143 赤竜の竜柱⑨ シガスの返事は
初めて見つけていただいた方、ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度朝6時更新という短いスパンです。 たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと除いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
――これはどういう状況?
まったく状況が分からずアイラの頭は混乱し、フリーズした。
そこで考える。
――あの時、駄目元でシュリに、シガスに姿を見せてくれないかと心の中で叫んだんだったわ。
するとシュリはすぐに姿を現わしてくれた。だが、アイラの願いは拒否された。その理由は、アイラの命の危険があるからだと言うことだった。だがそれしか方法がなかったため、もし言うことを聞いてくれなかったら国守玉の浄化をしないと脅したのだ。するとシュリは一度目を瞬かせ、ふっと笑い、なぜかすぐに承諾してくれたのだ。
だが最後シュリに本当にいいのかと念押しをされた。だが決意は緩まなかった。まったく恐怖はなかったからだ。どこかでシュリが自分の命を奪うことはしないだろうと思っていたからかもしれない。案の定今自分は生きている。やはりシュリは自分の命を奪うことはしなかった。
その後シュリと同調して姿を見せたところまでは覚えているが、その後のことは覚えていない。意識を持っていかれたようだ。そして、
――最後。私、倒れたんだ……。
それをリュカが支えたのだろう。
「ごめん、ありがとう」
体を起こそうとしながらリュカに礼を言う。
「大丈夫か?」
起きるのを手伝いながらリュカは心配そうな顔を向けている。相変わらず優しいなと場違いにも思いながら、
「うん、大丈夫」
と応え、体を起こし座っていた椅子に座り直す。
「アイラ、大丈夫そうだな」
ジンが声をかけ、シガスもよかったと安堵の表情を浮かべた。
――どうなったのだろう?
うまくいったのだろうか、それとも駄目だったのかと思っていると、頭に映像が入ってきた。それはアイラが倒れた後のやり取りだ。シュリが見せてくれたようだ。そこでまだシガスが返事をする前だと分かる。
――ちょっと浅はかだったなー。
シュリに頼むしかないと後先を考えずに勢いでお願いしてシュリに出てもらったが、意図はしてなかったとしても結果的に自分の命を人質にする形になってしまったことに罪悪感を感じる。
だが、それしかシガスを納得させることができないことも事実だ。だから後悔はしていない。
――でも、もしこれでもシガスさんが断ったら?
ジンとリュカは途方に暮れ、四竜は残念がるだろう。その光景を想像してると、赤竜の声が聞こえてきた。
『我等はそんなガッカリするほど残念がらんぞ。ただ仕方ないと諦めるだけだ』
それを聞いたアイラはバッと立ち上がり、
「なんで諦めるのよ! 四竜なら頑張りなさいよ!」
と大声で怒鳴るように叫ぶ。それに驚いたのは他の者達だ。
「アイラ?」
「どうした、アイラ?」
いきなり立ち上がり叫んだアイラに、リュカとジンが怪訝な表情を浮かべながら声をかけてきた。それに対し、
「だって四竜が諦めるって言うのよ! 自分の体を取り戻せるチャンスなのに、諦めるなんておかしいじゃない! 自分の体よ? 自分の体に戻りたいって思うのが普通でしょ! 私なら絶対に諦めないわ!」
そう言い終わった瞬間、シガスと目が合った。
「あっ!」
そこで今、竜柱の入口を開けてくれるか、くれないかの瀬戸際だといういうことを思い出しアイラは絶句する。それに今、
――シガスさんの前で「四竜」という言葉を出すべきではなかった。
猛烈にシュリに時間を戻してほしいと願う。だがしてくれるはずもなく。
――穴があったら入りたい……。
アイラは猛反省する。机に両手をバンと突き立ち上がったが、今はその机の下に潜って姿を隠したい気分だ。だがそんなこと出来るわけはなく、「ごめんなさい」と言って、ただゆっくりと腰を下ろすしか出来なかった。そして横に座るリュカを一瞥すれば、何を言ってくれるのだというようにため息をついている。
下を向いてしゅんと落ち込んでいると、シガスが口を開いた。
「お嬢ちゃんの言う通りだな。自分の体に戻りたいに決まっている……」
シガスの言葉にアイラは顔を上げ声を上げる。
「え?」
「嬢ちゃん、四竜が付いているのか?」
「え? あ、はい……。赤竜だけですが」
「その四竜は俺がもし反対したら諦めると言ったんだな」
「はい……」
「わかった! 俺はあんた達の言うことを信じる」
「はい?」
それはどういうことだとジン達はシガスを見る。
「わからねえか? 鍵を開けるって言ってるんだよ」
「!」
ジン達は驚き目を見開く。
「なぜ?」
「それは嬢ちゃんが言うことは信用出来ると言うことだ」
「え? 私?」
それにはアイラ自身も意味が分からず首を傾げる。
「嬢ちゃんは国守玉の伝手に気に入られている。それは国守玉から気に入られているということだ。ならば嬢ちゃんが言うことは信用出来るということだ」
「はは……。俺の言うことはまったく信用出来なかったわけね……」
ジンは半目で文句を言う。そんなジンにシガスは視線を向けると、
「別にあんたを信用していなかったわけじゃない。ただ後々のことを不安視していただけだ」
それは四竜の意識体を戻し。竜柱から解放することのことを言っていた。
「まあそうだろうな」
誰しもそう思うことだ。ジンでさえもこの選択が正しいのかは今も疑問なのだ。
「だが国守玉の伝手が怒りを露わにした時のあんたら2人を見て、不安はなくなった」
「?」
「俺はあの時、恐怖で体は動かなかったし息も吸えなかった」
「俺らも一緒だぜ」
まったく抗うことは不可能だったのだ。
「いや違う。国守玉の伝手の威嚇が収まっても俺は少しの間恐怖で体が震え何も発することも動くこともままならなかった。だがあんた達2人はすぐに動け話せた。そこで俺とは次元が違うってことを実感した。今まで俺はある程度強いと思っていたが、どうもただの奢りだったようだ」
「そんなことはない。あんたはお世辞じゃなく強いと思うぜ」
ジンは言う。本当のことだ。シガスは強い。シガスは「ありがとよ」と苦笑し、
「だからもしも最悪な事態になってもあんたら2人がどうにかしてくれるだろうと俺は判断した」
と言うと、後ろで静かに話を聞いていた妻と子供へ視線を向ける。
「だから俺達を守ってくれると信じている」
それは、今日初めて会ったリュカとジンに全信頼を委ねたということだった。アイラは感激で涙が溢れ両手で口を塞ぎ泣きそうになるのを堪える。
ジンとリュカは椅子から立ち上がると、
「シガス、俺らを信じてくれて感謝する。あんたの期待に応えれるよう全力で対処する」
「必ず守ります」
ジンとリュカはシガスに深々と頭を下げた。アイラも慌てて立ち上がり、
「ありがとうございます」
と頭を下げる。そんな3人にシガスは、
「失敗は許さねえからな」
と笑顔を見せるのだった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも良かったと思っていただけましたら、ブックマーク、いいねボタンの方よろしくお願いします。
とても励みになります。
これからもよろしくお願いします(_ _)




