148 赤竜の竜柱⑭ 古代語
初めてこちらを見つけていただいた方へ
ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度朝6時更新という短いスパンです。 たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと除いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
ジンは腕組みし小さく嘆息する。
――それだけ四竜を乗っ取ろうとしている魔物が強いということなんだろうが……。
面白くないと目を細めムッとする。
――うまく利用されているようであまり気分は良くねえな。
するとベニートが意外なことを言った。
「これが四竜の意識体が魔晶箱から解放されていなかったら最悪な状態じゃった」
「?」
「この4つの玉は四竜と連動しておるが、それは意識体が魔晶箱から解放されていて初めて発動するものじゃ。もし解放されていなければ、この玉はまだ今でもただの玉だったはずだ。それだとわしは竜柱が限界ということに気付かなかったであろうな」
「え?」
どういうことだと眉根を寄せるジンにベニートはフッと笑う。
「解放されるまではただの4つのガラス玉だったのだよ。だからこれを受け継いだ時は本物なのかとわしは疑ったものじゃ」
「なるほどねー」
――国守玉が何らかの魔術のようなものをかけていたということか。
もし魔法の類いなら、ベニートや歴代の長は気付いたはずだ。だがそれに気付かなかったということは、魔法の類いではないということだ。そんなことが出来るのは国守玉しかいない。
――ほんと国守玉は恐ろしいねー。ここまで出来るなら自身で竜柱をどうにか出来るんじゃねえのか?
そう思ってしまう。だがそれは無理だということも分かっている。国守玉はあの場所から動くことが出来ないからだ。だから動ける人間や物に力を与え、動かしているのだ。
「じゃあ四竜が魔晶箱から解放された時は気付いていたのですか?」
ジンが訊ねた時はベニートは知っている感じではなかった。
「いや知らなかった。見ての通り箱に入っていて、棚の奥の方にしまってあったからな。お前に言われて、そこで初めて見てわかったのじゃ」
世界の行く末を左右する要となる大事な物を、棚の奥底に閉まって半分忘れ去られていたとはどうなのかとジンは苦笑する。だが仕方ないことだ。竜柱が出来て数百年経っているのだ。マティスの家系が王になるずっと前の出来事のため、今日まで何もなければ、忘れ去られてしまうのは自然の摂理というものだ。
「で、これをどう使えばいいんすか?」
ジンは掌のペンダントへと視線を落とす。
「それを教えるからすべてを完璧に覚えよ」
そこで嫌な予感が過る。訝しげな顔を向けるジンにベニートは両端の口角を上げた。
「察しがいいのう。今日からここに泊まって特訓じゃ」
「げっ!」
そしてそれから一週間みっちりベニートに教え込まれたのだった。
ジンはペンダントを首にかけ両手を胸の前に合わせる。
――みっちり嫌なじじいと一緒に我慢してやったが、さてうまく行くか。
ジンは目を閉じると呪文のようなものを言う。
「ジュラヴェリザバン・ゼリュゲリエレビュラン」
するとジンの全身が金色に光り始めた。リュカはそれを見て眉根を寄せる。
――何語だ? それに国守玉の力の光のようだが、いつもよりも色が濃い?
すると四竜が言った。
『あれは古代語だ』
「古代語だと?」
『うむ。昔の民は皆あの言葉を使っておった。だが時代の流れと外からの者達の言語が混ざりあり今の言語になったのだ』
『竜柱が出来た頃の言葉はまだあの言葉だったからな。解除も古代語を使わねばならないのであろう』
『うむ。古代語の方が国守玉の力を最大限に引き出すには良いからな』
「だからあの光なのか」
ジンがいつも使う国守玉の力は、透明感があり力が強い。だが今ジンから感じる国守玉の力は、それにも輪を掛け、重厚感が増し凝縮された漲る力を感じたのだ。
「これが本来の国守玉の力か」
その後ジンは丁寧に古代語を重ねていく。するとジンを纏う光が徐々に強くなり、同調するようにクリスタルも金色に光り始めた。
『リュカ、もうすぐだ。気を引き締めろ』
「ああ」
四竜に言われなくても分かった。徐々にクリスタルが薄くなっていくのと同時に四竜から禍々しい魔力が大きくなってきていたからだ。
そしてジンが胸の前で重ねていた手をゆっくり離していくと、そのまま両手の掌を地面にたたき付けるようにつけ叫んだ。
「バリュバザン!」
刹那、稲妻が地面を這い、その場の空間全体を走ったと思った瞬間、クリスタルがパンっと弾けるように砕け散った。
そして巨大な衝撃破がリュカ達を襲う。
「!」
リュカは咄嗟に両腕で顔を覆い防御する。衝撃破が来るが、ジンが張った結界のおかげで飛ばされることもなく、怪我をすることもなかった。だがその衝撃破により結界は消滅した。
離れていたアイラ達にもその衝撃破は押し寄せたが、結界のおかげで大きな衝撃が衝突しても、飛ばされることもなく怪我をするこもなかった。だがリュカと同じく結界が消滅した。そしてその瞬間、膨大な魔力が押し寄せた。
「!」
アイラとシガスはあまりの膨大な魔力の重圧で押しつぶされそうになり息が吸えなくなり、体が硬直する。だが刹那、2人を強靱な結界が張られた。その瞬間、苦しかった息は吸え、巨大な魔力も最小限に軽減された。見ればリュカがこちらに手を翳していた。リュカが再度結界を張ってくれたようだ。
「あの兄ちゃん、すげえな。こんな頑丈な結界張れるのかよ。ちょっとやそっとじゃ壊れない代物だな」
シガスが感心の声を上げる。リュカが褒められるとなぜか嬉しく思い口元が緩む。だがすぐに笑みはなくなり真剣な表情を向け呟く。
「2人共、がんばって」
リュカはアイラ達に結界を張ると自分とジンにも張る。
「さあ今度はお前の番だ」
「はい」
目の前の赤竜は、ゆっくりとリュカとジンを見据える。
「赤竜、どこまでしていい」
リュカは視線は赤竜のまま聞く。
『お前の好きなようにしろ。再生可能範囲ならいいぞ』
四竜の再生可能範囲が分からないのだがと突っ込もうとすると、
『気にするなということだ。最優先はお前達の命だ。最悪倒してもらっても構わない』
と四竜は付け加えたため言うのをやめる。代わりに、
「わかった。必ずお前の体を取り返す」
と返した。
『無理するな。我の体は別にどうなってかまわない』
「勘違いするな。体がなくなったら、ずっと俺の中にいるのだろう? そんなことまっぴらごめんだ。だから必ず体を取り返し、俺の中から出て行ってもらう」
すると四竜達が笑った感覚があった。
『そんな悲しいことを言うな』
『そうだ。我等はとても心地良いのだ。ずっと一緒でもいいぞ』
『リュカの思考がおもしろいしな』
などとこの状況では考えれない言葉を並べてきた。非常識だと思うだろうが、リュカはフッと笑い、
「絶対に出て行ってもらうからな、四竜達」
と言い放ち魔力を解放した。
リュカの魔力解放にシガスは驚き目を見開く。強いことはわかっていたが、ここまでとは思わなかった。
「学生だろ? それであの魔力か」
それを聞いたアイラは言う。
「リュカは将来皇太子の専属魔術師になるんですから」
「マティス王子か?」
「ええ」
――それは決まってること。
前世でリュカはマティスの専属魔術師だった。だから今世も変わらない。なぜかリュカの通う学校が前世と違うが、根本的な導線は変わらないはずだ。だからこれは確実。
「なるほどな。もう確約済みというわけか。あれならマティス王子は安泰だな」
それにはアイラは眉を寄せる。前世では竜柱は魔の物に乗っ取られ世界は破滅の道を辿ったとジンは言っていた。だとするとジンは言わなかったが、必然的に前世でマティスもリュカも、そして家族も皆亡くなったということが推測された。
「安泰かどうかは、この竜柱の解放がうまくいけばの話だと思います」
「確かにそうだな」
アイラはリュカを見て願う。
――リュカ、頑張れ!
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