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122 お前、アイラを避けてるな



「アイラ、一つ聞くが」

「?」


 アイラは顔を上げてジンを見る。


「もしあの2人が前世で死んでいなかったらお前は四竜の浄化をしないのか?」


 アイラは考える。だが応えがでない。


「……わかりません」

「それが応えじゃないのか?」

「え?」


 どういう意味だとアイラは眉根を寄せる。そんなアイラに「まだわからねえか」とジンは嘆息し話を続ける。


「じゃあ浄化をしないとする。そして国が、世界が崩壊への道へと進んだ時、お前は後悔はしないか?」


 アイラは考える。だがすぐに応えは出る。


「後悔すると思います」


 助かる道があるのに自分はそれを放棄したのだからと。


「そうだろうな。お前はそういうやつだ。じゃあ助けずみんな死んじまって後悔するのと、助けてみんな助かって、自分も前世の辛い人生を送らない人生ではどっちがいい?」


 ジンの言葉にアイラは引っかかりを覚える。


「送らない人生? 送るのではなくですか?」

「お前、今世で何を経験してきた? 前世の同じ時期と今と比べてどうなんだ? 同じか? 違うだろ。前世よりもだんぜん今の方がいいだろう」


 アイラは目を見開く。


 ――そうだ。今世の学生生活は前世とまったく違って楽しい。


「やっと気付いたか? お前はもう前世の辛い経験を回避できることを経験済みだろ。何を恐れている」


 ジンは笑顔を見せ語る。


「俺が最初、前世で2人が死んでいなかったら浄化しないのかと聞いたら、お前は分からないと応えた。それは2人が死んでも死んでいなくても浄化はする場合があると思っているからだ。そして浄化しなかったら後悔しないのかと聞いたら、お前は後悔すると即答した。それはお前の中で浄化しない選択はないということだ」

「!」

「結局お前は国守玉こくしゅぎょくの願いを聞き入れるつもりなんだよ。だってしなかったら後悔するだろ?」


 国守玉に言われてから胸の辺りがモヤモヤしていた感じがジンの言葉ですうっと取れた感じがした。


「結局、私はしたかったんだ」


 独り言のように呟くアイラにジンは微笑み、そして言う。


「そういうことだ。まあどっちみちお前の願望は国が滅んだら叶わねえけどな」

「!」


 目を大きく見開くアイラに、「おまえ気付いてなかったのか?」とジンは苦笑するのだった。




 放課後リュカはジンに呼び出されジンの所へやって来た。


「お、来たな」

「今度は何ですか?」


 リュカは何かを頼まれると思っているようだ。


「違う。ちょっと話がしたくてな。まあ座れ」

「?」


 半信半疑でリュカは机を挟んでジンの前に座る。


「単刀直入に言う。お前、アイラを避けてるな」

「!」


 目を見開くリュカを見て、図星だと確信する。


「はあ。なんでお前避けてるんだよ」

「……別に避けては……」


 そう否定するが言葉に力がない。そしてそれだけ言って黙ってしまった。すると、


『こやつ、王子がアイラを好きだと言ったから王子に変な気を使ってるのだ』


 と四竜の緑竜が告げ口をした。


「なっ!」


 驚き声をあげたリュカにジンは目を眇め訊く。


「そうなのか?」

「……」


 ただ目をそらすだけでやはり話さない。


 ――面倒くせえ。


「なんだ、殿下がアイラのことを好きだと言ったから拗ねたのか?」

「は?」


 拗ねたとは何だという顔を向けるリュカにジンは「そうだろ?」と鼻で笑う。


「違う! 拗ねてない!」

『こやつ、王子とも距離を置いているぞ』

「四竜、しゃべるな!」


 リュカは四竜に怒鳴るように声を荒げる。


「リュカ、お前、殿下も避けてるのか?」

「避けてない。マティスが機嫌を悪くして話してこないだけだ」

「? なんで殿下が機嫌悪いんだ?」

「知らん」


 ぶっきら棒にリュカは返事をし横を向いてしまった。仕方なくジンは四竜に訊く。四竜は見たままをジンに話す。その間リュカはイライラして黙って聞いているだけだった。それを見てジンは苦笑する。


 ――なるほど。そういうことか。若いねー。


「そりゃあ殿下は怒るわな」

「? なぜ」


 まったく見当がつかないリュカは口を尖らせながらも、どうしてだという顔を向ける。


「お前が素直に言わないからだよ」

「?」

「わかってねえなー。お前がアイラに好意を持っていることを殿下は知ってるからだ」

「違う! アイラはそういうのじゃない!」


 立ち上がって言うリュカにジンは「座れ」と言う。


「そんなにムキになるな」

「なっていない!」


 苛立ちながら言うリュカにジンは嘆息する。


「なにイライラしてるんだよ」

「してない」

「してるだろ」


 ――いつも敬語なのに口調がため口じゃねえか。余裕がねえなー。


 ジンは嘆息する。


「少し落ち着け」


 リュカも自覚はあるのか一度深呼吸をした。


「ムキになるということは、少しは自覚があるんだろう?」


 リュカは何も言わずに横を向く。


「アイラが言ってたぜ。ぜんぜんお前に会えないって」

「……」

「あいつはお礼が言いたいんだとよ」

「お礼?」


 リュカは顔をジンへと向ける。


「ああ。レイの前でアイラが倒れた時のことだ」

「あの時か……。別にお礼なんていいのに」


 少し落ち着いたのか少し笑みを浮かべるリュカにジンは素直じゃねえなあと苦笑する。


「それなのにお前に会えないから怒ってたぞ」

「なぜ怒るんだ。別に昼を毎日一緒に食べる約束をしているわけじゃないのに……」


 そう言いながら顔を緩ませるリュカにジンは苦笑する。


 ――本人に自覚がねえんだからなー。


 だがいつものリュカに戻っているようなので、少し踏み込む。


「リュカ、今回のお前の行動は何のためだ?」

「え?」

「お前のその行動で良いことはあったか?」









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