないことに気付いた。
精霊魔法は誰でも使える魔法ではなく、忽然と現れる稀な魔法。そのため使える者は数少なく貴重で、国にとってなくてはならない存在のため、精霊魔法を使える者は必然と王宮で働くことが義務づけられていた。
だからアイラも意思とは関係なく、小さい頃から精霊魔法士になるために勉強し、必然と王宮で働くようになった。
王宮で働くようになり5年という早さで精霊魔法士の長となった。理由は一番力が強かったからだ。
そして王宮には聖女が1人いた。
聖女は、生まれた場所、年齢、背格好、容姿などの特徴などが神託で示され、すべての項目に当てはまった者が聖女に選ばれる。そして今回選ばれたのがアイラと同い年のソフィア・グレイデンだった。
だがアイラはずっとソフィアが聖女だということに疑問を感じていた。
そしてアイラが精霊魔法士長になり聖女と関わることが多くなったことで、それは確信へと変わった。だがすべての条件がそろっていて神託もあるため誰もアイラの言うことを信用しなかった。
納得がいかないアイラはどうにか真相を突き詰めようと動いた。
その行動がまずかった。
それからまもなく国王殺害未遂が起きた。
犯人グループは全員捕まり、なぜかアイラはその仲間で主犯格だとされた。
アイラは否定するが、確たる証拠が次から次へと出てきて逃れようがなかった。
そう、アイラは何者かにはめられたのだ。
精霊魔法士の仲間や友達の皇太子は違うと声をあげてくれたが、アイラの罪が覆すことはなかった。
そして、地下の牢屋で過ごす日々が1ヶ月過ぎた頃、城内が騒がしくなった。内容は分からないが、何かが地上で起こっていることだけは明らかだった。
アイラの見張りの兵士も慌ただしく地上へ上がって行く。やはり何か大変なことが起こったようだ。だがアイラが知ることは出来ない。
すると、ソフィアがやって来た。
このタイミングで何しに来たのか?
聞けば、アイラが心配で少しでも元気になるようにとクッキーと紅茶を持ってやって来たと言うではないか。
大いに怪しかった。
地上で何か大変なことが起こっているにも関わらず、呑気にお茶とお菓子を持ってくるのはまずあり得ない行動だ。何が起こっているのかソフィアに尋ねるが、返って来る言葉は「何も心配ない」の一点張りだった。
何もないはずはないのだ。現に見張りの兵士も戻ってこない。
アイラは苛つき、ソフィアに大声で問い詰めた。
すると背後に誰かの気配を感じた瞬間、背中に痛みが走ったと同時に鳩尾から剣先が現れた。