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119 困惑



 するとアイラに付いている赤竜が言う。


『あの娘、情緒不安定なのか?』

「え?」

『気持ちの起伏が激しいというか、さっきまで嬉しそうに喜んでいたのに、その後は怒りになり、今は悲しんでおるみたいだからな』

「赤竜ってセイラの気持ちが分かるの?」

『アイラのように同調しなくてはわからない。ただその者が纏っている気で感情は分かる。それを言ったまでだ』


 そういうことかと思っていると、


『だが気をつけたほうがいい。ああいう者はある限界に達すると何をするか分からぬからな』


 赤竜の言葉にアイラは眉根を寄せる。前世で経験済みだからだ。その思考を読み取った赤竜が申し訳なさそうに、


『すまぬな。嫌なことを思い出させたか』


 と謝ってきた。


「ううん。反対に気を使わせたみたいでごめんね」

『謝らなくてよい。お主は何も悪くない』


 気を使ってくれる赤竜にアイラはとても人間味を感じ意外な面もあるものだと微笑み言う。


「四竜って魔獣なのに案外優しいのね」

『お主は我等を魔獣と思っておるのか?』

 

 そう言いながら赤竜から心外だという感情が伝わってくる。


「違うの?」


 魔法が使え、見た目が獣だから魔獣じゃなのかと思っていると、


『我等は国守玉によって作られている。魔獣とは違う』


 と、赤竜はムキになって言ってきた。魔獣と一緒にされるのは相当嫌らしい。それがおかしくて苦笑していると、


「アイラ?」


 とマティスの声が聞こえてきた。見ればマティスとセイラがいつの間にか会話を止め、不思議な顔をアイラに向けていた。1人で笑っているアイラを見て怪訝に思ったのだろう。


「ううん、なんでもないわ。2人を見てて仲がいいなと思っただけよ」


 アイラは慌てて誤魔化す。


「そんなことないわよ!」


 セイラが顔を赤らめて否定している。マティスも、


「え? そう?」


 と首を傾げている。そしてそんなことはないと2人で言い合っているのを見て、どうにか誤魔化すことは出来たようだとアイラはホッとし食事を口に運び手を頬に当て「おいしい」と笑んだ。


 そして何事もなかったように食事を楽しみ、たわいもない談笑をし、夕食会は無事終わったのだった。



 帰りはセイラを迎えに来た車でアイラを送ってくれることになった。


「アイラ、今日は殿下に会わせてくれてありがとう」


 セイラが最初にお礼を言ってきた。


 結局セイラとマティスの仲を良くするまではいかなかったが、マティスと会話が出来たことは第一歩だとアイラは思うことにする。

 セイラもマティスと話せてさぞ喜んでいるだろうと思っていたが、どうも表情を見る限りそうではなさそうに見える。赤竜が言っていたように、情緒不安定だからなのかと思っていると、セイラが真剣な顔で突拍子もないことを言ってきた。


「ねえ、アイラは殿下のこと、どう思っているの?」

「な、なんで?」


 あまりにも唐突過ぎる質問にアイラは質問で返す。


「だって殿下、アイラのことを好きだから」

「ちょっ、ちょっと待って。な、なんでそうなるの?」


 そんなことマティスは一言も言ってなかったはずだ。どうしてそういうことになるのかまったくわからないアイラは困惑する。


「でも殿下に好きなタイプの女性を訊いた時、あれはどうみてもアイラのことでしょ? それに言いながら殿下はアイラを見ていたわ」


 よく見ているなと感心しつつ、どう応えるのが正解なのか頭をフル回転する。だが良い応えが見つからない。だがこれだけは言える。


「マティスのことは友達としか思っていないわ」

「そうなの?」

「うん。だから安心して」


 ――私はあなたの敵じゃないから。私のことを気にせずアタックしていいわよ。


 そう思いながら笑顔を見せる。するとセイラは予想に反したことを言ってきた。


「じゃあアイラはあのリュカって子が好きなの?」

「はい?」


 あまりの想定外な言葉にアイラは言葉を失う。なぜここでリュカが出てくるのかが分からない。


「なんでリュカ?……」

「だって2人、仲いいじゃない。お昼とか一緒にいるところ見たことあるけど、アイラ嬉しそうだから」


 そうだっただろうかと考える。だがまったく自覚がないため分からない。


「リュカもただの友達よ」

「そうなんだ。てっきりアイラはリュカ君のことが好きだと思っていたわ」

「ないない。マティスもリュカもただの友達だから」


 必死にセイラに説明するアイラに、


「私、殿下のことがすごい好きなの」


 とセイラが告白してきた。突然の告白にアイラは一瞬動きを止める。最初何を言われたのかを理解するのに時間がかかったからだ。そして理解した時には、


「うん、知ってる」


 とつい呟いていた。


「やっぱり気付いていた?」

「う、うん」

「でもアイラも殿下のこと好きなら、私、諦めたんだけどなー」

「え?」


 セイラの意外な言葉にアイラは驚き顔を上げてセイラを見るとセイラは笑顔だった。


「最初はなんでアイラなの? って思ったけど、2人が話しているのを見ていたら、殿下に文句や言いたいことを言えるアイラに殿下は惹かれたんだろうなと思ったの。私には殿下に反抗するのは無理だから。なんでも言うこと聞いちゃうと思う」

「……」

「でもアイラが殿下のことを思っていないなら、ちょっと頑張ってみようかな」


 するとアイラの家の近くで車が停車したため、そこで話は終わった。


「じゃあまたね、アイラ」

「う、うん。また」


 そこでセイラと別れたアイラは、その場で立ち尽くす。


「どういうこと?」


 家に帰ってからも意味が分からずに考える。


「思っていたのと違うんだけど……」


 セイラはアイラとマティスと恋仲になることを嫌がってはいない。反対にアイラとなら良いと言い、諦めるとまで言っていた。


「前世のソフィア(セイラ)とまったく違うじゃない」


 ならば最初の頃は違ったということなのか?

 じゃあどのタイミングで自分に殺意を抱くようになったのか?

 だが考えてもわからない。

 元々セイラ(聖女になったソフィア)とは接点がなかったのだ。会ったとしても国守玉の浄化の時だけであり、それも話すこともほとんどなかった。


「ぜんぜんわからない!」


 アイラは叫びながらベッドに大の字でダイブする。そこでセイラが言った「じゃあアイラはあのリュカって子が好きなの?」と言う言葉が浮かぶと同時、今日の夕食の時のマティスにリュカのことを聞いた時のことを思い出す。

 マティスにリュカは今日はこないのかと聞いた時だ。なぜかマティスは少し顔を曇らせ、


「今日はリュカは誘っていない」


 と言った。珍しいこともあるものだと思った。今までは必ずリュカもいたからだ。倒れた自分を保険室まで運んでくれたことのお礼を言おうと思っていたため、来ないことを聞いて残念に思っていると、なぜかマティスが、


「リュカがいないと寂しい?」


 と聞いてきて目を丸くした。なぜそんなことを聞くのかと聞けば、「なんとなく」とだけ応えたマティス。そして最近ずっと一緒にお昼の時はライアン達と一緒に食べていたのに、今日は来なかったリュカ。こちらも意味がわからない。


「なんなのよ、あの2人!」


 大声で叫ぶ。だがそこであることに行き着く。


「もしかして、あの2人喧嘩してるのかしら?」


 それしか考えられないと結論付ける。だがセイラのことはまったく見当がつかない。


「明日にでもジン先生に聞いてみようかな……」


 そしていつの間にかそのまま寝落ちしてしまったのだった。








最後まで読んでくださりありがとうございます。

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