129 説明しろ
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1話が短いものになっており、すぐ終わります(^_^;)
そのため通常3日に1日の更新です(^o^)
ではどうぞ。
「それにあの娘に精霊王が付いていた」
「え? 精霊王ですか?」
「ああ。あれは精霊王だ」
グレイが放った洗脳の魔法は帯状の形でアイラに蛇のように巻き付こうとしたのだが、ある一定の距離で近づけなくなった。それはアイラをガードするように薄いシールドが張られていたからだ。
「そして国守玉も出てきた」
シールドに気づいたグレイが力を使いアイラを見ようとした時、少年がアイラの横に権現したのだ。
「気配からして国守玉なのだろう。そして精霊王と国守玉にことごとく邪魔された。すべての魔術を妨害されたよ」
「そうだったんですか? 見せているだけだと思ってました」
レイは魔術はまったく出来ないため、何が行われていたのかまったく分からなかった。グレイがアイラに魔道具を見せて使っていたように見えたが、何も起らなかったため、ただ見せているだけなのだろうと思っていたのだ。
「じゃあマスターは魔道具を使っていたってことですか?」
「ああ」
「それなのに、すべて防御されたということか。それはすごいですねー」
レイは嬉しそうに声を弾ませる。
「じゃあマスターはあの子に精霊王と国守玉がついているのを知っていて今日呼んだのですか?」
「いや。最初会った時にあの娘から威圧感を感じたんだよ。それも彼女からじゃない。その後ろにいる者からだ。だがそれが何か分からなかった。だから今日呼んだんだ」
だが食事の時ではアイラの後ろに何が付いているのかは分からなかった。だから魔道具を使い攻撃を試みた。どう出るか見たかったからだ。案の定すぐに姿を現わした。
「マスターは精霊王が見えたのですか?」
「いや、見えたというよりその場に存在していることを脳に認識させられたと言ったほうがいいね」
「認識ですか?」
「ああ。まず見ることが出来ない存在だ。それを私に存在を認識させたということは、威嚇、いや牽制だろうね」
「牽制ですか」
「ああ。あの娘に余計なことをするなということだね」
「おもしろいですねー。やっぱりあの子はおもしろい」
冷淡な笑みを浮かべるレイにグレイは、
「レイ、殺しては駄目だよ。今はその時ではない」
と忠告する。こういう顔をする時のレイは、暗殺者の顔だからだ。案の定レイは否定せず、反対に確認するように訊いてきた。
「その言い方だと、時期が来たら好きにして良いと言うことですか?」
その質問にグレイは答えず、ただ笑顔で返した。それを見てレイは笑顔を見せる。
「肯定と取ります」
「私は関与はしないよ」
「ええ。わかってます。マスターには迷惑はかけるつもりはないですよ」
そう告げるとレイは部屋を出て行った。グレイは書斎の椅子に座り背もたれ目を瞑る。
――まさか精霊王と国守玉の化身が出てくるとは予想外だったな。
そして国守玉の化身がグレイを睨んでいた光景を思う浮かべる。
――あれは私に対して敵愾心に満ちていた。やはり何もかもお見通しということか。
だがそこで何か攻撃をしてくることはなかった。
――やはり国守玉は神ではないということだ。国守玉にとって敵と判断した私でさえも自ら廃除することはできないということだ。勝算はこちら側にある。
その時だ。
ドクン!
大きく全身が跳ね上がる感覚になり、その場に胸を押さえ蹲り苦しむ。
「くっ!」
するとグレイの顔がまったくの別人になる。
「くそ!」
舌打ちし全身に力を込める。すると元通りの姿に戻った。
「ほんと厄介だ」
大きく深呼吸をし呼吸を落ち着かせる。
「まあいい。どうにも出来ないのだからな」
そして煙草に火を付けると、一服するのだった。
次の日の朝、アイラが学園へ登校すると、リュカが校門の所で腕組みをして立っていた。珍しいこともあるものだとアイラは手を振りながら「リュカ、おはよう」と声をかけたと同時、リュカはアイラへと歩み寄り、振り上げていた右手の腕を思いっきり掴んだ。アイラは驚きとリュカの意味不明な行動に訝しげな顔を向ける。
「な、なに?」
「きのう何があった?」
「え?」
「きのう何があったか聞いている」
凄い剣幕で放ったリュカの言葉にアイラは驚き目を見開く。どうみてもきのうのことを言っている。内緒にしてくれと頼んだが、やはり四竜が教えたのかと思っていると、心を読んだ赤竜がアイラだけに聞こえるように、
『我らはリュカには言っていないぞ。リュカが自分で気付いたのだ。お主を探しに行こうとしたのを反対に止めたくらいだ』
と言ってきた。
――なぜ探しに?
危険な目に合っていたという自覚がないアイラはリュカの態度の意味がわからない。するとリュカが、
「キーホルダーを見せろ」
と強い口調で言ってきた。アイラは鞄からキーホルダーを出して手の平に乗せリュカへと見せる。そこでキーホルダーが真ん中で縦に1本ヒビが入っているのに気付いた。
「あれ? ヒビが入ってる……」
「きのうどこへ行った?」
「え? えっと……」
どう応えようと逡巡していると、
「アイラ、おはよー」
と後ろからクラスメイトが声をかけてきた。リュカは舌打ちし、
「昼、ジン先生の部屋に来い。逃げるなよ」
と睨みを聞かせ言うと、そのまま先に行ってしまった。
『リュカに気付かれてるぞ』
赤竜が嘆息しながら言う。
「なんでばれたの?」
『あのキーホルダーにはかなり強靱な防御魔法が施してあった。それが効力が消えていたからであろうな』
そう言えば防御魔法をかけたとリュカが言っていたことを思い出す。
「なんか機嫌悪かったわよね? ヒビが入ったからかしら?」
的はずれなことを言っているアイラに赤竜は、
――アイラが危険な目に遭ったことに怒っているのだけどな。
と苦笑する。
「やっぱりお昼行かないとだめよね?」
『行かなくても強制的に魔法で来させると思うぞ』
四竜はリュカとも魂と繋がっているため、四竜の言うことは正しいだろう。それにアイラもリュカはそうするだろうと分かる。
「だよね。じゃあ行くわ」
観念するのだった。
そしてお昼にジンの会議室へと行く。そこには昼食を食べているジンと椅子に座って腕組みをした、どうみても機嫌が悪いリュカがいた。アイラを見たジンがサンドウィッチを食べながら言う。
「あのなー、ここはデート場所じゃねえんだけどな」
だがそれにはリュカは応えず立ち上がるとアイラの前まで歩み寄って来た。やはり朝と同じ機嫌が悪い。
「説明してもらおうか」
怒った口調でアイラに言うリュカを見て、これはただ事ではないと察したジンは真顔になり訊ねる。
「何かあったのか?」
するとリュカがアイラへ視線を向けたまま説明する。
「こいつに強力な防御魔法を付与したキーホルダーを渡していました。だけどきのう夜いきなり消滅したんです」
「はあ?」
それにはジンも驚き声を上げる。強力な防御魔法が消滅する理由は二つ。魔法をかけた本人が解除するか、それ相当の攻撃をされた時に消滅するかだ。そしてアイラのは後者ということは見て分かる。
「そうなのか?」
「アイラ、説明しろ。何があった」
2人の視線を浴び、アイラは小さく嘆息すると、グレイとのやり取りを説明し、
「でも何もされなかったわよ」
と危険はなかったと最後に付け加えた。だがリュカとジンはアイラの言うことをまったく信用していなかった。
「赤竜、詳しく説明しろ」
アイラの説明では納得がいかないリュカは、アイラの中にいる赤竜へ言う。すると赤竜の意識体の赤い光がアイラから出てくると、
『リュカ、そう怒るな。これは仕方なかったのだ』
と前置きし、最初アイラに洗脳魔法をかけようとしたようだと説明した。
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