155 遺言書
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度朝6時頃更新という短いスパンです。 たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと除いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
「先生のばか!」
アイラがジンに抱きついてきた。
「ア、アイラ?」
驚き声を上げるジンにアイラはただ、
「よかったー! 本当によかったー!」
と大声で泣いた。
アイラは治療しながら、ジンがこのまま死んでしまったらどうしようかという思いでいっぱいだった。経験上頭では助かるとはわかっているが、それは前世の話であり、今世では違うかもしれないため絶対とは言えない。もしかしたら自分の感覚が間違っているかもしれないのだ。だからジンが目を覚ますまでアイラは不安で仕方なかった。
治療している時は、前世からの癖で仕事モードの時は感情は二の次になっている。だがジンが目を覚ましたことで、いつものアイラに戻り、安心と不安だった感情がどっと押し寄せ、収拾が付かなくなり涙がとめどなく流れたのだ。
「このまま死んじゃうかと思ったんだからー!」
わんわん泣きながら文句を言い抱きつくアイラにジンは、
「悪かったな」
と笑顔でアイラの頭をよしよししながら謝った。
「ほんと、わかっていたけど、止めてください」
リュカも安堵の笑顔で文句を言う。数日前にジンから聞いて分かっていたが、やはりジンが目を開けるまでは気が気ではなかった。
【数日前】
ジンはリュカに赤竜の竜柱の体奪還と解除の流れを説明した後、
「一番の厄介は竜柱が無くなった後の魔穴の穴を塞ぐ作業だ」
と説明した。
「『国守玉の肢体』の比ではないほどの大きさの魔穴だ。それを短時間で閉じなくてはならない。そうなると、俺1人では無理だろう」
「じゃあどうするのです?」
魔穴を閉じれるのは『国守玉の脚』の者のみだ。リュカでは魔穴を破壊することは出来ても閉じることは出来ない。穴を一時的に塞ぎ封印することは出来たとしても、次元が違う場所の封印は一時的なものなのだ。
「その時はたぶん国守玉が力を貸してくれるだろう」
「国守玉が自ら閉じるのではなくてですか?」
「ああ。国守玉は力はある程度は使えるが、最大限に使うためにはこの地上のものの媒体がなければ無理なんだ。『国守玉の肢体』の場所の浄化が完璧に出来ていない理由はそういうことだ」
確かに定期的にジン達『国守玉の脚』が浄化や討伐をしている。それはそういう理由があったようだ。
「国守玉が力を貸してくれた場合、先生はどうなりますか?」
リュカが今まで目にした、ジンやアイラが国守玉の浄化や黄竜の竜柱の浄化をした後、倒れていたことを考えれば、何事もないことは考えられない。ましてやジンは媒体と言った。それはジンの体を使ってということだ。ならば何かしら影響があってもおかしくはないはずだ。
「さすが察しがいいな。俺も初めてだからな。どうなるか分からねえが、たぶん大事にはなるだろうな」
「!」
ジンは軽い感じで笑いながら言うが、笑って済まされることでは決してないことは明らかだ。だからリュカは真剣な表情で訊ねる。
「それは命に関わることですか?」
リュカの固い表情で冗談は通じないと思ったジンは、笑顔を消し真面目に応える。
「それはわからん。だが覚悟はしているつもりだ」
そして右手の人差し指と中指を出し、下から上へとふっと線を書くような仕草をする。すると、リュカの前の空間に光の字が浮かび上がった。それはまさしく遺言書の魔法書だった。
遺言書は魔法書で書かれる。そして本人が亡くなった時に相続する者が開けて中を確認出来るようになっているのだ。
そこにはリュカの名前が書いてあった。ジンからリュカのための遺言書だ。
「もし俺に何かあった時は、『国守玉の脚』の継承権はすべてお前に譲る。その中身は『国守玉の脚』としてのノウハウがすべて収まっている」
リュカの目の前に浮かび上がっている光の文字も、まさにジンが言ったことがそのまま書かれていた。
「先生には確か妹さんがいて、お子さんがいたのでは?」
「ああ、息子が1人いることはいるが、あまり魔力は強くないからな。今は確実に後継者になるであろうお前に託した方がいい」
「っていうか、俺はまだやるとは言ってませんが?」
「そうだったか?」
ぼけて見せるジンにリュカは嘆息し、
「保険として受け取っておきます」
と言って遺言書の魔法書を受け取ったのだった。
数日前のジンとのやり取りを思い出しながらリュカはもらった遺言書の魔法書を出現させる。
「先生、もうこれは必要なくなったので、消します」
そう言うと、魔法で魔法書を一瞬で燃やした。
「あー! お前! 何燃やしてるんだよ!」
「必要ないでしょ」
冷たく言うリュカにジンは指を指して叫ぶ。
「お前なー、それ作成するのにいくらかかったと思ってるんだよ! すげえ高いんだぞ! それに簡単に燃やせる代物じゃねえんだぞ! 何簡単に燃やしてるんだ!」
遺言書の魔法書は、不正を防ぐために何重もの複雑な魔法がかけられており、普通は解除することは出来ないようになっているのだ。それをいとも簡単に解いてしまい燃やしてしまったリュカは、規格外であり相当な力の持ち主だということだ。
「じゃあもう死ななければいいんですよ」
ムッとしそっぽをむくリュカにジンは嘆息し肩を丸める。
「おまえなー」
「ほんと、やめてください……。こんな物、二度ともらいたくありません」
「……」
今にも泣きそうな顔をするリュカにジンは何も言えなくなる。
「こんな思いはしたくないです」
訴えるように言い下を向いたリュカにジンはふっと笑い、頭に手を置き、「分かったよ。悪かったな」と言って髪の毛をぐちゃぐちゃにする。一応リュカの中では自分は必要な存在のようだ。
――最初に会った時の、誰も信用せず必要としていなかったリュカとは大違いだな。
そう思うと嬉しく思う。
「まあ、先生が歳とって動けなくなったら、遺言書をもらってあげます」
「そんな時まで俺を働かせる気かよ!」
そこで笑いが起きたのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも良かったと思っていただけましたら、ブックマーク、いいねボタンの方よろしくお願いします。
とても励みになります。
これからもよろしくお願いします(_ _)




