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15 教師にばれる②



「お前……『黄泉よみがえりしゃ』か?」

「?」


 声が小さすぎてうまく聞き取れず聞き返そうとした時だ。次にジンが発した言葉にアイラは脳天を直撃させるほどの衝撃を受ける。


「いや違うな。お前、『時戻ときもどり者』か」

「!」


 心臓の鼓動が大きく跳ね上がる。


 ――なんでばれた?


 そこでハッとする。精神に関与出来るということは記憶を見ることが出来るということだと気付く。そして気付いた瞬間、ある不安が頭を過り、さあっと血の気が引く。


 ――もしかしたら先生はソフィアの仲間かもしれない。


 そう思った瞬間、ある映像が蘇る。


 笑顔のソフィア、毒の入ったクッキーと紅茶、後ろから刺された感覚、その直後の腹と背中の激痛、そしてアイラを刺した銀髪に黒いメッシュが入った髪の男、最期を看取ってくれた魔術師団長の制服を着た今よりも大人びたリュカ。前世の時の牢屋での出来事が走馬灯のように凄いスピードでフラッシュバックする。

 そして恐怖から、冷や汗が出て息使いが早くなる。


 いきなり真っ青な顔になり胸に手を当て苦しそうに顔を歪めるアイラにジンは、


「おい、大丈夫か?」


 と声をかけ近づくが、アイラは驚き反射的に後ろに後ずさりジンから離れた。だがそこで現実に戻り冷静さを取り戻す。


 ――どうすればいい? どう応えるのが正しい? 敵かもしれないのよ!


 脳をフル回転するが、まったく答えが見つからない。

 そんなアイラにジンは困った顔をし頭を掻く。


「落ち着け。そう警戒するんじゃない」


 だがアイラは警戒を解く様子はない。ジンはため息をつく。


「はあ。だからそう警戒するなって言ってるだろ。俺はお前が思うような敵じゃねえ。お前をどうこうしようともしねえし、このことを誰かに言うつもりはないから安心しろ」


 だからといって100%信じることが出来ない。どうしたらいいのか分からず顔を歪ませる。


「わかったよ。まあお前からしたら信用出来ないだろうな。だからここで魔法の誓いをたててやるよ」


 ジンはアイラの目の前に『誓いの契約魔法』の魔法陣を展開する。


「!」


 それは嘘偽りがないということを相手に示すためにする誓いの魔法だ。国と国との契約や機密事項の約束など、重要な約束事の時によく使われる。

 もし破った場合、重いペナルティーが破った者に課せられる。

 それほどまでのことをしようとしているジンは嘘を言っていないということの証でもあった。

 そこでやっとアイラは信用し警戒を解く。


「分かりました。魔法陣を閉まってください。先生を信じます」

「よかった」


 ジンは安堵し魔法陣を消した。そして頭を下げる。


「悪かったな。嫌なことを思い出させた……」


 まさかあそこまでアイラがパニック状態になるとは思わなかったジンは軽率に口にしてしまったことを反省する。


「いえ、こちらこそ乱してすみません……」


 アイラも謝る。


「それにしても、そんな大それたことを隠していたとはな。驚きだ。だから精霊魔法士になるのが嫌だったんだな」


 しみじみ言うジンにアイラは恐る恐る訊ねる。


「先生は……信じるんですか?」

「何をだ?」

「その……私がもう一度同じ人生を繰り返していること……」

「ああ。俺が見るのはお前の本心の部分だ。嘘はつけないからな。それに不思議なことじゃない」

「え?」

「魔術にも時を遡る高等魔術があるからな」


 ――初めて聞いた。そんな魔術があるんだ。


「最悪な人生を変えたい時にする究極な魔法だ。だがこの魔法は高等なため、膨大な魔力と技術がいる。だから出来るやつはほとんどいない。それにこれは1人の命を犠牲にしなくてはならない魔法だからな」

「人の命?」

「ああ。それも同意の元でだ。だからほとんどの者はしないけどな」


 確かにそうだろうとアイラも思う。


「でもお前はそれを使わずに勝手に戻ったんだな」

「はい」

「で、お前は前回の人生が最悪だったため、今回は自分の好きなように生きてやると、精霊魔法士には絶対にならないと決め、魔術師を専攻したってわけだな」

「あっ……はい」


 もう全部ばれているとアイラは顔を引きつらせる。そんなアイラを見てジンは考える。


 ――自分で戻って来たわけではないのなら、これは違う力が働いたということだ。だが魔術で他人の人生に干渉出来る魔法はねえ。だとすれば、もっと大きな力が働いたということか。


 それは何か? だがジンには分かっている。


 ――国守玉こくしゅぎょくか。


 アイラの記憶から国守玉を浄化している光景がなぜかジンに入って来た。それも印象が強く残るほど。


 ――嫌だねー。俺も結局一枚噛むってことかよ。


 これは逃げれない案件だとジンは確信する。


「先生?」


 なぜか急に黙って考え込んだジンにアイラは首を傾げる。


「あ、わりい。まあお前が思うように今回の人生を楽しめ」

「え? いいの?」

「ああ。お前の人生だ。お前が決めろ。俺が決めることじゃねえ。それにこのことは誰にも言わねえ。守秘義務は守る。だから安心しろ」

「はい!」


 アイラは安堵する。


 ――ジン先生なら大丈夫な気がする。


 そんなアイラにジンは心の中で思う。


 ――まあ無理だろうけどな。国守玉が絡んでいるなら国守玉が願うように世の中は向かうようになっている。アイラがどれだけ抗おうがその方向に行くことになるだろう。


「まあ自分が思うようになるように頑張れや」

「あ、はい」


 ――? 思うようになるように?


 何か言葉に引っかかりを覚えながらアイラは返事をする。


「じゃあやり方が分かっただろうから、さっきと同じ火の魔法を放ってみろ」

「はい!」


 アイラは杖を構えるとジンに教えてもらったやり方で思いっきり放つ。すると巨大な火の玉がジンへと放たれた。


「!」


 ジンは目を見開き、目の前に大きなシールドを張る。刹那、アイラが放った巨大な火の玉がジンのシールドに勢いよくぶつかり衝撃破がジンを襲う。


 ――マジかよ。


 ジンは足を前後に広げ踏ん張る。


 ――どうにかこれを上に逃がせねえとやべえ! 仕方ねえ。


 ジンは魔力を爆発させ、一気に火の玉を空へと放った。

 火の玉はそのまま空へと消えて行った。


「できた!」


 アイラは喜び飛び跳ねる。


「ここまで精霊魔法が強いとはなー」


 ――ったく、精霊魔法は特級レベルの魔力じゃねえか。そりゃあ国守玉が気に入るわな。


 するとジンに職員室から魔法で連絡が入る。


「すみません。魔術の研究してて、量を間違えちゃいました。ええ、怪我人はいません。大丈夫です」


 どうにか弁解し通信を切る。


「やべえ。あまりにも魔力量が大きかったから学校の防犯にひっかかっちまった。アイラ」

「はい」

「お前、全力でやるの禁止な」

「え?」

「精霊魔法の変換は3割程度にしろ」

「あ、でも……」

「? なんだ?」

「やり方がわかりません」

「あ! そうだったな……。んーどうするかなー」


 その時だ。


 タン! と足音が聞こえた。

 2人が振り向くと、そこにはリュカがいた。







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