142 赤竜の竜柱⑧ アイラの懇願
初めて見つけていただいた方、ありがとうございます。
1話がとても短いものになっております。あっという間に負担なく読み終えてしまう短さです。ですので3日に一度朝6時更新という短いスパンです。 たまに遅れまる場合が(^0^;)
ちょっとの暇な時間の穴埋めになれたら嬉しいです。
ちらほらと、あらすじが挟んでおります。もし興味がありましたら、そちらをちょこっと除いていただければ、なんとな~くわかっていただけるかとw
よろしくお願いしますm(_ _)m
「アイラ!」
リュカはすぐにアイラの顔に自分の耳を近づけ息をしているか確認する。すると規則正しい息使いが聞こえて来た。
――気を失っているだけか。
リュカは安堵し言う。
「大丈夫です。気を失っているだけです」
リュカの言葉にジンとシガスも安堵のため息をつく。
するとアイラの体が金色の光に包まれた。
「!」
リュカは驚き胸に抱くアイラを見入る。
「なんだ?」
するとジンが言う。
「国守玉の伝手がアイラに治癒の類いのものをしているんだろうな」
姿は見えないが、シュリがアイラの目の前に移動した気配があった。
――これは回復魔法でも治癒魔法でもないな。それよりももっと強力なものだ。
国守玉の力を分け与えられているジンには何をしているのか手に取るように分かる。だが今シュリがしているものは、ジンが知らないものだった。
するとシュリの声だけが聞こえてきた。
『アイラに我の命を少し分け与えた』
「え?」
自身の命を削ったということかと思っていると、
『少しぐらい分け与えたところで何も変わらぬ』
とシュリは応える。
『もうアイラに影響はない』
そこでリュカは怒りを抑えながらシュリへと言う。
「アイラから頼まれたのだろう? なぜその時に断らなかった。最初から断っていれば、アイラの命は危ない状態にはならなかったはずだ」
するとシュリが予想外なことを言った。
『我は最初断った』
「!」
『我が姿を現せれば国守玉の盾は信じるであろう。だが今のようにすぐ答えを出さなければアイラの命が危うくなる。そうなれば今のように我はアイラの命が危なくなると伝えなくてはならない。それは好ましくないものだ。だから我は拒否した』
リュカもジンも分かっている。シガスに対しアイラの命を人質に脅していることになるからだ。
――だがアイラに懇願されシュリが折れたのだろう。
そこでリュカは思う。
――こいつ、まさかシュリを脅したんじゃないだろうな?
そう簡単にシュリが言うことを聞くとは思えないからだ。するとリュカだけに聞こえるようにシュリの言葉が頭に入ってきた。
『その通りだ、時の少年よ。もし姿を現わさなければ国守玉の浄化を一切しないと言ってきた』
「え……」
リュカは目を瞬かせ抱き抱えているアイラを見る。
そんな理由ではシュリは動かないのはリュカでも分かる。別にアイラが浄化しなくてもいいのだ。イライザや精霊魔法士、そして次期聖女もいるのだ。
――本気で思ったのか?
するとシュリが言う。
『可愛いであろう』
「……それで聞いたのか?」
リュカの質問には応えず、ただフッと笑った気配だけがした。それが応えだった。
――親が子を思うようなものか。
仕方なくシュリが折れアイラの願望を聞き入れた。ただ命を削ることはわかりきっていたため、自身の命を分け与えたということのようだ。
――アイラを時を戻させ生き返らせたのだから、それぐらいはするだろうが……。
もう一度アイラを見て口元を緩ませ思う。
――相当気に入られたものだな。
ここまで気に入られてしまうと、助けてもらえるが縁を切ることは絶対にできないだろう。同情すらしてしまう。
すると今度はシュリは皆に聞こえるように言った。
『国守玉の盾よ。今一度決めよ。国守玉の脚の言うことが正しいことは我、国守玉の伝手が証明した。ここで断るのも有りだ』
先ほどの選択はアイラの命を守るためのものであり、違うとシュリは言う。
――もう一度、選ばさせるということか。
シガスは口を一文字にぐっと噤む。やはり迷ってしまう。そのシガスの感情を読み取り、シュリが言う。
『だがこれだけは忘れるな、国守玉の盾よ』
その瞬間そこにいたリュカ、ジン、シガスに分かるほどのシュリの怒りの気が充満した。それは今まで感じたことがない底知れぬ恐怖――絶対的な絶望とも言えるだろう。何をしても勝てない力を前にした時の恐怖だ。それが3人を襲う。
『アイラが命をかけてお主を説得しようとしたことだけは忘れるな。国守玉と我はアイラを失うことを望んでおらぬ』
そこで怒りの気はなくなり、空間が元に戻った。それ以降シュリの存在は感じるが話してくることはなかった。シガスの返事を待っているのだろう。
シガスと言えば、ただ黙って下を向いている。そんなシガスを見てジンは思う。
――国守玉の願いは竜柱に四竜の意識体を戻すことと、竜柱としての役目を終わらすことだが、シガスにとってそこが問題ではないのだろうな。問題にしているのは、その後だ。
どれだけ国守玉が姿を現わし大丈夫だと言っても、やはり完全に信じることは出来ない。
もし大量の魔獣が這い上がってきた時、次に起るのは、一番近いシガス達の村を襲うのが安易に想像がつく。シガス1人の決断で大事な者達を危険にさらすかもしれないのだ。先ほどはアイラの命がかかっていたため道を開くことを承諾したが、本音は開けたくないはずだ。
――シガスはどう答えるか。
「うーん」
するとアイラが意識を取り戻した。
「アイラ!」
リュカが顔を近づけ呼びかける。徐々に意識がはっきりしてきたアイラは、上から覗き込む形で近くにリュカの顔があることに気付き、驚き、そして固まった。
――これはどういう状況?
まったく状況が分からずアイラの頭は混乱し、フリーズした。
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