150 赤竜の柱⑯ 浄化開始
初めてこちらを見つけていただいた方へ
ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度朝6時更新という短いスパンです。 たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと除いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
「行きます」
そう声を発したと同時、アイラの全身が淡い黄緑色に光り始めた。
――久しぶりだわ。精霊魔法を全開で使うのは。
マティスの発作を抑えた時以来だ。
――あの時よりもやりやすい。前世の時と同じぐらいな感じだわ。
そして胸元で祈るように腕を組み呟く。
「お願い精霊達。私に力を貸して」
その瞬間、全身に纏っていた精霊の魔力が跳ね上がった。それを見たシガスが驚き目を瞠る。
――嬢ちゃんの精霊魔法が莫大に上がった。凄い。あれが精霊から気に入られた者の力か。
アイラの全身を纏っていた黄緑色の魔力が乗っ取られた赤竜の体へと移動する。それは浄化が始まったということだ。
ジンはそれを見て目を細める。
「さすがだな。だが……」
アイラを見れば眉根を寄せている。それは赤竜の魔障にアイラの精霊魔法の魔力が負けているからだ。
「やはり精霊魔法だけではだめだということか」
精霊魔法は癒やしの魔法だ。そのため回復や治療、再生に特化している。そして精霊に気に入られればいられるほど、精霊魔法は強くなる。今アイラの状態は普通では有り得ないほどの精霊の魔力が注ぎ混まれている。
――だが、どれだけ優れていても所詮この地上の生命の力。
地上の物には力は多いに発揮出来るだろう。だが今アイラが相手にしているものは、この地上の物ではない。また違う次元の魔の物だ。だとすれば、それに対抗できるのは、同じくこの次元でないもの――国守玉、神に近い力だ。
ジンは胸に両手を合わせる。ジンの全身が金色に光り始める。
「手伝うぞ。アイラ」
刹那、一気にジンの国守玉の力が膨れ上がった。その膨大な力にシガスは驚くが、リュカは体を動かさずジンがいる方へ目線を向けただけだった。
ジンの国守玉の力がアイラの精霊魔法の魔力と重なり合うようにねじれながら乗っ取られた四竜へと吸いまれて行く。同時、アイラの顔も穏やかになった。
――先生の力が加わったら楽になった。これが国守玉の力なのね。
アイラは感心する。そして赤竜を見る。
――これでいいのよね?
ジンからは国守玉を浄化するようにすれば良いとだけ聞かされただけだ。だからこれが正しいのかがいまいち分からない。だが見る感じ、赤竜に溜まっている魔障は徐々になくなっていることは分かる。そしてジンの国守玉の力が加わったことにより、それはより加速度が増した。ならば正しいのだろう。
――この時間の感覚だと、相当な時間がかかるのは確実。
終わるまで自分の体力と魔力が持つか不安が押し寄せる。
――でもここで止めるわけにはいかない。堪えるしかない!
リュカも同じく懸念する。相当強い魔力を2人は注ぎ混んでいる。だがどうしても浄化の速度が遅いように思えてしょうがない。
――これで行けるのか? 今は赤竜の体と乗っ取った魔物の意識を遮断しているが、これも永遠ではない。時間が経てば元に戻ってしまう。そうなればもう一度となると、アイラも先生も無理だろう。
ジンもリュカと同じ考えだった。
――思ったよりも浄化が進まんな。だがやり方は間違っていない。ならなぜこうも不安が過る。
そのまま時間だけが過ぎていく。その中でアイラは、本当にこれであっているのか? もしかしたら何か違う方法があるのではないのかと自問自答を繰り返していた。だが答えが見つかるわけでもなく、不安だけが増していっていた。
――本当にこれであってる? どうしよう間違っていたら……。
その時だ。
「!」
リュカが反応する。
――遮断した魔物の魂と赤竜の体が繋がり始めた。
それにはジンも気付く。
「まずいな。赤竜、あとどのくらいだ」
それは赤竜が体に戻れるまでのことを言っている。
『このままではまだかかる』
その言葉を聞いてアイラは焦りギッと奥歯を噛みしめる。
――やはりこのままじゃ駄目なんだわ。でも何が駄目なのか分からない。
この場所を教えてくれたシガス。そしてお膳立てしてくれたリュカ、自分を手伝ってくれているジンを考えると、自分の無力さがもどかしい。
「くっ!」
自然と力が入る。
――どうしたらいいの!
すると、ふっと隣りに気配を感じたと思った瞬間、声が聞こえてきた。
『そのやり方ではだめだ』
見ればシュリだ。
「シュリ……」
アイラの呟きにリュカとジンが視線を向けるが何も見えない。だが何かがアイラの隣りにいることだけは分かった。
『アイラ、ただ精霊魔法を使うだけでは駄目だ。アイラがいつも花や草木にするようにすればいい』
「いつものように……」
『そうだ』
そこでいつもどうしていたのか考える。
『アイラはいつもどうしたくてしていたのか。簡単であろう?』
それはいつも花や草木が元気になるように願ってやっていただけ。
――そうか! 赤竜の体を取り戻してあげたいと思えばいいんだ!
アイラの精霊魔法の魔力が威力を増す。それを見てシュリが微笑んだ。
『そうだ。精霊魔法は人を思う気持ちが大切なのだ』
そしてそっとアイラの肩を抱く。
『我も手伝おう』
その瞬間、アイラとジンの魔力の質が変わった。
「!」
リュカとジンはそれに気付き目を見開く。
――威力も質も一気に変わった!
最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも良かったと思っていただけましたら、ブックマーク、いいねボタンの方よろしくお願いします。
とても励みになります。
これからもよろしくお願いします(_ _)




