18 国守玉の脚
「さあ、ここに入った技術といい、色々教えてもらおうか? リュカ」
「……」
リュカはどう応えればいいか考える。前回の時にユーゴからジンの能力のことを聞いていたのだ。だが正直に言えるわけがない。もしかしたらジンは敵かも知れないのだ。
そんなリュカにジンは言う。
「俺の家系は特殊なんだ」
「?」
いきなり何の話かとリュカは眉を潜める。
「国には必ず国守玉がある。それは国の繁栄と神からの神託を受けるためだ。それは小学校で習うから知ってるな」
「はい」
「だがそれだけじゃねえ。あと何がある?」
「魔術師が使う魔力とその正反対の魔力である精霊が使う魔力の均衡を保つためです」
「そうだ。相反する2つの魔力が均衡を保つことでこの世界は良い状態を保っている。もし片方の魔力が強くなれば均衡は崩れその国は衰退する。魔術師が使う魔力が弱くなれば、精霊達が暴走し、大地の植物が急激に成長し大地の栄養をすべて根こそぎ奪い、終いには地は枯れ砂漠化とする。精霊魔法の魔力が弱まっても同じ。精霊がいなくなるということだからな。植物は枯れ天変地異が起き、再生不可能となりその国は終わる。だがこのことを現代の人間はあまり深刻に考えていない。それはなぜか? 2つの魔力が無くなることはないと思っているからだ」
確かのそうだったとリュカも思う。自分もそうだったからだ。
「なぜそう思っているのか? それはみな、国守玉があれば均衡はいつまでも保たれると勘違いをしているからだ。だがそれは大きな間違いだ。国守玉が力を使う度に不浄の物をどんどん貯めていく。それを聖女と呼ばれる浄化に優れている者と精霊魔法士が定期的に浄化しているから国守玉は良い状態を保つことができ、均衡を保つために力を使えているんだ」
そこまで聞いてリュカは思う。
――そうだ。前の人生ではソフィアが偽物の聖女だったため、正常な浄化が出来ず、それを補っていたのがアイラ・フェアリだった。そして彼女が殺されたことで国守玉は正常の状態を保つことが出来なくなり、国が滅びへと進んでいったんだ。
「その『国守玉の脚』が俺の家系だ」
「え?」
初めて聞く言葉にリュカは目を瞬かせる。
「まあこれは国の極秘事項で、ほとんどの者は知らないことだからな。『脚』というより『駒』と言った方がいいかもな」
「それはどういうものなんですか?」
「簡単に言えば、国守玉の意思を聞き、動く駒みたいなもんだ」
「動く駒?」
どういうことだと眉を潜めれば、ジンは肩を窄め苦笑する。
「そう言う反応になるよなー。俺も最初親から聞いた時はそういう反応だったからなー。まあ国守玉の意思を聞けるわけじゃなく、そのように動かされると言った方がいいな」
そしてジンは笑顔を消す。
「ここからが本題だ」
「?」
「お前のその異様なほどの魔力と普通の学生では習得が無理な高位な魔法技術。そして俺の能力を知っているという不可思議なこと。このタイミングで今この場所に現れたという事実を考慮すると、ある1つの答えしか行き着かない」
そう言いながらジンの全身が金色く光る。刹那、リュカの体が硬直し身動き出来なくなった。
「!」
どうにか外そうとするが外すことも動かすことも出来ない。そして魔力を使うことも出来ない状態に驚く。
――なんだこれは! 魔法じゃない!
リュカの反応にジンは言う。
「気付いたか? これは魔法じゃねえ。俺の家系の能力だ。そしてどれだけ強い魔術師でも外せない」
そう言いながらジンはリュカの額に手を当てる。
「悪いが読ませてもらう」
「!」




