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128 グレイの屋敷にて②



 セイラはグレイに頭を下げると、


「アイラ、ごめんね」


 と両手を顔の前で合わせ謝り部屋を出て行った。


 セイラがいなくなり部屋にはグレイとレイとアイラ、そして執事の4人だけになった。


 ――気まずい……。


 セイラが一緒にいたので今までは何ともなかったが、セイラがいなくなった途端、この場に自分だけが蚊帳の外のイメージになり居心地が悪い。それに先ほどよりもグレイとの距離が近い分、体の拒否反応も酷い状態だった。


 ――うー、帰りたい!


 つい不安になり、いるであろう赤竜に声をかけた。


 ――ねえ、赤竜! 赤竜! いるんでしょ? 


 だがウンともスンとも返事はない。アイラの魂の奥深い所に身を潜ませると言っていただけあり、まったく気配も感じない。


 ――もしかしていない? 赤竜の嘘つきー!


 心の中で文句を言っているとグレイが、


「じゃあアイラさん、行こうか」


 と促してきた。仕方なく小さく息を吐き付いて行く。その後ろからレイも付いてきた。背後にレイがいるのは落ち着かない。前世で後ろから刺されたため、それを連想してしまい恐怖が押し寄せるからだ。我慢出来ず後ろを振り向き言う。


「あの、すみません、後ろに立たないでください」


 するとレイは首を傾げ質問する。

 

「? なぜです?」

「ちょっとトラウマ……で」


 顔を曇らせ下を向いて冷や汗を掻いて言うアイラにグレイは察したようだ。


「レイ。アイラさんの横に」


 レイはグレイに言われた通りアイラの隣りに移動する。


「これでいいです?」

「はい……ありがとうござます」


 レイが横に来たことで緊張は解けたため安堵のため息をつく。だがまだ胸の動機は収まらない。やはり今世は違うと分かっていても体が敏感に反応してしまうようだ。


 ――落ち着いて。大丈夫。


 アイラは胸に手を当て自分に念じるように言い聞かす。そんなアイラをレイは一瞥する。


 ――この反応は後ろから危害を加えられた経験がある者の反応だな。だが俺はこの娘をやっていない。じゃあ違う誰かにやられたことがあるということか? だとすると、俺に似たやつということか? どんなやつなんだろうな。同業者か? 気になるな。


 不適に微笑むレイに気付いたグレイは、また何か良からぬことを考えているなと小さく嘆息した。




 長い廊下を歩きグレイは屋敷の一番奥にある一室にアイラを招き入れる。


「さあどうぞ」


 部屋の中に入り、目の前に広がる景色にアイラ眉間に皺を寄せる。


 ――書斎じゃないの?


 部屋の中は、片面は図書室のように壁一面に天井まで本がずらっと並び、もう片面には魔道具らしき物が棚にずらっと並んでいた。


「ここは……?」


 アイラの呟きにグレイは応える。


「ここは私の研究室兼書斎だ」


 奥へと視線を向ければ、確かに大きな机が一つあり書類が山住みになっている。だがどこか違和感があった。


 ――窓がない?


 だがこれだけ本と魔道具の棚があれば窓がなくても不思議ではないかとそれ以上は気にしなかった。それよりも数え切れない魔道具らしき道具が目に止まった。


 ――色々な魔道具があるわね。


 視線に気付いたグレイが言う。


「ここにある魔道具は、すべて私が作った試作品なんだ」

「試作品ですか?」

「ああ。私は一応商売をしている身だからね」


 それは制作、製造、販売をしているという意味なのだろうとアイラは理解する。するとグレイが一つ魔道具を手に取った。太いグリップに学校で使う15㎝ほどの大きさの魔術玉が付いている物だ。何に使う物なのだろうと思っていると、


「これは魔法が使えない者でも簡単に使えるという魔道具だ」


 と言ってそれをアイラへと向けた。刹那魔術玉が光り始め、魔術玉から小さな魔法陣が現れた。


 ――え? 発動させた?


 するとアイラの全体を帯状の魔法が螺旋を描きながらぐるぐる囲み始める。


 ――なに?


 とても嫌な気分になる。だがただぐるぐるアイラの周りを回っているだけだ。


 ――拘束魔法でもない?


 するとパンっと弾けた。


「!」


 驚いていると、


「驚かせてすまなかった。ちょっとした悪戯魔法だ」


 グレイは笑顔で謝った。


「悪戯……ですか」


 ――びっくりした。何かされるのかと思った。


 アイラは安堵のため息をつく。


「ああ。子供のおもちゃ用に作った物だ」

「そうですか」


 グレイはそれからアイラに色々な魔道具を見せたり使ったりし、執事がアイラが帰る時間を伝えにくるまで続いた。結局1時間ほど続き、ずっとアイラは緊張のしっぱなしでいたため、執事が現れた時には助けが来たと思ったほどだ。


 アイラは見送りに屋敷の外まで来たグレイに頭を下げてお礼を言う。


「今日はありがとうございました」

「こちらこそ来てくれてありがとうアイラさん。セイラが見送り出来なくて悪いね」

「いえ、勉強中ですから」

「セイラには伝えておくね」

「よろしくお願いします」


 アイラはもう一度頭を下げ、グレイが用意してくれた車に乗る。そして車が走りだしてからアイラは安堵のため息をついた。


「はあ。無事終わったー」


 すると今まで隠れていた赤竜の気配が現れた。


『何事も起こらなくてよかったな』

「赤竜、一緒にいるって言ってたのに、いなくなるなんて酷いわね」


 アイラはムッとして文句を言う。


『ちゃんとお主の奥におったぞ。どこにも行っておらぬ』

「そうなの? 返事がないからいないと思ったわ」

『話すとばれるかもしれないから黙っていただけだ』

「そうだったのね」

『ああ』

「でも何もなくてよかったー。魔道具を使い始めた時は何かされるのかと冷や汗が出たけどね」


 笑顔で言うアイラに赤竜は訊ねる。


『お主、気付いていないのか?』

「え? なに?」

『いや、気付かなかったのならいい』

「え? イタズラの魔道具なら気づいたわよ」

『そうか』

「はあ、疲れたら眠くなっちゃった。赤竜、着いたら起こして」


 アイラはすぐに寝てしまった。赤竜はグレイとの魔道具の時を思い出す。


 ――グレイとか言うやつ、あの時アイラに洗脳しようとしたな。


 最初、グレイがアイラに帯状の魔法が螺旋状に取り巻いた時のことを言っていた。だがアイラはそれを弾いたのだ。


 ――リュカの防御魔法が功を奏したな。


 赤竜はアイラから飛び出し、寝息をたてて爆睡しているアイラを見て、その時の状況を思い出し感心する。


 ――さすが国守玉と精霊王に気に入られているだけあるな。


 途中からアイラの背後に国守玉と精霊王の気配を赤竜は感じていた。


 ――精霊王に無意識に精霊魔法を使わされていたため、疲弊したのだな。仕方ない、ギリギリまで寝させてやろう。

 

 赤竜は微笑むのだった。



 アイラを見送ったグレイは、レイを引き連れて先ほどアイラに見せていた部屋へと戻る。アイラには書斎だと言ったが違う。この部屋は魔道具の試作品の実験をする場所だ。そのため部屋に魔力が漏れないように特殊な造りになっていた。


「すべて効かなかった。さすが国守玉が守ろうとしている存在だ」


 グレイはアイラに最初に使った短い杖の形をした魔道具を持ちながら関心の声をあげると、レイが首を傾げながら言う。


「すべてですか?」

「ああ。この洗脳の魔法は自信があったんだけどね。守りが強すぎた」

「守りですか?」

「ああ。強力な防御魔法の魔道具か何かを持っていたのだろう。それに阻まれた」

「そんな物を持ってたんですね」


 アイラはまったく無防備だと思っていたレイは意外だと驚く。


「あの子はまったく気付いていなかったけどね」

「え?」

「たぶん誰かに持たされたのだろうね」


 そう言いながらグレイはリュカの顔を浮かべる。


「それにあの娘に精霊王が付いていた」

「え? 精霊王ですか?」

「ああ。あれは精霊王だ」


 グレイが放った洗脳の魔法は帯状の形でアイラに蛇のように巻き付こうとしたのだが、ある一定の距離で近づけなくなった。それはアイラをガードするように薄いシールドが張られていたからだ。


「そして国守玉も出てきた」






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